第10話 ナナシの謎 ーーフレイア視点
さて、美味しい物を食べて満足したし、今日は解散ね。 私はそう思って席を立とうとするが、ルーブに止められる。
「おい。 これから作戦会議だろうが! どこに行くつもりだ?」
「ああ、そうだったわね。 ⋯⋯さあ、始めましょうか」
私は、忘れていたことにして誤魔化すーー 逃走失敗ね。
一方ルーブは、私の方を見て、ため息を吐くと、会話を始めた。
「⋯⋯改めて、俺たちのこれまでを振り返るぞ。 ヨニー⋯⋯神から受けた仕事によると、死に戻りを経験した勇者を守ることだったな。 ⋯⋯そこで俺とフレイアは勇者の情報を得るために、『情報屋』であるリディに協力をお願いした⋯⋯」
「アタシが調査した結果⋯⋯謎の窃盗事件が、勇者の犯行であると判明⋯⋯」
「ちょっと、質問! なんで、わかったのよ?」
「ウフフ⋯⋯」
素直に疑問に思ったことを口にすると、リディがニタニタ笑い出す。
え? なによ、気味悪いわねーー
そう思っていると、ルーブが代わりに答えた。
「⋯⋯普通、ただの窃盗事件が勇者の犯行だと、妄言する訳がないだろう。 ⋯⋯ということは、犯人自身が『俺は勇者だ!』と言ったのであろう」
「馬鹿じゃないの! そんなことってあり得ないでしょ⋯⋯」
「正解。 ⋯⋯憐れ、制服を取られた挙句⋯⋯勇者が別件で起こした悪事も、そいつに被せられたのさ」
「なんて言うか⋯⋯爪が甘いのね?」
「いや、ただの馬鹿だな」
リディがまるで昔話の様に、ことの顛末を語る。 ちょっと待って! じゃあ、濡れ衣を着させられた奴はーー
私がどんよりした態度をしていると、リディが口を開いた。
「大丈夫さ。 ソイツの無実は証明したから。 ⋯⋯今頃は、ニコニコで武術大会の修行をしているよ。 それが終わったら、登校するってさ~」
「おお! それはよかったわね」
「ふふふ。 心配顔のフレイアちゃんかわいい~ 舐めてもいいかしら?」
「えっ、ちょっと。 やめてよ⋯⋯」
「⋯⋯ゴホ、ゴホン」
リディが私のことを誘惑し始めそうな時、ルーブの咳払いが聞こえた。 どうやら、話の続きがしたい様だ。
ーーそして、次は私が意見を言う番のようね。
「勇者⋯⋯ナナシの口臭から、薬の匂いを検出。 その後、体の重さを見た所⋯⋯身長、体積等が不一致であることを確認。 結論、ナナシは成長薬⋯⋯かなり強力で即効性のあるヤツを飲んだ⋯⋯」
「成長薬⋯⋯それはエルフに伝わる秘伝薬なのか?」
「まあ、たしかに伝わっているけど⋯⋯それを飲む馬鹿はいないわ。 副作用もあるんだからね」
対である、若返りの薬は大人気なんだけどね。 ーーそれに、副作用のことを考えたら、飲む気失せるわよ。 私は続けて、説明する。
「副作用は身体の急成長に、重さが追いつかないことが、まず挙げられるわね」
「フレイアちゃん? その言い方ではまだ何かあるのかしら~」
「うん。⋯⋯だけど、わからないわね⋯⋯まあ、正確にはどんな材料を使ったかによるのよ、その作製者がどんな材料を使ったのかな?」
「とにかく、危険因子だ。 担任やクラスメイトに事実を伝えて置くか⋯⋯」
「ねえ、ナナシを兵団に突き出さない? アイツ犯罪者だし」
「⋯⋯それは最終手段だな。 奴は泳がせるのが吉だ。 無闇に退路を断つと、死ぬからな」
「死に戻りをするために? ⋯⋯嫌よ。 万が一振り出しに戻るとしても、そんなことをするなんて考えられないわ⋯⋯」




