第8話 主人公は惚れられるのが当たり前
は! 俺としたことが一瞬だけ、気絶してたぜ! どうやら、興奮しすぎたようだな。 俺は再びルーブと対峙するーー
「ハア。 ⋯⋯ナナシ、目が覚めたのか?」
「アア? ⋯⋯ククク。 俺としたことが興奮しすぎたようだぜ⋯⋯」
「ニャ? ナナシは完全に突き飛ばされていた⋯⋯」
「シィ。 ミルフィちゃん、静かにしましょうね~」
「ニャ? 今の声、フレイアニャ?」
「あ! しまったわ! ⋯⋯⋯⋯」
「シャー! さっきから怪しいニャー」
「⋯⋯なんのことかしら? 私は無口な女なの⋯⋯」
「無口な女は自分から言わないニャー」
「フレイアちゃんには、この役は不適切ね~」
「なんですって! そんなことないわよ!」
亜種共がウザいな~ 先にこいつらも黙らせたいぜーー
そう思っていると、ルーブが俺に話しかけてきた。
「⋯⋯まだやるのですか?」
「まだ? おいおい。 俺達はまだ戦ってないぜ? ⋯⋯さーて、準備運動はこれまでだな? やるか! ⋯⋯へへ。 おまえなんて一瞬で終わりだぜ!」
「なるほど⋯⋯期待しましょう」
俺は剣を構え、奴の心臓目掛けて牙突ーー しかし、そこで意識がまた途切れた。
「アララ。 ツンツン⋯⋯気絶しているわね。 コイツの顔面に、素早い一撃よね。 一瞬で終わったわ!」
「コイツを医務室まで運ぶか⋯⋯軽いな。 筋肉がまったくない。 ⋯⋯まるで子供みたいだ」
「子供? ルーブ、私に見せてみなさい!⋯⋯ふむふむ。 これは⋯⋯」
「⋯⋯フレイア、なにかわかったのか?」
「最悪ね⋯⋯」
「⋯⋯ここは?」
「目が覚めたニャ! ナナシ君って雑魚だニャ~」
「⋯⋯雑魚? この俺が雑魚だと?」
俺はなぜか知らない布団で寝ていた。 また気絶したようだ。 薬品の匂いがする。 どうやら、医務室のようだ。
そして、目の前には俺を馬鹿にするミルフィがいたーー
なぜ俺を馬鹿にしているのかわからないが、ムカつくので抗議してやる!
「なんだと? 雑魚亜種無勢が生意気な口を叩くな!」
「ニャ! ここでそんなことを言ったら駄目ニャ!」
「はあ? この俺にそんなことを言うとはな⋯⋯あ」
しまった! ついつい本音が漏れてしまった。 ここは平等を重んじる場所だからな、表向きは。
「ゴホン。 どうだったかな? 俺の華麗な剣捌きは⋯⋯」
「ニャ? たしかに、素早い動きだったニャー。 動きだけは⋯⋯」
「そうだろう。 まあ、全然本気じゃなかったし、これから成長していくから⋯⋯今回の勝利もただの通過点だからな」
そう、俺はまだまだ強くなる、今回の勝負はいわば前哨戦だ。
「ニャ? ナナシ君! 記憶あるのかニャ?」
「記憶? ⋯⋯ああ、ちょっと興奮しすぎて気絶してしまってな! 記憶がないようだ。 まあ、俺の勝ちに変わりないだろう」
「ニャ! すごい自信ニャ! でも君は⋯⋯」
ミルフィがなにか言いそうになっているが、俺は止めた。 そして、ウインク。
「聴かなくてもわかってるって! ⋯⋯惚れるなよ、俺にはキャスという最愛の彼女がいるんだからな!」
「ニャ? 彼女がいるのかニャ!」
「ああ、とっても可愛いんだ⋯⋯口では俺を拒否するがな」
「まだ会ったことがニャいけど、可哀想な彼女さんニャ⋯⋯」
「なに?」
可哀想? たしかに、あの別れ方は突然だったな。 俺はふと、自分の体を見つめる。 昨日までのガキだった体は、今や立派な青年だ。
ちなみにこの学園の制服は、モブ亜種から窃盗した。 そのモブは今頃、俺の代わりに牢屋に入っているだろうーー
なぜ俺がこんなことをしているかと言うと、キャスと暮らす家のためである。 だから、キャスーー 待っててくれ! 俺がお前のために、世界をつくり変えるーー
「あはは。 キャス! こっちだよ⋯⋯愛してる⋯⋯」
「⋯⋯ニャ! 完全にトリップしているニャ~ 本当はワンパンで気絶した弱々な奴なのにニャ。 ⋯⋯⋯でも、なんだか新鮮な気分ニャ? ワタクシは君と仲良くなりたいニャー」




