第7話 噛ませ犬は淘汰される運命
自己紹介が終わり待機時間になった。 デクの棒であるゲバドンが出て行く。
すると、俺の所へミルフィがやって来た。
「ニャン! ナナシって本当にその名前なのかニャ?」
「うるさい黙れピンク猫」
「ニャ? 愛想がよくないニャ? 親に言われなかったのニャ?」
「⋯⋯⋯黙れ」
親なんて、もういないーー 俺は怒りを堪える。
「ミルフィちゃん~ ダメでちゅよ~ ナナシ君を怒らせたら」
「リディ! ⋯⋯ワタクシはただ、彼の本名が気になっただけニャ⋯⋯」
「ウフフ。 そんなの敢えて知る必要ないでしょう? 名前なんてただの記号だもん~ ⋯⋯と言うか~ 貴方もでしょう? ミルフィちゃん」
「ニャン! もしかして、ワタクシのこと知ってるニャー?」
「あら? どうかしらね?」
俺の真横で会話するな。 亜種の分際でーー そう思っていると、今度は金髪エルフまでやって来た。 しかし、用事があるのは俺ではないようだ。
「⋯⋯貴方達。 静かにしてください⋯⋯」
「ニャン。 貴方はたしかフレイアさんですニャ?」
「⋯⋯⋯そうです」
物静かなメスだ。 まあ、それも当然だろう。
エルフはプライドが高い亜種だ。 他の亜種よりも、自分達が一番優れていると思い込んでいる。 それは人間に対しても同じであり、普通は辺境地の森でひっそりと暮らしている。 そのためこの様な場所にいることは珍しい。
フレイアがボソボソ声で注意をすると、なぜかゴミが俯いて痙攣していた。 ミルフィが気になってリディの表情を見ると、なぜか笑っていたのだった。
「プププ⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯⋯」
「ニャン! リディ、失礼ニャ! エルフはプライドが高いニャ! きっと怒っているニャよ」
「や、だって⋯⋯⋯⋯ププ。 あのフレイアがこのキャラ設定って⋯⋯⋯ププ」
「⋯⋯⋯⋯⋯」
「ニャニャ。 じっとコッチを見てるニャ! 怒っているニャ!」
だから、俺の前で騒ぐな亜種共。 本気で追い返そと剣を構えようとした時ーー
「おいおい! 世界の主人公さんよ~ さっそくヒロインたちとイチャイチャか?」
「⋯⋯⋯⋯」
ほら、またやかましい奴が来た。
「ハア? ダンマリかよ。 主人公さんはいい気なもんだぜ。 オラ! なんか言ったらどうなんだ? あぁ?」
「うるさい羽虫だ⋯⋯」
「⋯⋯なんだと? いい度胸じゃねえか。 表出ろや! コテンパンにしてやる!」
まったく、典型的なお約束だな。 前回の部下たちが読んでいた本と同じじゃないか!
物語の序盤ーーこういう奴が主人公に楯突く。 しかし、主人公がちょっとだけ本気を出せば、哀れな雑魚は地面にひれ伏してしまう。
つまり、奴は噛ませ犬。 ボコボコにされる引き立て要員だ!
俺は噛ませ犬を一瞥すると、教室を出る。 そして、誰もいない運動場に俺とルーブが対面するーー
「チッ。 その生意気な面⋯⋯へし折ってやんぜ!」
「まったく。 口数の多い奴だ。 ⋯⋯こいよ角の違いを見せてやる」
俺は背中にある剣を取り出したーー するとなぜか奴は怪訝な表情になる。
「おい、ナナシ! なんのつもりだ?」
「⋯⋯はあ? なんのことだ? さっさと死ねよ? 雑魚!」
「俺は拳で戦う、つまり武器はなしだ。 そもそもこの戦いはただの力比べだ! ⋯⋯なのに貴様は武器を使うのですか? そんなの勝負として対等ではないでしょう?」
「ハア? ⋯⋯おいおい。 お前の武器は拳なんだろ? じゃあ問題ないじゃん。 どうせすぐに終わるんだからな。 お前は退場! 二度と出番は無し!」
「⋯⋯なるほど。 これは失敗ですね。 『俺』のキャラを間違えましたか⋯⋯」
なんだ? 考え込んで! こいつ真面目ちゃんかよ! 勝負なんて生きるか死ぬかだろ? 対等なんてクソ喰らえだ! そんな腐った常識なんて俺には通用しないぞ。
そんなことを考えていると、うざったいギャラリーがやって来た。
「ニャニャ! まだ始まってなかったニャー」
「丁度いいタイミングね~ ⋯⋯あらあら、ルーブが説教しているわよ? さっそくキャラ崩壊しているわね~」
「⋯⋯ルーブだけ狡いわ! 私もおしゃべりしたいのに」
「ニャ? 二人ともルーブと知り合いなのかニャ?」
「別に~ 初対面だよ~」
「⋯⋯⋯⋯知らない」
「そうニャのか? ⋯⋯なんだか怪しいニャ! ワタクシだけ除け者扱いニャ」
モブの亜種共がウザい。 さっさと終わらせますか~
俺は巧みなステップで、奴の周囲を回る。 さてどこから刺そうか? 心臓を刺せば一撃で終わりだな。 それともじわじわか? この剣でズタズタにして、俺に歯向かったことを後悔させてやるのもいいね。
「⋯⋯なんですかこれは? 当て物でしょうか?」
「クク。 どうだ? 見えないだろ? これから刺される恐怖に震えろ!」
「でしたら、止めるだけですね」
奴が前に出た? ここは軌道修正をしてーー
「ふん。 まずは小手調べだ⋯⋯」
奴は高速で俺に目掛けてパンチを放つ。 その景色を最後に意識を手放したーー
「これが主人公? 笑わせる。 もっと来いよ! 俺に力を見せろ!」
「ちょっと! ルーブ!」
「⋯⋯⋯どうしたフレイア? 今は演技に集中しろ」
「こいつ、気絶しているわよ?」
「⋯⋯⋯なんだと? 弱すぎるぞ勇者よ⋯⋯」




