第6話 自己紹介は波乱の気配
バルテン王国の中にある巨大なアカデミー、パルディア学園。 今日は新学期が始まる日である。
講堂には人が詰めかけていて、皆が開始の時を待っていた。 しかし中々始まらないことに、一同が何事かと思っていた頃。
「⋯⋯大変申し訳ございません。 新任の校長がまだパルデン王国に到着していませんので、代理として私⋯⋯コディが担当させていただきます。 我々、パルディア学園は平等と平和を重んじており、どの種族であろうと等しく学び育んで参ります! 今年も、我が学園に新たな芽が現れました。 紹介しましょう。 新入生入場です!」
代理校長のコディが合図をすると、ファンファーレがなり始める。 軽快な音楽が鳴り響く中を、同じ服装をした軍団が歩く。 しかし、その見た目は様々。 髪の色を始め、羽やツノが生えたり、耳が変形していたり等々ーー 人間ではない者が多く混ざっている。 人間主義の者からすれば、唾棄すべき行為だ。
しかし、ここの観客たちは表向き、歓迎ムード一色である。 俺は心の中にある、破壊衝動を堪えるので精一杯であった。
抑えろ! この場では駄目だ。 気持ちを鎮めるんだーー
入学式が終わり、俺は指定されたクラスへ。 しばらく待っていると、教員の服装をした奴が入って来た。
「このクラスの担当になったゲバドンだ、よろしく頼むぞ。 ではさっそく、みんなに自己紹介してもらおうじゃないか」
ゲバドンと名乗った担当教員は、巨漢の大男だ。 ーー先祖がゴーレムなのか?
まず最初に前に出たのは、ピンク髪のネコミミ。 この国の奴ではないな。
「始めましてニャー ワタクシの名前はミルフィって呼んでニャ!」
いかにも元気っ子で、親しみやすそうな雰囲気を醸し出しているが、所作から滲み出る優雅さが気持ち悪い。 俺が睨んでいると、こちらにウインクしてきやがった。
続けて妖艶な歩き方でアピールする淫魔が前に立つ。
「リディよ~ 私はサキュバスなの~ 驚いた? ふふ。 実は私の家系が、唯一生き残っている家系なのよね! と言うことで! 私は天然記念悪魔だから~ や、さ、し、く、し、て、ね? チュー」
ーーサキュバスか。 俺はキャスの顔を思い出す。
『なによ、私のお尻を凝視して! ヒップタックルを喰らわせるわよ』
『お願いします! 是非キャスのお尻を俺の顔面にぶつけてください! ハアハア! さあ早く!』
『気持ち悪。 誰かそんなことするもんですか! 私のズボンがアンタの唾液で汚れるわよ。 ⋯⋯ふふ。 それとも生がいいのかしら? それなら話しは別ね~ いいわよ、優しくしてあげる~』
『あ、だったら別にいいです』
『なによ! サキュバスらしいことさせなさいよ~』
こうして、キャスのことを思い出してニヤついているとーー
「おや? ⋯⋯うふふ。 そこのヒユーマン君駄目よ! そんな顔しちゃ! 食べたくなっちゃうから」
「⋯⋯はあ? なんだよゴミクズサキュバス?」
俺は、目の前にいるゴミを冷めた目で見つめる。 キャス以外のメスに媚びられても嬉しくないんよ。 どっか行け!
「⋯⋯⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯へえ。 本当にそう思っているのね、面白い子。 ふふ~」
冷たい沈黙が教室を支配していたーー しかし、やがて諦めたのか、ゴミはどこかへ消えていった。 まったくイライラするぜ。
「フレイア⋯⋯」
続いての金髪エルフは、それだけを言うと、そそくさと去っていく。 ーーさすがエルフ、他者には興味がないようだ。
「やっと俺の出番か~ よお! 俺の名前はルーブ! 武器は拳だぜ!」
人間の青年はそう言うと、目の前でシャドボクシングを始める。 拳術士なのか? ーーどうでもいいが、次は俺の番なので邪魔だ。
「邪魔だどけ脳筋」
「⋯⋯⋯ああ?」
俺が挑発するとイカツイ表情で凄んでくる脳筋。 俺に歯向かう奴はみんな嫌いなんだ! だからコイツも嫌いだ!
「ルーブさん、席に戻りなさい」
「⋯⋯チッ。 後で覚えてろよ⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯⋯」
無能な担任教師がやっと仕事をしてくれた。 まったくおせーんだよデクの棒!
ーーまあいい。 俺は愚民どもの前に立ち堂々と自己紹介をする。
「俺の名前は⋯⋯ナナシ。 この世界の主人公だ。 この世界は俺のためにある⋯⋯俺がこの世界の全て。 お前ら雑魚亜種はただのモブだ!」
「ナナシって名前なのかニャ?」
「アラ! 主人公って大きく出たわね~」
「⋯⋯⋯⋯⋯」
俺の学園ライフが始めるーー




