第5話 洞窟の中の誓い ーーキャス視点
「ミアちゃん? 変態じゃないお姉さんがご飯持って来たよ!」 「⋯⋯⋯⋯⋯」
「⋯⋯やっぱり、無反応か⋯⋯」
あれから、ミアちゃんは目を覚ました。 しかし、呼びかけても反応がない。 その視線はただ前を向いているだけだった。
ミートは私に様子を尋ねる。
「⋯⋯どうじゃ? ミアの様子は?」
「全然駄目。 まったく反応してない⋯⋯」
「うむ。 廃人状態か⋯⋯ しばらく安静にして、様子見しかないが⋯⋯」
ミートは、周りを見渡す。 たしかに、この場所で様子見をするのは酷よねーー
「ギバドルの街に戻るです?」
「私なら、飛んで運べるけど⋯⋯」
「やめておいた方がいいじゃろう。 飛行中に錯乱するかもしれないからの。 となれば、歩きじゃが⋯⋯それじゃ遠いのう⋯⋯」
そっか、たしかに飛行中に暴れられたら危ないわね。 じゃあどうすればいいのよ?
「⋯⋯うむ。 ここは、一か八か、賭けて見るしかなさそうじゃの」
そう言うと、ミートはカバンの中から、地図を取り出す。
「今の場所がここ。 それでパルデン王国はここじゃ!」
「え! めちゃくちゃ近いじゃない!」
この距離なら飛んだら一瞬だわ!
「その通りじゃ! そしてそこには、儂の棲家がある。 広くて快適じゃぞ!」
「なんでこんなに近いのに、帰らないのです?」
「う! それは事情があっての~ 追跡者が儂の棲家を知っておるのじゃ。 ⋯⋯でも、この状況なら仕方あるまい。 それに奴は子供相手には優しいからの⋯⋯」
どこか諦めを込めた口調ね。 でも、私たちには影響なさそう?
「⋯⋯なるほど。 でも肝心のミアの治療については、どうするのよ?」
「うむ。 それについては考えがあるぞ!」
分厚い本を取り出した。
「儂の敬愛する人物! ファナイの『世界の理』 ⋯⋯この中にヒントがあるはずじゃ!」
「ファナイってあの人かな?」
「なんじゃ? 会ったことがあるのかえ? 彼女は儂の憧れなんじゃ! なにを隠そう、この口調も彼女の真似なんじゃよ!」
私たちは先日会った、老婆を思い出すーー
「⋯⋯たしか。 ふむふむ、へえー。 体を成長させる薬なんてあるのかえ? 驚きじゃの! でも儂が欲しいのは若返りかの?」
「ちょっと! それは関係ないでしょ? 真面目に調べているわけ?」
「なんじゃい、せっかちじゃの! この本は面白いからどんどん読みたくなるのじゃ! なんてたって、ファナイ先生が儂の校長デビューの際に、直々にくれた本じゃぞ! 期待しかないじゃろ?」
「もう! 知らないわよそんなことは! 早くどうするのか教えなさいよ!」
「自閉してしまった生物を正常に戻す方法⋯⋯それは、対象の精神世界へ入ることじゃ!」
「精神世界って⋯⋯そんなこと可能なんですか?」
「⋯⋯この本には色々な方法が書いているが、凡人である私には実現不可能じゃな。 一番簡単なのは呼びかけ続けることじゃが、効果が薄いのう⋯⋯」
そんな! どうすればいいのよ! ーーってあるじゃない最適な方法が!
「⋯⋯つまり、ファナイを見つければいいのよね?」
「⋯⋯! たしかにそうじゃが⋯⋯彼女は所在不明じゃ。 なにせ行動原理は完全に気まぐれだからのう」
「でもゼロじゃない⋯⋯そうよね? 私、探しに行くわ! でもこの場所で待機は厳しいかしら? やっぱりパルデン王国で合流しましょ!」
周りは岩肌しかない。 とても長期滞在には向かないわねーー
「⋯⋯うむ。 そこは儂に任されよ! 三人ぐらいならなんとか出来るぞ⋯⋯道中も儂がいるから安心じゃ!」
ミートはニコニコしながら言う。 ーーでもこのお姉さん逃走中なのよね? 大丈夫かしら? そう思っているとミリィが声をあげる。
「そんな! 私も探すです!」
「駄目だよミリィ。 ⋯⋯ラムのそばにいてあげて」
ミリィの気持ちはわかるけど、今はラムことも心配だわ。 アイツーーゆう君がいればよかったのに。 なんでこんな時にいないのかしら?
「⋯⋯! ⋯⋯わかったです」
「ごめんなさい。 私が足を引っ張っているよね」
「ラム。 そんなことない! この状況でみんなが離れるのは危険なの! だから私一人で行ってくるわね。 それにね、翼があるから一人の方が早いし⋯⋯」
私はそう言うと、ラムとミリィに向けて拳を出す。 二人とも、ニコニコしながら突き出してくれた。
「ミアの精神救出作戦! 開始」 『おお!」です!」
私は翼をはためかせ空を飛ぶ。 絶対に見つけてあげるからねーー
「⋯⋯ふむ。 数日後の未来で、儂の噂を誰かしているようじゃの?」
「ハア? 数日後? なんだそりゃ! 意味不明なこと言ってるんじゃねえぞ? ⋯⋯そんなことより。 オイクソババア! この薬で本当に成長するんだろうな?」
「まあ、そうじゃが? ⋯⋯いいのかえ? 人生とは一期一会。 行き急ぐ必要はないぞ。 子供の内にしか出来ないことが⋯⋯」
「チッ。 そんなもんどうでもいいんだ! 俺は早く大人になりてぇの! 子供の体じゃなにも出来やしない⋯⋯早く大人になって俺はキャスと⋯⋯ククク。 あばよババア!」
「ちょっと待つのじゃ! 説明がまだ終わってないぞい! ⋯⋯ああ。 儂は知らんぞ~ 勇者よ」




