第4話 虚構人格 ーーキャス視点
「オホホ。 儂の名前はミート。 今はパルデン王国を目指して一人旅をしておるのじゃ」
若い人間のお姉さんの見た目なのに、言葉遣いが老人ね?
「こんにちは、私の名前はキャス」
「私の名前はミリィです」
「オマエニンゲン。 ツブス?」
「えっと。 この子はラムです。 ⋯⋯なんで戻らないの?」
「ナゼカモドラナイ⋯⋯」
彼女はラムを見ると、一瞬だけ悲しげな表情をした後、優しく語りかける。
「⋯⋯この状態は黒魔獣化じゃの」
「⋯⋯!」
「ミートさん! 知っているです?」
「黒魔獣化ねえ。 アイツもそんなこと言ってたけど、なんなのよそれ」
「⋯⋯ふむ。 勇し⋯⋯ゆうは説明してないのじゃな。 だったら、儂が言えることはないのじゃ。 ゆうに聴くとよい」
「聴きたくても、アイツ消息不明なんですけど?」
「なんじゃと! そんな馬鹿な! やばいのじゃ⋯⋯」
私がそう伝えると、彼女はワナワナ震えだしたんだけど。
「ちょっと! どうしたのよ?」
「ゆうの両親が探しておってな。 やっと見つけたと思ったのじゃが。 ああ、やっと安心出来ると思っていたのに」
そうなんですか。 育て方を間違えてるわ、ご両親!
「早く見つけないと、儂の命が危ないのじゃ! 実は今、逃走中でな。 ⋯⋯あやつら、腹いせに毎日儂をいたぶって来るのじゃ! 今、見つかったら殺されるぞ! ⋯⋯せっかく、パルデン王国で校長になれたのに⋯⋯」
ーーえっと。 猟奇的な両親なんですね~
「⋯⋯う~ん。 貴方は誰なの?」
「おや? こちらの子はネコミミかえ? 珍しいの⋯⋯」
ミアの寝顔を優しくみる彼女が何気なく呟く。
「やっぱり珍しいんです?」
「当然じゃ! あのミミの部分には魔力タンクが備わっているんじゃ! 立派で逞しいネコミミ! 羨ましいぞ!」
「ミアが羨ましい? ⋯⋯こんなもの、いらない! こんなものがあるせいでミアは苦しんでいるんだよ! こんな耳なんて、根元からちぎり切ってやる!」
そう言うと、ミアは近くに置いていたナイフを手に取る。 そして、ネコミミにナイフを向ける。 その目は虚で意識が覚醒してないようだった。
「そんなに欲しいならあげる。 こんなものなければいい⋯⋯こんなものがあるから、ミアは蹴られて、殴られて、差別されて、死にたくなるんだ!」
「ミアちゃん! 落ち着いて、ね?」
「なによ? 変態露出お姉さん? そんな紐下着で言われても説得力がないよ」
「変態露出ですって! この私がゆう君と同じだって言うの? ⋯⋯わかったわ、今すぐ服を着るから待ってて! ⋯⋯私はアイツとは違うんだから!」
「キャスさん。 この状況でその行為は滑稽です⋯⋯」
しまったわね、ついついこの格好のままだったわ! えっと、シャツとセーターとズボンっと。 コートを羽織って、靴下とブーツも装着して、グローブも!
「⋯⋯ミアよ、その力は要らぬものではない。 力は必要だから生まれる。 つまり、お主は使命を持って生まれたのじゃ!」
「うるさい! ミアの境遇を知らないくせに! 勝手なことを言わないでよ!」
「⋯⋯チカラ? ワタシニモイミ⋯⋯があるのかなぁ?」
「あ! ラムが戻ったです!」
「ラムよかったわね」
それにしても、これがミアの本当の気持ち? こんな激情ををずっと心にしまい込んでいたんだね。
「たしかに過去は変えられない。 じゃが、今からは変えられる。 ⋯⋯つまらない昔など捨て置いて、今この時を一緒に生きようぞ! たった一回しかない今日と言う一日を。 今日からは、儂らがお前の支えになるからの? そうじゃろ、キャス」
「当たり前だわ! 変態露出じゃない私が優しくしてあげる~」
「ミアちゃん! 私やラムもいるです! ⋯⋯ってあれ? 倒れたです」
「⋯⋯きっと、気力を使い果たしたんじゃの⋯⋯」
ミアちゃんが、突然凧糸が切れたみたいに倒れた! ミートが様子を見ている。
「⋯⋯うん。 まずいのう。 思ったより深刻かもしれんぞ⋯⋯」
「どう言う意味ですか?」
「さっきの彼女は虚構人格じゃな。 ⋯⋯考えたくないことじゃが、お主らと話していたミアもそうだろう⋯⋯本当の彼女はどんな人物じゃろな?」




