第101話 ダンジョンを論破する白髪魔術士
『……我が、なりたかった? 何を根拠にそんな。 我はダンジョン、そのものだぞ! ここではなんでもできる、我の城なんだ!」
化け物は鉤爪で床を掻いた。 駄々を捏ねて。 抵抗して、一生懸命に否定の意思を表している。 ーーまるで子供みたい。
「じゃあ、なんで情報屋なんかやってたの? それに、ギルドの張り紙の担当も……」
『……うるさい。 白髪。 無口な癖に、余計な発言を次々と』
「ほら、演技しようとしても、ボロが出ているよ?」
『……何?』
私は、化け物を見上げた。 姉さんが、横から口を挟んだ。
「そうよ! 毎回楽しみにしてたんだから!」
『……ククク。 あれは、マッチポンプだ。 全部自作自演だったのさ。 それを我が、面白おかしく書き記したまでよ』
「違うよね?」
私は、続けた。 指を指して、気分は名探偵だ。
「人を溶かして飲むだけの存在が、わざわざ文章なんて書く? 何のために?」
『書くだろう。 お前たち、人間をコケにする絶好の機会だからな!』
「嘘」
私は、即答した。 段々と、この化け物が哀れになって来たよね?
「ここで生きた人々の記録を、心に刻むためだよね?」
『……世迷言を。 なにを根拠に、そんな虚言を吐く!』
「フレイアが言ってたよ。 助けて欲しいって、ダンジョンがSOSを出していたって。 ご丁寧に記憶まで添えて……このダンジョンを何とかしてって……」
◇◇◇
私はフレイアとの会話を思い出していた。
「フレイア? なんで、私たちのこと知ってるのよ? ご丁寧に容姿まで、知っているなんて……」
クイズ大会を見ていた時。 姉さんがフレイアに問いかけていた。
「それは、ダンジョンの記憶を読み解いたからよ」
「記憶? なによそれ!」
「このダンジョン本体からの助けて! ……ってメッセージよ」
「……どんなことがあったの?」
「ファナイ……ウチの馬鹿弟子が、ここで悪いことをしている様子とか……その。 貴方達がカマセイヌ?だったか知らないけど、その……男たちに嬲られていた所とかね……」
「もしかして、ナナシが私たちの元へすぐに駆けつけてくれたのは、ダンジョンのお陰だったのかしら?」
姉さんは、少し考えてから答えてた。
◇◇◇
沈黙。 黒い巨体が、ゆっくりと腕を下ろした。
「……あの時、私たちを助けてくれたのも貴方でしょ?」
『助けた? ……ククク。 我はなにも』
「ナナシに知らせてくれたんでしょ? 私たちが嬲られていることを」
『……なにを根拠に、その思考に辿り着いた? 空想は夢の中だけにすべきだ』
「ナナシが言ってたんだよ、ダンジョンに呼ばれたって」
『ナナシが? ……てっきり、コミ障だと思っていたのに』
「あれ? もしかして本当に、そうだったの」
ーーカマをかけただけなのに、見事に引っかかってくれたね?




