第23話 獣人族の定め
宿屋の寝室で俺は考えていた。 前回、キャスを殺したラムとか言う奴。 そいつが覚醒してしまったのだ。 だが、幸いなことにキャスや俺に、敵意を抱いていないようだ。
ーーだが、なにが起こるかわからない。 早急にここから去らなければならない。
「キャス。 朝一番にここを出よう。 そして、静かな場所で二人で暮らすんだ。 獣人どもの顔なんて、見たくもない⋯⋯」
「私を獣人族の人たちと、関わらせないことに、必死ね。 この街に入る前もそうだったけど⋯⋯ 」
「別に。 今さら言っても遅いさ。 キャスは俺の言うことを聴いたらいいんだ」
「あ、そう。 それで、ゆう君は嬉しいの?」
「嬉しい? ⋯⋯そんなことはどうでもいい。 俺は君が死ぬのが嫌なんだ」
君が生きていないと、俺はまた一人になってしまうからーー
「はあ、もう寝るから。 おやすみ~」
「おやすみ、キャス。 いい夢を⋯⋯俺の最愛の人⋯⋯」
俺はキャスに声をかける。 するとドアが開き、ラムが現れた。 俺は彼女を睨みつける。
「⋯⋯えっと。 こんばんは⋯⋯」
「話しかけるな。 バケモノ⋯⋯」
俺の発言に傷ついたフリをするラム。 ーーあの時もそうだ『貴方を私と同じにしてしまった』だと?
そうやって同情を誘うつもりか?
「あの⋯⋯黒魔獣化ってなんですか?」
「⋯⋯⋯」
「知っているんですよね? 教えてください」
俺の睨みに屈しないどころか、真面目な表情をとるラム。
「おい! ⋯⋯この話は二人の前でするなよ。 せいぜい体のことを聞かれたら、元気だとか、クラスチェンジだって答えるように⋯⋯」
「⋯⋯と言うことはつまり⋯⋯違うんですね」
「ああ、可哀想な奴。 悲しい上位機種だな。 ⋯⋯たしかに、戦闘能力は上がる。 しかし覚醒した時から、自らの寿命を縮め続けるんだ。 よかったな、老いることなく、若いまま死ねるぞ」
俺がそう言うと『教えくださってありがとうございます⋯⋯』とだけ言って帰って行った。
次の日。 俺はキャスと一緒にこの場所から、離れようとしたが、奴らが一緒にバルテン王国へ行くと言ってきた。
キャスは賛成なようで『準備するから邪魔』と言って追い出された。
俺は、ミリィとラムを睨む。
「ゆうさん! よろしくお願いします」
「⋯⋯⋯」
「ゆうさん?」
「お姉ちゃん⋯⋯ほっとこうよ! それよりも、私たちも支度しよ」
「えっと⋯⋯そうですね。 では、失礼します」
アイツらが去った後、俺は盗賊団の元へ向かった。 中には、この街の獣人たちが集まっていた。
「⋯⋯お前ら。 どう言うことだ」
「⋯⋯ミリィとラムの言った通りです。 我々は、この街を放棄して、この盗賊団の黒幕を殲滅する旅に出ます。 ⋯⋯その間二人には、バルテン王国に避難していただきます」
「⋯⋯雑種が。 死ぬぞ」
「承知しております。 ⋯⋯ですが、それが我々の勤め。 高潔な血を守ることこそが、我々の存在意義なのです。 例えば、勇者と生まれ故郷の村人たちと同じものです⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯」
俺はなにも言えなかった。
ーーこの俺が同情? そんな馬鹿な。
「ふふ、ピクニック日和だわ」
「いいお天気ですね」
「お散歩、お散歩~」
綺麗な草原を歩く。 キャスはスカート姿でピクニック気分だ。 風でヒラヒラスカートが舞うことで黒い下着が見えるが、それに喜ぶ奴はここにはいない。
ーーそんな草原の中。 それはポツリと立っていた。
「いらっしゃい。 儂の名前はミス・ファナイ。 丁度いい所に来たのう」
黒ローブの老婆が、俺たちの前に姿を現したのである。




