第99話 ダンジョンは私たちの敵
謎の声が、空間に響いた。 ーー戻って来たか半身よ、と。
ーーオニギスの口からじゃない? どこから聞こえているのか、分からない。 不気味なことが起きている。
「さて、一戦まみえる必要がありそうですね。 ……アメジスト、わかってますね?」
「ぶぅ! ギタギタの粉々にしてやんざぃ!」
「粉々にしてどうするのです? 単細胞馬鹿……」
「なんだゔ! なにが違うんでぇ」
「貴方の考え方、構造、生まれ立ち……」
「全否定かぅ!」
この二人は、相変わらずコントをしているよ。 今、それどころじゃないのに。
ーーオニギスの体が、痙攣している。 心臓は吸い込まれるように、口に入った。
その後、黒い外殻が服を突き破って、次々に突き出してきた。 体が変形していくーー化け物に。
「オパールっ、離れて! 来るわ!」
姉さんは私の前に出た。 光を吸い込む黒い外殻。 背には剣山のような結晶。
ーー第十層で、エメラルドたちを襲ったという化け物は、オニギスだったの?
『フ、ハハハ……』
「オニギス? ……じゃないわね」
『オニギス? ハハハ』
化け物は、こちらを見下ろした。 心底おかしいと言いたげだった。
『こんな出来損ないの半身には、大層な名前だなぁ?』
「どういうことよ」
『言葉通りだ』
化け物は、自分の胸を叩いた。
『コイツは、我の弱い部分よ。 我から、勝手に抜けでおった』
「勝手にって……アンタ、心臓だったじゃない!」
『否……我は心臓であって、ならず……』
「どう言う意味よ」
「ルビー。 ダンジョンそのものって言うことです」
ターコイズが姉さんの疑問に答えた。 ーーそういうことか。
『あれは愚かでのう……人の形を作り、外を歩き回っておった』
「……」
『じゃが、許そう。 こうやって、我を助けに現れたからな』
ーーつまり。 あのまま放って置いたら、コイツは現れなかったんじゃ? 私たちが余計なことをした?
「違います。 この化け物が消滅すれば、ダンジョンそのものが崩壊するでしょう」
「ターコイズ。 それって、かなりヤバいんじゃ?」
「はい、実は相当危なかったです。 ……本題はここからですが」
ターコイズの衝撃発言に、私たちは固まる。 生き埋めになる所だったの?
『さて』
化け物が、鉤爪を鳴らした。 ーー来る。 戦闘だ!
『腹が減った。 二百年ぶりの、自由な食事だ。 やはり、輸血パックでは味気ない。 肉を食べたいものじゃ……』
黒い腕が、振り下ろされた。 私たちは、左右に跳んだ。 ーー直後、床が砕け、金貨が粉々に砕ける。
「なんてもったいないことを!」
「許せない」
コイツは、絶対に倒さないといけない悪だーー
「えっと? お金よりも、大切なものがあると思いますが……」
ターコイズ。 オニギスがいないからって、ツッコミ役に変わったのかな?




