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死に戻りクズ勇者は勝手に生きたい〜こんな奴に勇者は任せておけない!  作者: Masa(文章力あげたい)
黄金の鉱山編

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第96話 ダンジョンのコアは心臓? ーーエメラルド視点

 僕は、扉の中に入る。 扉の奥にあったのは、金貨の山だった。


 白い空間の中央に、小山のように積み上げられている。 金貨、銀貨、宝石、装飾品。 崩れた縁から、じゃらじゃらと零れ落ちている。


「……なるほどね」


 僕は、呟いた。 おそらく、当時のガランド王が作るように指示したのだろう。


 しかし。 闇が吹き出して、ここまで降りれなくなったんだ。


 そして、お金が尽きてーー破産。 全てはこんな地下深くに金庫を作ったせいだ。


 三百年。 ある男が掘り当てた鉱脈は、ここで燻っていたんだね。


 僕は、空間を見回した。 金貨の山の奥で、何かが脈打っていた。


 その場所で、ファナイの興奮する声が聞こえてきた。


「おお……おお! これじゃ、これこそが!」


 僕がその方を見ると。 ーー禍々しい鼓動を放つ、心臓みたいな奴があった。


 歪な肉の塊。 どくん、どくん、と一定の間隔で脈打っている。


 そこから、無数の管が伸びていた。 まるで血管みたいだった。


 空間全体に網の目のように広がっている。 そして、その根元には、血が入った巨大な器。


 僕は、器の中を覗き込んだ。 赤黒い液体。 けれど、ただの血じゃない。


 ーーああ。 僕は理解した。 この材料はおそらく。 このダンジョンに入った人間の欲や希望。 そして体。


「……これがダンジョンのコアか」


 僕は呟いた。 願いが叶うという噂に惹かれて降りてきた人たち。 その欲が、絶望や希望が、体ごと溶かされて。


 この器の中で、心臓ーーつまりダンジョンを育てる養分になっていた。


「フォフォフォ! フォーッフォッフォ!」


 ファナイの奴は、それを見て愉悦していた。 心臓に手を這わせ、頬を寄せ、恍惚とした顔で笑っている。


「これが、これが! 儂の求めていたものじゃ! ……これを利用すれば、儂に永遠の命が宿るのじゃ!」


 ファナイの目が、爛々と輝いていた。 そんな中、ミアの奇声が聞こえてきた。


「きゃあ! ナナシが襲ってくるの! 助けて!」

「ゔぁ! ははは! 待ちやがれ、猫ミミ女! 今、ギタギタにしてやるぜ〜」


ーーなんだい? 完全にイッチャッたのかい、ナナシ?


 黒猫が、全速力で走ってくる。  ーーその後ろを、狂乱したナナシが追っている。


 目が、据わっていた。 焦点が、合っていない。


「……完全にイカれているじゃないか」

「騒がしい奴じゃ……」


 そして、ミアがここまでやって来て、血液管をグルグル回る。


「きゃー! 助けてなの!」

「逃げんじゃねえええ!」


 ナナシが、狂ったようにその後を這いずり回る。


「お前たち、そこをウロチョロするでない! 聞いておるのか!」


 血管を踏み、蹴り、這いずり回りながら。


「おい、やめろ! そこは……それ以上は止めるのじゃ!」


 ファナイは嘆くだけで、なにもできない。 下手に動くと、致命傷になるとでも思っているんだろうね。


ーーブチ。 ブチブチ。 やがて、脆い血管が崩れて崩壊を始めた。


 赤黒い液体が噴き出した。 ファナイの顔が、固まった。


 一本が千切れると、支えを失った他の管が次々に裂けていく。 天井を這っていた血管が垂れ下がり、床の管が破裂する。


「儂の、儂の! 不老長寿が……いや、まだじゃ! まだ終わらんよ!」


 杖を振り、時を止めようとする。 ーーでも、動揺しているね?


 焦りは技を効きづらくする。 そんなこと、彼女が一番わかっているはずなのに。


 僕は、崩れていく血管を見上げた。 止まることのない時間の中、ジッと見つめていた。


「……嘘じゃ」


 ファナイは、心臓に駆け寄った。


「儂はこのために……ここに来たのじゃぞ!」


 心臓の鼓動が、乱れ始めていた。 養分を送る管を失って、しぼんでいく。


「やめよ……やめてくれ……」


 ファナイは、肉の塊に縋りついた。


「これがなければ、儂の延命が……」


延命かーー それは、時を操る魔女にもできないものなのかい?


「あっかんべ〜 ナナシちゃん? いつになったら、ミアを捕まえられるの〜 ダサダサなんですけど! ぷぷ」

「動くなあぁ! 今すぐに、そのムカつく猫ミミを削ぎ落としてやっんよ!」

「削ぎ落とすなんて酷い〜 ……でも。 痛みがないなら、大歓迎だよ〜」

「そんな訳ねえだろう! その面を歪ませてやるぜぃ」

 

 ナナシとミアが追いかけっこをしている。 ファナイは、心臓にしがみついて、肩を震わせている。


「きゃー! まだ追ってくるの! 負けず嫌いなの」

「待ちやがれええ!」


 その横を、ミアとナナシが駆け抜けていった。


「……お前らのせいじゃ。 ナナシ……」

「あ? ……おやおや。 クソババアじゃないか? ククク……」


 ナナシが、足を止めた。 標的を変えたらしいーー


「許さんぞ、お前ら。 全てを破壊してくれよう……」

「へ! やっと、ボコボコにできるぜ。 歯ぁ食いしばれよ?」


ーーナナシ? 君の実力だったらすぐに負けるよ、奥の手の刀はどこにやったの?

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