楽しい狩りの時間
「素晴らしい。 この先に、儂が求めるものがあるのじゃな!」
ファナイが我先にと、光の先へ進んで行った。
触手が体に絡んで動けない。 土が口の中に入ってくる。 何度目だ、この味は。
刀で斬りつけ様にも歯が立たない。 ついには粉々に折れやがった。
「くそ。 鈍刀め……」
「……哀れだね、ナナシ?」
エメラルドの奴がいつの間にか、俺の前に来ていた。 そして、俺の様子を見ながら、薄ら笑みを浮かべている。
ーーなに笑ってやがる! さっさと助けろよ!
しかし、奴の口から出てきたのは、俺には理解できないものだった。
「僕は先に行くよ?」
「なんだと? お前は、この先に用があるのかよ!」
「ふふふ。 ハッハハ」
「……なにがおかしい。 何笑ってやがる?」
「いや〜 愚者が何か言ってると思ってね……」
ーー愚者? あの老婆と同じことを言いやがる。 しかも、この俺を見捨てて先に行くとか言い出しやがった。
「なにを言ってやがる! 早く助けろよ」
「なんで?」
「……あ?」
「君を助ける理由がない」
そう言うと、エメラルドは光の中へ消えて行った。 あり得ない。 この俺を見捨てるなんてーー
俺はもう一人の同行者を確認する。 ーーあの猫ミミ女に頼るのは癪だが仕方がない。
「マイクよし! カメラよし! ミア最高によし! ライブスタートなの!」
「……おい。 猫ミミ。 俺を助け……」
「みんな、緊急ライブなの! 今、ミアはガランド山脈の最下層に到着したんだけど、なんと門が開いたの! 今から、ミアも中へ突入するの期待しててね!」
「テメェ! 聞こえないのか! 早く俺を助けろ!」
俺が声をかけると、ミアは俺の方を向いた。 ーーそうだ、早く助けろ!
「うるさいな、今ライブなの。 モブは静かにしててなの」
「は? 俺がモブだと? 俺は、勇者だぞ……」
「えっと。 続きは、後なの! じゃあね! なの。 ……アンタさ? そんな様子でそんなこと言ってるの? ウケるんだけど?」
ミアは、俺の顔の目の前まで近づいて。 舐めた面を晒し始めやがった。
「ねぇ、悔しい? ……だったら早く、そんな触手破ってよね?」
「……できないから、助けを乞いているんだろうがよ!」
「嘘つき。 貴方はまだ、全力を出してない」
「は?」
ミアが、俺の目を覗き込んだ。 まるで、俺を見透かした様にーー
俺は、腰に下げていた刀を取り出した。 それで、触手を切り裂く。
触手は意図も容易く切れた。 俺は立ち上がるーー
目的は当然、俺をこけにしたコイツらへの仕返しだ!
「ほら! やっぱりできたの。 さあ、扉の奥に進むの!」
おや? 目の前ではしゃいでいる。 黒猫がいるなぁ? 処分するか。
「ナナシ! 早く行くの、未知の世界が待っているの」
ミアは、扉の光の中へ消えて行った。 さあ。 狩の開始だ!
俺は光へ駆け出した。 刀を身につけることを忘れたままでーー




