第88話 違和感と築かれている信頼
結果、脱衣もできないまま、第二十五層まで降ってしまったわね。 道中に魔物が出てこないのが違和感だわ。
酸性スライムや、酸性トードとか、酸をぶっかけてくる奴が出てくると期待ーーじゃあなかった。 警戒していたのにガッカリだわ。
そんな私を見て、ミリィとラムがニタニタしていた。
「キャス。 残念だったね、何もなくて?」
「な、なんのことかしら」
「顔に出ているです!」
ーー趣味が悪いわね、この姉妹は。
まあいいわ、気持ちを切り替えて行きましょ! ここは、一見他の階層と同じに見えたんだけど?
「新しいわね」
「……新しいとは?」
リディとルーブの声が聞こえた。 私は、そちらに意識を集中させた。
「削り跡が、新しいのよ。 頑張って、修正しましたって感じね」
「へえ? やけに語るじゃない。 腐蝕フェチなのかしら?」
「……他の層の壁は、長い年月で角が取れて、丸くなっていたわ。 苔も生えていたし、水が染み出した跡もあった」
私の発言を無視して、長々と語り出すリディって女。 ーーそろそろ、顔を覆っているローブが面倒じゃないかしら?
「違う地形だったのを、無理矢理元通りにした感じね」
「……証拠隠滅か」
ルーブが辺りを見回して、なにかを探していた。 そう言えば、フレイアはどこに行ったのかしら? ーー忘れてないわよ、ずっと気にしてったわよ!
「なにを、うっかりな顔をしているんです?」
「さあ?」
一方。 バニラは、耳をピクピクしていた。
「……嫌な予感がします。 ここまで潜って、いないということは。 フレイアって方はもう……」
バニラが耳を伏せた。 私たちの中で、嫌な空気が流れてきた。
「……いや。 フレイアは、生きている」
「ええ。 間違いないわね」
二人は平然と、答えた。 ーーその言葉の裏には、彼女たちの長年の信頼が見て取れるわね。




