第80話 金髪エルフは弟子に自慢したい
「あれれ〜 バレた? まあ、気づくわよね? なんか、大男が騒がしいし……」
フレイアは手鏡を見ながら、呟いた。
『しょうがないの〜 我が揉んでやろう……』
「さっすが、ノームちゃん! 頼りになる〜」
『ふふふ。 後で褒美をくれよ、フレイア……』
「もっちもちのロンよ! 今回のパトロンは最高だもん」
ノームが消えていく。 ーーまるで、最初からいなかったように。
私は周囲を見回した。 私。 姉さん。 オニギス。 そして、床にへばりついたままのナナシがいた。
「待って。 だって、扉を開けたのは……」
「……アメジストさんだったはずよね?」
「そうだよ。 そして、いの一番に駆け出した」
オニギスが、短く言った。 ーーあれ? そうだったけ?
「そして、ターコイズが呆れながら、その後に続いたんだ……」
「そんな」
「オパール!」
姉さんが、私の肩を掴んだ。
「落ち着いて! ……私も、同じよ」
「……え?」
「私も、三人がいると思ってた。 ……どういうことなの?」
ーー姉さんも、だったんだ。 安心した。
「言霊の応用……影丸与一的に言うと、幻術かしら?」
フレイアが、あっさりと言った。
「……誰なのよ、その影丸与一って?」
「ああ。 ごめんなさい〜 影丸与一って奴はね? ……えっと? そこの生物と同じように、黒ずくめの奴のことよ!」
「……はあ?」
「まあいいわ! それよりも、ネタバレの時間よ〜」
彼女は、指を一本立てた。 その表情は自信に満ち溢れていた。
「扉を開ける直前、貴方たちに幻術をかけたの。 どう? まったく、気づかなかったよね! 大袈裟な程いいわよ……ズッコケてもいいんだからね! 貴方達の十八番でしょ! さあ、目立つようにどうぞ!」
フレイアは、私たちにリアクションをして欲しいらしい。 ーーなぜ?
「……じゃあ、三人は」
「あの三人には、別のドッキリを仕掛けたわよ」
「……ドッキリって。 ふざけているのかな、君は?」
オニギスの発言に、フレイアは肩をすくめた。 そして、神妙な顔で語り始めた。
「……久しぶりに再会した、私の弟子がね。 私の凄いところが見たいって言うのよ? 師匠としては、張り切っちゃうものなのよ!」
「弟子って、誰よ?」
「ファナイちゃんよ!」
「なんですって!」
ーーミス・ファナイの師匠がこの金髪エルフだって言うの?
「さあ、ファナイちゃんを喜ばせるために、早くリアクションを取って! 『師匠、凄いのです!』って、ファナイちゃんに言われたいのよ!」
「……誰が。 誰がテメェーの言うことなんて聞くもんか!」
ーーナナシが起き上がった。 その表情は、憎々しい程歪んでいた。
「あら? ナナシ、おはよう。 ……ねぇ? 私も凄いでしょ! 強者の横にいた寡黙なエルフが、実は強かったのよ!」
「お前のどこが、寡黙だったんだよ、この金髪エルフが!」
ナナシが、フレイアにチョップを喰らわせた! 軽く、コツっと。
ーーなんで、チョップなの? 私は思わずズッコケた。
「はい、ズッコケいただきました! ……これで自慢できるわね」
「……な! 俺の体を勝手に、操りやがって……」




