第71話 未開の地の探索は素敵な衣装と共に
次の日。 まあ、この地下に朝も夜もないんだけど。
「さて、出発の準備をしましょうか……」
ターコイズが、信徒たちを従えて立っていた。 その後ろに、木箱がいくつも並んでいる。
「……なによこれ」
「装備です。 ……聞きましたよ? 服や武器が溶かされたそうですね?」
ターコイズは続けて、淡々と言った。
「大丈夫です。 私にお任せください、素敵な衣装を準備していますよ……」
私は、自分を見下ろした。 埃まみれのローブ。 破れた裾。 焦げた袖口。 姉さんに至っては、酸で前掛けが溶けてしまっている。
ーー門番に見せたあの衣装のままだったら、ショックが大きかっただろうね。
エメラルドにやんわり否定されてから、私たちは渋々、いつもの衣装にきがえたんだけどーー 正解だったみたいだ。
「まず、オパール。 貴方には、これがお似合いですね」
「え! ……こ、これは!」
信徒が木箱を一つ開けた。 その中に入っていたのは魔術士の衣装だった。
青紺のローブ。 深い藍に、金糸で術式紋が織り込まれている。 そして、三角帽子。 つばの広い、魔術士らしい帽子だった。
「……帽子?」
「魔力の収束を補助します。 ……お似合いかと」
私は、帽子をつまんで持ち上げた。 子供の頃に絵本で見た、魔女みたいだもの。
ーー私の胸がザワザワして来た。 心がくすぐられるよ!
「ねえ? オパール。 早く被ってみなさいよ〜」
「姉さん。 うん!」
緊張しながらも被ってみた。
「……あ」
「どう?」
「……楽」
魔力の流れが、すごく楽だね。
「なんと! そんな回答を得られるとは……」
「……」
本当に私がこんないい装備もらっていいのかな?
「素晴らしい! やはり選ばれた者でしたか……」
「?」
ターコイズが私を関心した様子で見ていた。 目隠しで目は見えないけどーー
そして信徒が、もう一つの箱を開けた。 中に入っていたのは、青い結晶を抱いた長杖だった。
「……そんな選ばれた貴方に、相性がよいものです」
「……」
「ねえ、これは杖なの?」
「はい。 白亜の杖です」
ーーなんか、大層な名前の杖なんだけど?
「ちなみに、白亜のローブと白亜の魔女帽子と呼ばれています」
「……」
「どうして青紺なのに白亜なのよ?」
「……伝承では、白亜の魔女は氷属性の使い手と伝わっております」
「……」
なるほど。 だから、氷属性強化の衣装なんだーー
◇◇◇
「次に、赤」
「私ね、いいわよ! ドンと来なさい」
姉さんの前に、別の箱が置かれた。
ーー紅の外套。 黒革のコルセット。 そして、右肩と右腕を覆う銀の篭手と肩当て。
「わ……かっこいい」
姉さんの目が、きらきらしている。
「片方だけ? まあ、いいけど……」
さっそく篭手を装着していた。 そして、決めポーズ! かっこいいよ姉さん!
「うん! しっくりくるわね。 馴染むというか……」
「ほう。 馴染むときましたか。 素晴らしい!」
ーーさっきから、なんなんだろう? 反応が大袈裟じゃない?
「選ばれた貴方の剣は、これです」
ターコイズが、自ら一振りの剣を差し出した。
ーー長い。 姉さんの背丈ほどもある両手剣。 刀身に、細かな文様が刻まれている。
「……紅の大剣です。 そして、紅の篭手と紅の外套……」
ターコイズは、静かに言った。 私と姉さんは、顔を見合わせた。
ーー名前が大袈裟すぎないかな?
姉さんは早速、両手剣を背に負って、篭手の具合を確かめていた。 紅の外套が、よく似合っている。
「それにしても、伝承通りでしたね。 ……これらの装備は、並の魔術士や剣士がつけたら、真逆の状態になるのに……」
「「えっ」」
「はい。 他の人に試しましたが、やれ魔力が吸われるや、重くてつけられないなどと……」
「そんな危険なアイテムを私たちに渡したの?」
「はい」
私たちは、ずっこけた。 ターコイズはケロっとした表情で、そんな私たちを眺めていた。




