第66話 黄金の像ーーオパール視点
エメラルドの発言に、私は思わず天井を見上げた。 遠い地上をーー
姉さんが、立ち上がった。
「早く伝えないと! このままじゃ駄目よ!」
姉さんが、叫んだ。 私も、同意見だけどーー
「落ち着けぅ、嬢ちゃん」
「落ち着けるわけないですよ、アメジストさん!」
アメジストの制止を振り切って、姉さんは階段の方へ駆け出そうとした。
「……手遅れです」
「え? どう言う意味?」
静かな声だった。 姉さんの足が、止まる。
ターコイズが、テーブルの向こうで両手を組んでいた。 布で覆われた顔を、まっすぐこちらへ向けて。
「手遅れだと申し上げました。 あの魔女に時間は関係ない……既に、魔女の掌の上でしょう……」
「オイラの情報網によれば、ミルフィとプリンはバルデンで学生をしているらしい」
「それなら、尚更……」
「いいえ」
ターコイズは、姉さんの言葉を遮った。
「彼女たちはもう、運命の糸から逃れられません」
ーー運命の糸。 その言い方に、私は背筋が冷えた。
「……どういう意味よ」
姉さんがターコイズに顔を近づけた。 しかし、ターコイズは微動だにしない。
「伝承には、こうもあります」
「伝承? まだ、そんなこと言っているの?」
「ええ」
ターコイズは、少し声を落とした。
「最下位層の門を開くのは勇者ですが……鍵は聖女なのです」
「鍵?」
ーー勇者と聖女。 そんな単語が出てくるなんて、物語の世界みたいだ。
「魔女ミス・ファナイの目的は、このダンジョンの最奥。 なんでも願いを叶えるという『黄金の像』の為です……」
「黄金の像、ですって?」
「ええ」
ターコイズは、動じなかった。 冗談じゃないらしい。
ーーもしかして。 ナナシが口にしていたのは、それのことだったの?
「私が言わなくても、いずれ真実は現れます……運命はただ一つ」
「……ターコイズ。 その話は初耳なんだけど?」
エメラルド、深く息を吸った。 ジッと、アメジストを睨んでいる。
「ああづ? まだ、そんな寝言ほざいてんぅ」
「ハア。 君の伝達役としての才能はゼロだね」
まあ。 こんなの嘘だと思うよ、私だって。
「……こんな伝承があります」
ターコイズはそう言うと、何かを語り出した。
ーー東に甦るは、勇の旗。
ーー西に祀るは、聖の印。
ーー南に実るは、願の樹。
ーー北に眠るは、夢の像。
それらが、勇者の元に集いし時。 神は、汝らに最後の試練を授ける。




