第65話 一難去って、また一難。
『ギ、キュルルルル』
「わわ。 まだ生きているんだけど! こんなの聞いてないの、男ども助けて〜」
喉仏を貫かれた腐食竜が、最後の抵抗と言わんばかりに暴れたでござる。
ーー右へ左へ。 寧ろ、さらにタチが悪いでござる。
その上でミアが一人で喚いているでござる。
「散れ!」
「言われるまでもないわい!」
拙者は屋根へ。 マルクは横へ。 ルミスは、ヨタヨタと移動していた。
ーー動作がムカつくでござるな。
「わっ! わっ!」
拙者は跳んで、ルミスの襟を掴んだ。 瓦礫が、一瞬前まで王がおった場所を潰す。
「助かった。 まさか、君に助けられるなんてね」
「……お主を殺すのは、拙者でござる故……」
「まだ諦めてなかったのかい?」
「当然でござる。 このままでは国に、戻れん!」
「まるで、逃げるのは簡単……みたいな言い方だね?」
ーーフン。 当然でござる。
「お前ら! じゃれ合うな!」
マルクが、竜の後脚の腱を斬った。 竜が、ジタバタしておる。
「わ、わわ。 ミアを助けて〜 ムサイ男ども〜」
「「「誰かムサイか」」でござる」
仕方あるまい。 拙者は印を結んだ。
「忍法、水氷結!」
まだ未完の技故に、成功の確率は低いでござるがーー
『ゥ……ゥ……』
「マルク、今でござる!」
「フン」
そして、マルクの一撃で腐食竜の体は、粉々になって倒れた。
舞い上がった粉塵が、ゆっくりと舞っていく。 ーーまるで、呪いのようにこの地へ浸透していった。 この土地は、もう駄目でござるな。
マルクが、腐った剣を投げ捨てた。 老体の癖に頑張ったでござるな。
「ふう。 疲れたヨ」
ルミス王が、その場に座り込んだ。 ーーコイツは、残念でござる。
拙者は、遠くを見た。 崩れた通りの向こうに、猫の耳をした娘が立っておる。
「読者のみんな〜 変な奴は討伐されたの〜 ミアの大勝利なの〜」
「ぐぬ……」
ーー釈然とせぬ。 一言、物申さねば気が済まぬでござるぞ。
そう思うて、一歩を踏み出した、その時ーー拙者の首筋が、粟立った。
「……なにごと」
拙者が叫ぶより早く。 ミアと拙者たちの間に、大量のオーガが出現した。
歩いてきたのでも、走ってきたのでもない。 文字通り、そこに「湧いた」。
空間が歪み、その中から次々と。 一体、二体ではない。 拙者は、数えるのをやめた。
マルクが、剣を探して周囲を見ようとした。 しかしーー
「ギ、ギャァ。 やってしもうたわい……」
やった? マルクは腰を抱えて、蹲ってしまったでござる。
ーーまさかとは思うが、本当にギックリ腰になったでござるか?
「これは……大ピンチだね」
ルミスが、立ち上がった。 拙者はクナイを構えた。 忍術はタネ切れでござる。
拙者たちと、あの娘の間に。 壁のように、巨躯が並んでおる。
「……分断された、ということでござるか」
「そうみたいだね」
「……まずいのう」
マルクが、拳を握った。 片手は、腰を摩っておる。
「儂は動けない。 お主は術を使いすぎた。 コイツは……最初から戦えん」
「事実だけど、傷つくよ?」
拙者は、己の手を見た。 最早、ここまでかーー
「待ちなさい……」
「君たちの狙いは僕たちでしょ?」
ーーそんな拙者たちの後ろから、ミルフィとプリンの声がしたでござる。




