第62話 麓壊滅 ーー影丸与一視点
深夜。 麓のギルドの地下。 上から、完全に遮断された場所。
その地下にある牢屋で、拙者は縄に縛られ、マルクとルミスに拷問を受けていた。
「……誰の依頼で動いた?」
「……」
「……のう、忍びよ。 儂はな、拷問は好かん」
「……」
「じゃが、倅の命がかかっている手間……無視もできん」
ーーこの老人、そう言いながら、この状況を楽しんでおる。
「影丸くん。 ご飯美味しいよ? 食べよう?」
ルミスがそう言いながら。 モグモグとご飯を食べている。
「……結構でござる」
ーーおそらく、薬入りでござろう。
「そう? ……美味しいのになぁ」
そう言って、王は目の前で馳走を食べた。
この男は、拙者の前でただ、目の前で水を飲み、飯を食い、茶を淹れる。 そして、拙者には何も渡さぬ。
兵糧攻めでござるな。 ーー趣味が悪い。 毒を楽しむなんて芸当をするとは。
「実はな、影丸与一」
マルクが、椅子を引き寄せて腰かけた。
「お主の依頼主は、既に儂が処分しておる」
「……」
「だから、倅を殺しても意味がない」
「……」
「お主は、無駄なことをしようとした。 ……忍びとは、そんな者なのか?」
「関係ない。 ……拙者は、暗部より命を受けた。 それだけでござる」
「ふん。 仲介者がいるのか。 あるいは、煽動者というべきか?」
マルクは、拙者の顔を覗き込んだ。 ーーしかし。 そんな中、慌てた様子のギルド職員が入ってきた。
「し、失礼します! マルク様、ルミス王! ……緊急事態です!」
職員の様子が明らかにおかしかった。
「……どうした」
職員がマルクに近づく。 ナイフを持ちながらーー
「麓全体がこんな風になっております!」
そう言うと、男は自らの首をナイフで突き刺した。
ーーまるで、異様な力が働いたように、男の頭部と胴体がちぎれた。
拙者の背が、ぞわりとした。 ここは、厳重に閉ざされた箱の中。
つまり。 外は地獄でござるーー
「ルミス。 お主は残れ」
「……断る」
ルミスは、マルクの提案を拒否した。
「……街が焼かれるのを、椅子に座って待つ王がどこにいるのかな?」
「お主では力不足じゃ」
「貴方もそうでは?」
「なんだと?」
ーーおや。 一触即発でござるな。 マルクは、舌打ちした。 そして、拙者の方を見た。
「おい、忍び」
「……」
「縄を解いてやる」
マルクは、拙者の縄を断ち切った。
「……今から逃げれば、生き延びるかも知れぬ。 家庭があるのだろう?」
しばらく動けなんだ。 今更、温情でござるか?
拙者たちは立ち上がり、外に向かった。
ーー外は、地獄絵図でござった。 死体と血の匂いで充満しておる。
その真ん中に、毒々しい竜が拙者たちを待ち構えていた。
ーーこれが、噂の怪異でござるか。 しかしなぜ、突然麓に現れたのでござるか?




