第61話 新興魔王の目的
食事は、広間の真ん中に並べられたテーブルの上に用意されていた。
美味しそうな煮込み。 焼かれたパン。 なにかの肉。
ーーこれ。 私たちがいつも食べていた、ご飯より豪華だよね。
「遠慮せず食えぅ」
アメジストが、お玉で鍋を掻き回している。 本当にこの人が作ったんだ。
「これが噂のアメジスト様のお料理!」
姉さんが、我先にと器を差し出している。 憧れの人が作った料理だものね。
ーーだけど、様呼びは、やめてほしいかな。
「わあ、美味しい! 本当に美味しい」
「当たり前だぃ。 子供頃から磨いて来たんだからず」
たしか、ギルドで公表されてた紙面に、そんなことが書いてあったって、姉さんが言ってたのを思い出す。
「最初は、シェフの枠で君を雇ったんだけどね……」
エメラルドが、まるで頭が痛そうにそう言った。
どうやら、この二人の間にも、いろいろあったみたいだった。
メインの食卓についたのは、私、姉さん、エメラルド、アメジスト。 ターコイズと、オニギスと言う人だった。
ーーこの人も、エメラルドと一緒で性別がわからないな。
でも、オニギスまで女性だったら、ハーレムパーティだよ!
「オイラの顔と体を見てどうしたんだい?」
「……いえ、別に」
「まさかとは思うけど、君もナナシと同じでオイラの性別を気にしているんだ?」
オニギスが、パンを齧りながら言った。
「……はい」
「秘密」
オニギスは、それだけ言って会話が終わった。
「まず、状況を整理しよう」
食後。 器を片づけたのち、エメラルドは指を立ててそう言った。
「一つ。 このダンジョンは、人間の負の感情を養分にしている」
そして、次の指を出した。
「二つ。 このダンジョンには管理者がいて、ソイツは時空・空間使いだ」
ターコイズが、初めて反応した。
「ミス・ファナイ、ですか」
「知っているのかい?」
「名前だけは。 彼女がこのダンジョンの管理者ですか?」
「ええ。 本人がそう言ってたわ!」
ターコイズの発言に姉さんが答えた。 エメラルドは、指を三本に増やした。
「最下層に、何かがある。 『願いが叶う』と呼ばれるものが」
「そんなの本当にあるの?」
「だゔ。 出鱈目だぇ」
エメラルドの発言に、姉さんとアメジストがくいついた。
「オイラが調べた。 ナナシを洗脳してな……」
オニギスが、足をぶらつかせながら言った。 洗脳ってーー
「四つ」
エメラルドの指が、四本になった。
「ナナシは、そこへ行こうとしている。 何かを願うために」
そして、エメラルドが手をパーにした。
「五つ。 深淵は、パフェ魔王の第一姫であるバニラを呼んでいる……」
ーーそうだった。 ナナシが強引にバニラを連れて行こうとした理由だったね。
「……だが。 これに対して、僕はオニギスと情報を交換した後。 とある仮説を立てた」
「……仮説ですか?」
エメラルドは、私たちを見回してこう言った。
「新興魔王は、聖女であるバニラ、ミルフィ、プリンの三姉妹を殺そうとしている」




