第59話 ナナシとの再会
第十六層から第十九層までの道中は、すごかった。
この階層に出てくる魔物は、ビックアイアントにツノモグラ、毒蜘蛛やオオトカゲだったんだけど、全部死体だった。
ーー大量の魔石が落ちている。 姉さんと私は頑張って拾った。
どうやら、アメジストが倒したまま放置したらしい。 もったいないな。
「……がっはは。 そうかいだぜぃ」
「……君、相変わらず節度を知らないんだね。 後でバテるよ?」
「はぁざ? 加細いエメラルドちゃんと、一緒にすんなぜぃ」
「僕は、ちゃんと言ったからね?」
エメラルドの忠告を、聞き流すアメジスト。 二人って相性悪い?
「オパール! これだけあれば、いい服がたくさん買えるわよ!」
「……うん」
ーー私たち、お金持ち確定だよね!
「けぇ。 服なんざ、マントがあれぃ、十分でぅ」
「それは、君だけだよ……」
アメジストの発言にエメラルドが呆れていた。 ナナシと言い、男ってみんなこうなのかな?
そして、第二十層。 降り立った瞬間、変な匂いが鼻についた。
人の気配がある。 久しぶりに嗅ぐ、生活の匂い。 テントが並び、何かをしている。
「……なにあれ」
白衣の集団が、広間の中央で整列していた。 全員が目を布で覆い、揃って同じ方向を向き、低い声で何かを唱えている。
「エターナルパーフェクト教団だね」
「なにをしているのかしら?」
「祈りだとぇ」
アメジストが、なんでもないように呟いた。
「あんな連中ほっといてよぇ。 ナナシの顔見んぞう」
「うん」
「ナナシは?」
「牢だんゔ……こっちだぃ」
◇◇◇
牢は、テント群の奥にあった。
岩壁をくり抜いた、簡素な牢。 鉄格子の向こうに人影が座っていた。
「……ナナシ」
私が呼ぶと、その影がゆっくりと顔を上げた。
憎しみのこもった目、ギラギラしている。
「……ハ」
ナナシは、笑った。 心底、どうでもよさそうにーー
「なんだよ。 ……追いついてきたのか、お前ら」
「この、馬鹿ぁっ!」
姉さんが、鉄格子に飛びついた。
「馬鹿! 大馬鹿! なんでこんな所まで! バニラさんを攫って! 人を斬って! 指名手配までされて!」
「うるせえな」
「うるさくない! 私たちがどれだけ!」
姉さんの声が、詰まった。 ナナシが、私たちのことに興味がないってわかったから。
私は、ため息をついた。 一言だけ伝えよう。
「……無事で、よかった」
「はぁ?」
ナナシは、少しだけ目を見開いた。
それから、ふいと顔を背けた。
「……別に。 お前らに心配してもらう筋合いはねぇよ」
ーー俺は、お前たちを裏切ったんだからな。
ナナシは顔を背けて、そう言った。
「相変わらずだね、君は」
エメラルドもナナシに声をかける。
「……」
「やあ。 久しぶり」
「……」
「君を捕まえに来たよって言いたいけど……今は僕たち、それどころじゃないんだ」
「……あ?」
「ナナシ。 僕たち三人は囚われているんだ。 とある老婆にね」
「ほう……ミス・ファナイの仕業か」
ナナシは、私たちの発言を聞いて納得したように呟いたーー




