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死に戻りクズ勇者は勝手に生きたい〜こんな奴に勇者は任せておけない!  作者: Masa(文章力あげたい)
黄金の鉱山編

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第49話 人の歩みを嘲笑う魔女

 「馬鹿な。 最悪なのです……」


 ミートは、崩落面に手をついたまま固まっていた。 口調も、いつもの老婆口調をやめているわね。


「この術式を扱える者など、ミス・ファナイ様しかおらん……」

「その、ミス・ファナイってあの伝説の魔術士のことよね?」


 アゼッタが、ミートに尋ねたわ。 ああ。 私、知らないわよ。


 ミートは、猛烈な勢いで振り返った。 アゼッタの両肩を鷲掴みにして揺さぶった。


「そうじゃ!? 伝説の魔術学者にして、時を司る魔女! 唯一無二の魔術士です」

「……ええと」

「儂が魔術の道に入ったのも、あの御方の論文を読んだからです!」


 ミートは、ファナイのファンなのよね。 しかも、かなり重症の。


「ミート学園長、私のアイデンティティを取るなです!」

「お姉ちゃん、問題はそこじゃないよ……」


 可哀想なミリィ。 口調が、丸かぶりなのよね。


「聞け! あの御方の凄さを説明してやるです!」

「聞きたくないわ。 もう、知ってるから……」

「時空間魔法とはのう、ただ物を動かすのではないのじゃ! 時間軸ごと座標を書き換えるという……」

「聞きたくないって言ってるでしょ」

「つまり、移動と時間の変化を両方できる訳です!」


ーー私は、足を止めた。


「……今、なんて?」

「おや? キャスも、聞くです?」

「そうじゃなくて。 その後」


 ミートが、きょとんとした顔をした。


「……移動と時間の変化?」

「ええ、それよ」


 ーーぞくり、とした。


「じゃあ、この階層で消えた人たちって」

「……」


 ミートの顔から、表情が抜けた。 顔が青ざめているわよ、ミート。


「……どこかの、しかも時間すらも違う場所に移動させられたってこと?」

「……そうなるです」


 ミートが、小さく呟くように答えた。


「……それ、戻せるの?」


 私が聞くと、ミートはしばらく黙った。


「唯一の方法は術者が『戻す』と決めればです 逆に言えば、術者以外にはどうすることもできないです……」


ーー最悪ね。 私も体験したからわかるけど。


「術者が消えれば、書き換えは永久に確定するです」


 本当厄介よね、時を司る魔女は。


「ミート」

「なんです?」

「貴方、その人に会いたい?」


 ミートは、崩落面を見上げた。


「……この前……武術大会までは憧れの人物でした……」


 小さな声だった。 ミートの体が震えているわ。


「儂は、あの御方の論文で人生が決まった。 ……だからいつか会って、礼を言いたかったのです」


 そして、自分の頬を叩いた。


「じゃが、今は違うのです」

「……」

「もし本当にあの御方がこれをやっておるのなら、私は戦うです!」


 まっすぐに前を向いて。 崩落面を見てそう言った。


「そして。 なぜ、こんなことをするのかと。 それだけは聞く権利があると思うのです。 そして、ひっぱたいてやるです!」


 ミートはそう言って笑った。 でも、目は笑ってなかったわ。


◇◇◇ ルーブ視点


「……ふうん。 まったく。 困った弟子だこと」

「……」


 ずっと俺の横で黙っていたこの女が、初めて自分から口を開いた。


 リディは、フードの下で少し笑ったみたいだった。


「随分と、好き放題やってるみたいね?」

「……」


ーーフレイアと、いつも話している会話の中にいた、優秀な弟子の一人か。


「……フレイア。 貴方も気づいたんでしょ?」


 リディは、それきり何も言わずに歩き出した。


 しかし。 その声は、ほんの少しだけ辛そうだった。


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