第47話 バルデンチームのダンジョン探索
第三層って所に来たわね。 降りた瞬間、空気が変わったのが分かるわよ。
スコップやピッケルなどの開拓用具が、あちこちに放り投げられているわ。
「ここは初心者冒険者の稼ぎ場だったそうじゃ……」
ミートが松明を掲げた。 たしかに、二層の開拓前って言った方がピンとくる雰囲気よね!
そして、私たちは、第三層の奥ーーつまり、第四層の入り口までやって来たんだけど。
「あれ、なんです?」
「お姉ちゃん。 牢屋みたいだね」
ミリィとラムがその場所の様子を確認してるわ。 そんな二人にミートが近づいてこう言ったわ。
「ここが特殊牢獄じゃ。 ……ギルドの役員から聞いておる。 極悪な犯罪集団が脱獄できない様に、収監されておった」
「おった、って?」
私が聞き返すと、ミートは首を振った。
「混乱に乗じて逃げたそうじゃ。 じゃが……」
ミートは、それ以上言わなかった。
ーーたしかに、この状況を考えるとね?
第四層へ降りる階段の前。 大きな関所の前で、バニラが立ち止まった。
「……ここは覚えています」
小さな声だったわ。
「ナナシが暴れて、門番の人たちが……」
「バニラ」
「私、あの時。 ……ナナシを、治しませんでしたニャ」
バニラは、両手を握りしめた。
「治せば、あの人はもっと下へ行ってしまうから。 ……ここで倒れてくれた方が、傷が浅いと思ったんですニャ」
「……それで?」
「その後。 結局、治しましたニャ」
ーーああ。 優しいわね、バニラは。
「怪我が酷すぎて。 死んでしまいそうで。 ……その時、ナナシが言ったんです」
「……それが、さっきの話ね……」
「はい。 俺と協力して、最下層へ行こうって。 ……今、思えば騙されたのかも知れませんね……」
ーーこの子は本当に、真面目すぎて損する子だわ。
「バニラ。 優しい子ね……」
「ニャ……キャス」
私は、バニラに優しく話しかける。
「ねぇ? この枷、とってくれないかしら?」
「駄目だって、ミリィとラムが言ってたニャー」
「……私は、真剣なのよ。 このままじゃ本気を出せないわね」
バニラが、ぽかんと私を見上げた。 それから、ふにゃりと笑った。
「……駄目ですニャン」
「……」
この子は、ナナシに裏切られて変わったらしいわ。
◇◇◇ アゼッタ視点
私は、門番の詰所だった場所を捜索していた。
「おかしい……」
ここには、たくさんの人がいたはず。 その証拠に、古い部分の上から新しい部分が継ぎ足されている。 ーー生活があった証拠だ。
「おかしい……」
「……フレイアが全部持って行ったのかもね? アゼッタ」
「……っ。 リディ……」
私の後ろで呟くように、リディがそう言った。
「でも、アレね。 馬鹿よね彼女。 おそらく、ここのアイテムを全部持って行ったとしたら、他の層のアイテムは置き去りね……」
「だったら、交換するのでは?」
「……それができないのよ、彼女は……」
ーーつまり、リディの話によると、フレイアはここのアイテムを担ぎながら、下へ潜っているってこと?
「……馬鹿じゃないの?」
「それがフレイアよ。 まあ、背中に大荷物を背負うぐらいの芸当なら、全然苦じゃないと思うけど……」
ーーそう言いながら、リディは謎の小袋を手に持って微笑んでいた。
「これはマジックバッグよ? ……今、あの子が喉から手が出る程欲しい物ね」
「悪趣味……」
「あら? 貴方も気づいているでしょ? あの子の愉快さを」
ーーリディはそう言うと、別の場所に行ってしまった。
私は想像する。 背中や、手元に荷物を持ちながらダンジョンを歩く彼女を。
『これは業物ね。 でも、パス(手が塞がって持てないわ)』
「ブッ」
「……どうしたの、アゼッタちゃん?」
「ラム! ……な、なんでもない、なんでもないわよ!」
「そうなんだ? そろそろ行くってミートが言ってるよ」
「ふん! やっと次なのね! 待ちくたびれたわ!」
「はいはい……」
私がそう言うと、ニヤニヤしながらどっかに行ってしまった。
ーー高飛車キャラは疲れるわね、本当に。




