第42話 弟子との思い出ーーフレイア視点
「……ふむ。 こんなことになってたのね」
第十一層での過去の読み取りが終了した。
ルビーとオパールというルーブの旧友たちの奮闘。 極悪集団の謎の消失。
ミス・ファナイに足止めをうけ、やむなくさらに奥へ進む様子ーー
それにしても、ミス・ファナイね。 あの子、まだ生きていたのね。
ーー彼女は、私とリディの共同の弟子だった。
まだ「ミス・ファナイ」なんて大層な名前じゃなかった頃。 ただの、ファナイという少女だった頃。
彼女は、ただの勉強熱心な弟子だった。 私と、リディにとってはね。
私は彼女に魔術や魔術道具を教えた。 そしてリディは学術を教えていた。
「フレイア師匠! どうやって、水晶に魔力を付与しているんですか?」
「ふふ。 知りたい?」
「知りたいです!」
ーーあの子は、いつも楽しそうに私の教えを学んでいた。 リディに至っては、三日三晩付き合わされていたわね。
「あの子、すごいわ。 スポンジみたいにどんどん覚えてくれるの」
「本当にね。 ……まあ、それがいいとは言わないけれど……」
「なんで?」
「ハア。 フレイアには、分からないかしら」
彼女はとても純粋で、いい弟子なんだけれど?
「純粋すぎるのよ。 危険なぐらいにね……」
「へえ?」
リディの言っていることが、あまり理解できてなかった。 でも、今なら分かる。
あの子は世界の不条理に耐えられない子だったのね。
ある日、置き手紙を置いて消息を絶った。 机の上に、たった一行だけ。
『世界の真理に気づきました。 さようなら』
当時の私としては、正直あまり気にならなかった。 私がエルフだからだけど、長い人生でこんな体験は数えきれないほどあったから。
もちろん探さなかったわけじゃない。 でも、本気で探す気はなかった。
私たちと彼女は、人生の長さが違う。 いずれにせよ、こうなることが分かっていた。
人間の弟子を取るというのは、そういうことだ。 置いていくか、置いていかれるか。 どちらかしかない。
ーーいつしか彼女の存在は過去の思い出になっていた。
「……久しぶりに顔を見たと思ったんだけど」
私は立ち上がって、埃を払った。
「時を司る魔女ね。 立派になって……」
私は考えこむ。 たしかあの子は言ってたわ、このダンジョンの管理人だって。
ーーこの、黄金の山脈の管理人だって! 出世したのかしら? だったら、教えた私のお陰よね?
つまり、私がすることは一つだけ。 彼女のご機嫌取りよ! あの子に擦り寄って、お金を恵んでもらいましょう!
「そうと決まったら、さらに奥へレッツゴー!」
ーー私はスキップをしながら、ダンジョンの奥へ入って行った。




