第41話 生きるための前進
「パズル、ですって?」
姉さんが震えながらそう言った。 私も、思わず一歩前に出ていた。
「あんたの言うパズルのために、何人死んだと思ってるの!」
「ふん。 どうでもいいことじゃの〜」
老婆は、あっさりと言った。
「冒険者どもがどうなろうと関係ないわい」
ーー何を言っているの、この人。
「……死んだ人間は戻ってこないのに?」
「フォフォ。 だから、パズルなのじゃ。 所詮お前たちは、儂の娯楽道具……暇つぶしなんじゃよ? ……じゃから」
老婆は、蜃気楼のように姿をくらましたーー
「……本当、趣味悪いね」
「フォフォ。 いや、ちょっと隙があったのでのう……」
「……!」
私の後ろにいつの間にか、老婆の姿が現れた。 それに、エメラルドが反応して話しかけていたんだ。 私はまったく気づかなかった。
「待ちなさいよ! オパール、逃げて!」
「フォフォフォ。 素晴らしい姉妹愛かの? さすが、どの世界線でも一緒に死んだだけあるわい」
「なにを、訳の分からないことを……」
私はその言葉を聞いて、体が震えた。 怖いーー
「白髪の娘。 ……お前は、可哀想じゃの〜」
「……なに」
「大した能力がないのに、騒動に巻き込まれて……」
「……」
「フォフォフォ。 地上に戻るなよ? それを破れば……」
ーー命はない。 そう言い残して、老婆は消えた。
通路には、崩れた瓦礫と、私たち三人だけが残された。
姉さんが最初に口を開いた。
「……エメラルド。 あの婆さん、本物なの? 伝説の魔術学者って」
「おそらく、本物だろうね」
私は、掌を握りしめた。 エメラルドに稽古をつけてもらって、自惚れていた。
勝てるわけがなかったんだ。 最初から、私にはーー
「ねえ、エメラルド」
「うん」
「私たち、本当に下へ行くの?」
姉さんの問いにエメラルドは、少しの間だけ黙った。
「情けない話だけどね」
「……情けなくなんかないわよ」
姉さんが、剣の柄を握り直した。
「行くわよ! 第二十層!」
ーーそうだ。 私はまた、生き延びたんだ。
「……行こう」
私は言った。 自分の声が、思ったよりしっかりしていて驚いた。
「ナナシのところへ。 そして、絶対に地上へ生きて帰ろうよ」
私たちは死のダンジョンの奥へ踏み込んで行った。




