第39話 謎の情報屋 オニギス
俺はオニギスによって、別のテントに移動させられた。
途中で隙を見て逃走しようと考えたが、やめておいた。 別に、コイツが怖い訳じゃない。 ただの気まぐれだ。 そうなんだ!
テントの中は奇妙だった。 変なガラクタがところ狭しと置いてあった。
「まあ適当に座ってよ。 飲み物はなにがいいんだい?」
「……」
俺は立ったままだ。 何故、コイツに従わないといけないんだ。
「君、痩せ我慢は良くないよ? ボロボロで傷だらけのくせに?」
「用件を言え」
「つれないんだね……」
そう言うと、コイツはガラクタを起動させて、コップに謎の液体を注いだ。
「オイラの名前はオニギス。 しがない情報屋さ!」
「……なんの用だ。 俺は先を急いでいるんだが?」
「君は、オイラに跪いて感謝すべきなんだよ? だって君をここまで運んだの、オイラなんだ」
ーーなんだと。 この華奢な男が、だと?
「実は見てたんだ〜 君とエメラルドが言い争いをしているの!」
オニギスはずずっと、俺の顔の至近距離にいた。
俺は慌てて後ろへ下がり、剣を構える。 いつの間にこんなに近くにいたんだ?
まったく見えなかったーー
「君、オマセさんだね?」
「……なぜ、俺を運んだ」
「うん?」
俺は、こいつを睨みつけた。 コイツの隙を見極めようとする。
「助けられた覚えはない。 助けを求めた覚えもない。 俺は借りを作られるのが、一番気に食わねえ」
「だからって、そんなボロで鈍の剣で? ソッチの剣は使わないの? 舐めぷかな」
「……!? 貴様!」
オニギスはいつの間にか、俺の剣を触っていた。 全くわからなかった。
「馬鹿な……そんなはず。 きっと……」
「きっと、俺が今ボロボロになっているからだ。 俺のスピードさえあれば、こんな奴なんて敵じゃない……とか? 合ってる?」
ーーは? コイツ。 どこまで、俺をコケにするつもりだ?
「本当……舐めるなよ、雑魚が」
背筋が、ざわりとした。 バカな、この俺が恐怖を覚えるなんて。
「この体はさ、便利だから利用しているだけだよ?」
「まるで、変幻自在だと言いたいみたいだな?」
「言うわけないでしょ。 オイラは情報屋だよ?」
オニギスは、けらけらと笑った。
「……お前」
「ねぇ? 早く、跪いて足舐めてよ?」
そう言うと、いつの間にか俺の眼前にはオニギスの素足があった。
「ほら、ペロペロって? 酸っぱくて美味しいかもよ?」
「……ふざけるな!」
俺は、オニギスの素足に向けて斬りつけた。 わざわざ、隙を見せるなんて愚かだったな。
しかし、コイツは俺の剣を足指で白羽取りしやがった。
「ふん。 その強情さだけは一丁前だね? ……ナナシ。 いや」
ーー勇者。
コイツはたしかに、俺に向けてそう言った。




