第36話 既に決着が決まっている戦い ーーオパール視点
「フォフォフォ。 まずは自己紹介といこうかの」
老婆は、崩れた瓦礫の上に腰かけていた。 いつからそこにいたのか、ずっと前からいたのか、まるでわからない。
「ワシはミス・ファナイ。 このダンジョンの……そうさな、管理人助手といったところじゃ」
「管理人助手?」
「フォフォ。 畑には世話をする者が要るじゃろう?」
ーー畑。 エメラルドが言っていた言葉と同じ。 この人は、それを隠しもしない。
「死を司る四天王様は直々には動けない。 じゃから、儂が動くのじゃ」
「ふん? それは、どういう理由で?」
「緑頭の小娘……ソナタが一番わかっておるじゃろ?」
「「!?」」
ーー緑頭の小娘? やっぱり、エメラルドは女性だった。
そんなエメラルドは、老婆に対して答えを告げた。
「死を司る四天王……その正体は……」
エメラルドはその正体を答えた。 その答えに満足したのか、その老婆は破顔してこう言った。
「正確じゃ! やっぱり気づいておったか! 儂が出張ったのも正解だった訳じゃのう。 間違っていたら、損してたところじゃぞ?」
老婆は杖で地面を叩いた。 ただそれだけの動作で、通路の空気が重くなる。
「お前たちがここを抜けて、地上へ戻る可能性はゼロじゃ」
「……無理にでも、帰らせてもらうよ」
「フォフォ。 大人しく、した方が身のためだぞ? フォフォ」
その笑い方が、一番気持ち悪かった。
「エクスプロージョン! ……! 魔法が打てない!」
会話に付き合う理由なんてない。 そう思って、私は魔法を放とうとしたが、魔法が発動することはなかった。
「フォフォフォ。 いい魔力じゃ。 発動できなくて残念だったのう?」
ーー嘘。 老婆は同じ姿勢で座っていた。 絶対に何かをしたはずなのに。
「じゃが、勿体ないのう。 その怒り、絶望に変えた方が旨いのじゃが」
「ッ!」
姉さんが動いた。 剣が老婆の首筋へ吸い込まれる。 そう思った瞬間、姉さんの剣が、空を斬った。
「え……?」
老婆は、姉さんの背後にいた。 動いた気配すらなかったのに。
「惜しいのう。 儂が並の人間だったら喰らっていたわい」
「がっ……!」
老婆の杖が姉さんの腹にめり込んだ。
姉さんは、秘孔を突かれたのか、その場に崩れ倒れた。
「姉さん!」
「体が動かない……」
「ホホホホ」
私は、エメラルドの方を見た。 この状況をどうにかできるのはこの人しかいない。 私は期待の目でエメラルドを見たがーー
エメラルドは武器を捨て、手を天井に上げていた。
「……降参だ」
「フォフォ。 勘がいいのう。 じゃから嫌いじゃないのじゃ」
「……エメラルド。 私のせいで、ごめんなさい……」
ーー姉さんの悲痛な叫びが、ダンジョンにこだました。




