第34話 いでよ、金銀財宝たちよ!
ーー何をやっているんだ、フレイアは?
俺は酒場の中で酒を飲みながら、そんな当たり前のことを考えていた。
麓の酒場は満員だった。 ダンジョン封鎖の報せが回って、冒険者どもは荷物をまとめるか、飲んで管を巻くかのどちらかだ。 俺たちは、後者に紛れている。
俺の向かいにはヨニーと、どこかに隠れていたリディがいた。
「で? あの守銭奴は一人でダンジョンに潜ったって?」
リディが、串焼きを咥えたまま呆れた顔をする。
ヨニーがそれを首肯した。
「……そのようですね」
「相変わらずだね? あの馬鹿は……」
俺は杯を呷った。
「困りますね……どうしてくれましょう?」
ヨニーが静かに口を開いた。 可哀想に、お前の上司が考え込んでいるぞ?
「……罰を考えないといけませんね。 減給ですね……」
すると、リディが噴き出した。
「それは傑作よね、彼女にはそれが一番効率的よ」
俺もそう思った。
「アゼッタとかいう学園の娘に、ずっと張り付かれていた……」
「へぇ? なにかしたの?」
リディの串焼きを持つ手が、止まった。
「バルデン王国の家宝の魔水晶を、アイツが破壊したんだ」
俺は杯を置いた。 すると、リディが懐かしむようにこう言った。
「ああ、それってフレイアの作った魔力検査装置でしょ?」
「は?」
◇◇◇
私は第四層? の入り口に来ていた。
そこにはまるでさっきまで人がいたと錯覚するほどの生活感があった。
テーブルの上には食べかけのパン。 湯気こそ立っていないけれど、まだ乾ききってもいない。 ーーしょうがないからいただくわね!
脱ぎ捨てられた外套、火の消えていないランタン。 ーー私が大事に使わせてもらいます!
人だけが、いない。 そして、お金もないーー
「……嘘でしょう?」
思わず声が出た。
これだけの人数が消えたなら、財布の一つや二つ落ちていてもいいはずでしょう?
装備は残ってる。 食料も残ってる。 日誌だって残ってる。
なのに、お金が一枚もない。 私は絶望した。
「……お金も食べるのかしら? さすがは、黄金の鉱山ね!」
私は懐から欠片たちを取り出す。 魔石たちは輝いている。
「……出てきなさい魔物たち! 魔石に変えてあげるわよ!」
私は、誰もいない広間に向かって声をかけた。
返事はない。 魔物すらも、いないの? 聞いてた話と違うじゃない!




