第31話 揺らぐサキュバスのアイデンティティ ーーキャス視点
「さて。 説明してもらうニャ!」
「そうだ、ニャ!」
私に詰め寄って来る、白猫とピンク猫。
ーーこれから私、どうなるのかしら?
場所は、山の麓の宿屋の一室。 目の前には猫耳が三対。 プリン、ミルフィ、そしてバニラという、白い猫耳だわ。
左右をミルフィとバニラに固められ、正面のプリンだけが、なんだか嬉しそうに尻尾を振っている。 この子だけが唯一の味方ね。
「ええと……何から話せばいいかしら?」
「全部ですニャ」
「全部ニャン」
二人分の圧。 私の今の服装は紐下着だけーー 一体どうなるの?
「まず、ナナシとどんな関係なのですニャ!」
バニラが、すう、と目を細める。 聖女の笑顔のままなのが余計に怖いのだけど。
「ナナシ? それって誰かしら?」
「ニャ! ナナシはゆう君のことニャ!」
ミルフィが私の疑問に答えをくれた。 ああ、そう言えばそうだったかしら?
学園で、私やミリィとラムがゆう君の話をしてたら、ナナシとか言う生徒が居たって話になったんだっけ?
ーーでも、ねぇ? ゆう君って小さい子供よ? まあ、人間って成長が早いし、数日会わなかったら、大人になるのかしら?
「ゆう君は、私の敵よ! 私がこうやって……」
「キャ、キャス! そんな格好でそんなポーズ、恥ずかしいニャ!」
プリンが顔を真っ赤にして、悶えている。 ダンジョンのメンバー決めの時はこの子がいなかったのよね!
「……それなのに、あの頓珍漢は」
私は、バッグから服を取り出した。 そして、それを着用していくーー
シャツにジーンズにケープ。 そして、手袋ーー
「アイツってば、この格好がいいって言うのよ!」
まったく、サキュバスの気持ちがわかってない奴なんだから。
「ふう。 ようやく、服を着てくれたニャー」
「安心ニャ!」
「なるほど……ナナシの指示通りの衣装ニャ!」
三匹が、ニャニャほっこりした様子を見せた。
「ふん! 用事はそれだけ?」
「あ、忘れてたニャ! キャス! プリンのご主人様になったって本当ニャ?」
「そうだったニャ! 忘れてたニャ!」
また、私に二人の猫が近づいてきた。 私はおもむろに、シャツとジーンズをーー
「「「させません」」」
三人は、私のサキュバスのアイデンティティをなんだと思っているわけ!
ーーその時、部屋のドアが開いた。 ミアだった。 黒猫ねーー
「ちょっと! うるさいんだけど?」
ミアが欠伸をしながらやってきた。
「キャス? 服を着たのね? 最初から、大人しく着ときなさいよ……」
そう言うだけ言って、ミアは隣の部屋に戻って行った。
そうかと思えば、今度はミリィとラムが入って来た。
「キャス? なにやっているです?」
「お姉ちゃん、多分取り込み中だよ」
ーーみんな。 私の格好とかどうでもいいんだわ。




