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死に戻りクズ勇者は勝手に生きたい〜こんな奴に勇者は任せておけない!  作者: Masa(文章力あげたい)
黄金の鉱山編

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第30話 ついに本性を現すダンジョン

 

「お前ら行くぞ!」


 ダンジョンの入り口の前で、壮年の偽前国王が叫んでいる。


 まったくこの偽者は。 バルデン王国の面汚しだ。 仮にも一国の前国王を名乗るなら、もう少し落ち着きというものを持ってほしい。


ーーまあ、本物のマルクもそんな性格だったけど。


「アゼッタ! 遅いぞ! 遅れるな!」

「ふん! 待ちなさい! 私が先に行くに決まってるでしょ!」


 向かうメンバーは先日決めたパーティのままだ。 マルク、ルミス様、影丸与一、そしてフレイア。


 ミート学園長は麓に残った。 他のメンバーと話し合いをするらしい。


ーーそれにしても、人がいない。 不自然な程に。


 ギルドの役員が、ナナシやマルクの大暴れのせいで、ダンジョンに近づかなくなったと聞いたが、それにしてもーー


「拙者、嫌な予感がするでござる」


 珍しく、影丸と意見が一致した。


 第一層の中に入ると、先日と同じくごった返しているかと思いきやーー


 その中は、異様な程がらんとしていた。


「……え?」


 思わず声が漏れた。


 あれだけ人でごった返していた通路に、誰もいない。 放置された荷車。 消えた篝火。 踏み荒らされた跡だけが残る、無人の広間。


 私たちの足音だけが、やけに大きく反響していた。


「ハッハハ! コイツは都合がいいわい! 邪魔な障害物を処分しなくて済むからな! ……そうだろお前ら?」


 マルクはまるで、私たちになにかを問いかけるように言った。


 ーーお前たちの演技はその程度か? お前たちの本当の身分はなんだ、と。


 この人は一体なんなの? そう言えば、私はこの偽者についてなにも知らない。 


 このおいぼれは、どんな人生を歩んできたのだろうか?


 入り口には、ギルドの立て札があった。 どうやら、続く不審な出来事についにギルドが本腰を上げて、ダンジョンの出入りを止めたらしい。


 立ち入り禁止。 救助活動を除く一切の入坑を認めず。 そう書かれた札の下を、私たちは堂々と通ってきたわけだけれど。


「……おかしな話ね。 普通、そんなの聞くかしら?」

「変だナ」


 私は誰にともなく呟いた。 ルミス様も気にして下さっている。


 だって、冒険者よ? 金と名声のために命を賭ける人種よ? 混乱の最中なら、むしろ落ちている装備を漁りに来る連中がいてもおかしくない。 ギルドの札一枚で、ここまで綺麗に人が消えるものかしら?


「アゼッタは、疑い深いネ さすがだヨ」

「ふん。 これは疑い深いのではなく、当然の疑問よ!」

「じゃあ、僕も当然の疑問を言うヨ」


 ルミス様は、無人の通路を見渡した。


「みんな、どこへ行ったのかナ?」


 ーーぞわり、と背中が粟立った。


 そうだ。 立ち入りを禁じたなら、中にいた人たちは外へ出たはず。 なら、麓の街はもっと混雑していないとおかしい。 怪我人で溢れ、宿は満杯で、ギルドは対応に追われていないとーー


 私が見た麓は、たしかに混乱はしていた。 住んでいたけど、逃げて来たって言ってる人たちは大勢いた。


ーーでも、全員が逃げ出した。 とは、考えられない。


 それは第二層も同じだった。


 元々居住していたスペースが、不自然なほどの廃墟になっている。


 まるで、消えたように、生活が途中で止まっている。


「……逃げたにしては、荷物が多すぎるでござるな」


 影丸与一が、転がった水瓶を爪先でつついた。


「拙者なら、まず食料と金を持つでござる。 ……しかし、ここには両方残っておる」

「盗賊が入った様子もないわね。 びびったのかしら?」


 私は、無事なままの露店を覗き込む。 商品も、売上箱も、そのまま。 誰も持ち出していない。 誰も奪っていない。


 人だけが、消えている。


「ふん。 邪魔な雑音が消えて、清々しいわい。 もっと奥に進むか?」


 マルクが鼻を鳴らした。 その目は、私たちを試しているみたいだった。


 ーーこの偽者は置いといて。 さすがに、この様子に違和感を持ち始める私たち。


 私は、ルミス様へ近づき、小声で会話する。


「……ルミス様。 一つ、伺ってもよろしいですか」

「どうしたんだ、アゼッタ?」

「ギルドが仰っていた『怪異』の話。 瘴気を浴びた者が仲間同士で殺し合う、というものでしたね」

「うむ」

「では、伺います」


 私は、無人の居住区を見渡した。


「殺し合ったのなら。 遺体は、どこですか」


 ルミス様は、答えなかった。


 血の跡はある。 壁にも、床にも、乾いた黒い染みが点々と続いている。 それだけの争いがあったのは間違いない。


 なのに人がいない。 生きた人も死んだ人も一人も。


 ここは危険だわ。 ルミス様を早く地上へ戻さないとーー


「地上へ出るべきだわ!」

「ほう? 高飛車小娘の口から出るとはなあ?」

「僕も同意ダ」


 ルミス様も私の意見に同意して下さった。 マルクは他の二人を見た。


 「やむ追えまい……」

 「……」

 「戻るぞ……」


 私たちは、急いでダンジョンを出てこのことをギルドに報告に行くのだった。


ーーだから気づかなかった。 フレイアがいつの間にか姿を消したことに。

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