第16話 私の敗北 ーーキャス視点
「⋯⋯はあ」
私が登場した途端に、ため息をこぼす、ゆう君。 おや? 私の魅力に囚われたのかしら?
「ふふ。 ゆう君、たっぷりいじめてあ、げ、る~」
「なんだかな。 ⋯⋯寒くないのかな?」
「へ?」
コイツ! まあたしかに、肌寒いけどーー それが私の真の姿を見た感想なの?
「なによ! ⋯⋯っふこれが、サキュバスの正装なの! この大胆な下着。 ほぼ裸よ。 ホラ、ドキドキするでしょ?」
「う〜ん。 イマイチかな? それよりも、やっぱり寒そうで心配になるよ」
なによ! 正体を現すように、先導した癖に! やっぱりまだお子ちゃまね! まったく! 私にいつも欲情しているから勘違いしたじゃない~
でも大丈夫。 私は子供相手にも問題ないの。 このガキにサキュバスの実力を見せてあげるわ。
「ウフ。 ゆう君~ ホラ、おいで~ お姉ちゃんとおねんねしましょう? 膝枕してあげるよ? ⋯⋯早く、来いよ!」
私は彼を強制的に寝かせる。 彼の体が私の素肌に当たる。
「む~ん」
「ホラホラ。 ね、気持ちいいでしょう?」
「⋯⋯キャス? 素肌で地面に座っていて、足元痛くないの?」
「⋯⋯⋯」
たしかに、痛いね。 素足だからね。
「キャスが寒そうだし、痛そうだから、全然気持ちが休まらないよ」
「そう。 なら、別の攻撃をしてあげる⋯⋯」
私は、彼を抱きしめて、精気を取ろうとする。 煩悩の塊であるコイツには、これは、有効よね。 しかし。
「あれれ? まったく吸えない。 どうなっているの!」
「それは、そうだろうね。 今はなにも感じてないから⋯⋯」
コイツ! 私に対して、何も感じないだと? いつも、私で鼻の下を伸ばしている癖に! くうう。
私は負けないわよ! ーーこうなれば、手段を選ばないから!
「ゆ~う君。 じゃあ、いつもの私を想像して?」
「うん。 想像した 大好きだよキャス」
「かかったわね。 エナジードレイン」
よし、成功した。 ははは、サキュバスとしては負けたけど、勝てば問題なしだわ。 ーーふう、満足した。 コイツはもう、干物ね。 捨て置きましょう。
「⋯⋯うん? キャス、もう終わり?」
「⋯⋯嘘。 まだ、喋る気力があったのね。 でも、終わり。 さようなら」
私たちサキュバスは、精気を吸った相手を殺すことが出来るのよ。
気持ちも落ち着いたし、寒いから服を着よっと。 コートやフードもお母様がプレゼントしてくれたんだよね!
私は衣服は纏う。 ふう、寒さが落ち着いたわ。 これから私の気ままな一人旅が始まるのよね。 まあ、アイツは変態だけど、殺す程ではなかったよね。 適当に街に放り投げれば、誰かが介抱してくれるでしょ。
しかし、後ろを向くと元気なゆう君がいた。
「⋯⋯なんで、動いているのかな?」
「全然問題ないよ? 手加減してくれたんだよね? 気分は落ち着いた? じゃあ、続きをしようか」
「続き?⋯⋯なにを言っているのかな? ⋯⋯貴方に勝ち目なんてないわよ」
「それはどうかな? 俺全然元気なんだけど」
ゆう君は平然とした態度で、そう言った。 嘘でしょ? 彼の魂は底なしなの?
認めるわ! ーー私は負けたのだ、サキュバスとして。
「負けたわ。 殺して」
「そんな!⋯⋯それよりも結婚しよ!」
「嫌よ。 ⋯⋯もっと私の好感度を稼いでよ」
「じゃあ、一緒に暮らそう。 静かで、誰もいない場所が⋯⋯」
「私、賑やかな場所が好きなんだけど?」
「知ってる。 じゃあバルデン王国だね。 行こう」
「私、貴方の側に居たくないの」
「ええ!」
私が、そういうと悲しそうな顔をする彼。 しまいには、私に抱きついてくる。
「嫌だ。 俺はもう、キャスを失いたくない」
「⋯⋯⋯⋯」
「一緒にいないと嫌だ! うわーん」
ついには、泣き出したゆう君。 私は完敗してしまったようだ。
「ハア、わかった。 それで? 貴方の旅に同伴すればいいの?」
「ちっ。 ⋯⋯うん、それでいいよ」
しまった! コイツ嘘泣きだった!
私は、彼を締め付ける。 彼は私の腰に手を回す。
なんなの? この状況は? 私は戸惑うしかなかった。
「ニャー 勇者とキャスは仲良くなったのニャ。 そして俺様は、キャスとの勝負に負けて毛を毟り取られたのニャ。 ⋯⋯またすぐに生えるとしても、敗因が最低なだけに、武士としては死ぬよりも屈辱だニャン」




