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死に戻りクズ勇者は勝手に生きたい〜こんな奴に勇者は任せておけない!  作者: Masa(文章力あげたい)
黄金の鉱山編

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第28話 ヌイセマカの最後

 第十一層で作戦を起こすことを、俺たちは決めた。 なぜなら、それまでの階層だと、邪魔が多くて長時間嬲れないからなぁ? 


まあ、さすがにその階層の様子まではまったくわからないが問題ないだろう。


 武器は揃えた。 上の層に転がっていた冒険者どもの得物を漁った。 防具も金も全部だ!


 命も取ろうと思ったが、アイツらで楽しんでからでいいだろう。


 とにかく、後はあの化け物が離れる瞬間を待つだけだ。


 ハア? 本当は、あのムカつくエメラルドもやりたいがよ? やっぱ無理。


 だからまずは、エメラルドが抜けるタイミングを見計ろうとしたがーー


「お頭……エメラルドの奴、どっか行きましたぜ!」

「……なんだと?」


 なぜか奴は、どこかへ行った。 作戦かと思ったが、どうやら違うらしい。 奴は単身で下へ潜って行った。


 瓦礫の陰から見ていた俺は、思わず身を乗り出した。 黒衣の背中が、脇道の暗がりへ吸い込まれていく。 振り返りもせず、姉妹に何か一言告げただけで。


「都合が良すぎませんかね?」

「……ふん」


 罠か。 ーーいや、考えすぎだ。 だったらなぜだ? 油断しているのか?


 奴にとって俺たちは、片付いた話だ。 牢の中で腐っていた鼠が、外を歩いているとは思ってもいない。 そういうもんだ。 いつだって自分の勝ちを疑わねえ。


 残ったのは、赤髪と、白髪の二人だけ。


「……行くぞ、残虐の時間だ!」


◇◇◇


「久しぶりだなぁ?」

「……」

「……」


 通路の両端を塞いで、俺たちは姿を見せた。 この階層はアリの巣見てぇだな?


 コイツらの後ろをついて行かなきゃ見失っていたぜ?


 赤髪の女、ルビーの顔から、色が引いた。 瞳が大きく開いて、そこに映ったのは俺の顔だ。 覚えていやがるな、俺を見上げている。


ーーおっと、怖くて声も出ないか?


 ぞくり、と背中が痺れた。 これだ。 これを味わうために、俺は石の床を舐めてきた。


「……なんでここにいるのかしら?」

「なんで? ダンジョンが扉を開けてくれたんだよ」

「俺たちは第三層に囚われていたんだよ!」

「……なるほど。 通りで……」


ーー白髪が納得したように呟いた。


「あの時と同じ目に遭わせてやる。 妹の方も、なぁ? そして、何日も、何度でも同じ目に合わせて、最後には殺してやる……」


 奴らの手が震えている。 恐怖でか? 剣の柄を握ったまま、指先が白くなるほどに震えてやがるなぁ?


 ーーいいねぇ。 最高だ。 こうでなくちゃなぁ?


「……姉さん」

「……」

「もう、あの時じゃないよ」


 妹は、静かに言った。


「……そうよね。 本当は私たちは期待してた。 この瞬間を……」

「アンタ達にあの時のお返しをすることをね……」


 女どもは、笑った。 俺の背筋が、今度は別の意味で冷えた。


ーーまさか、コイツら俺らが後ろについて来たのを気づいてやがったのか?


◇◇◇ オパール視点


 第十一層の中を歩いている時だった。


「……ルビー、オパール。 何かがついて来ているよ。 ……アイツらは、ギルドの役員が言ってたヌイセマカだね。 捕まったって聞いていたはずだけど?」


 エメラルドがそれを口にした瞬間。 私の中で何かが燃え滾った。 そして、それは私だけじゃなくて姉さんもーー


「……へぇ? アイツらが、脱獄したんだ?」

「……そう見たいだね。 理由は知らないけど」

「ふむ。 訳ありのようだね? 応援はいるかい?」

「「不用」」

「はいはい。 じゃ、頑張って……僕は先に行くから」

 

 エメラルドは、先に第十二層へ潜って行った。


 すると、不気味な笑みを浮かべた集団が現れたのだった。


「さあ? その服を今すぐに……」

「エクスプロージョン!」


 私は、自分の感情のままに魔法を暴発させた。


 爆撃が第十一層に炸裂した。 アリの巣状のダンジョンの地形が変わる。


「ちょこざいな! 囲め! 数はこっちが上だ!」


 部下が喚く。 しかし、その体に、姉さんの剣が刺さる。 


 次から次へと、煙幕の中を姉さんは動き回って、倒していく。


「なんで……俺らがこんな目に! アイツらは獲物のはずじゃ……」

「それはね、アンタたちが、私たちの視界に入ったからよ?」


◇◇◇


 あの女の剣が、真横から俺の部下を薙いだ。


「……夢に出てくるのよ。 アンタ達が、私を散々弄ぶ夢を。 でも、それも今日で終わり……」


 崩れる。 あっけなく崩れていく。 あれだけ手間をかけて集めた武器も防具も、意味を成さねえ。 俺たち振るった暴力は、こいつらにとってはもう、乗り越える過去でしかない。


 ーーふざけるな。


「まだだ! まだ終わってねえぞ!」


 俺は最後の一人になって、それでも剣を構えた。 構えるしか、なかった。


 ルビーの剣先が、俺の喉に触れる。 許せねぇ!


「姉さん」

「うん」


 白髪女が、俺の後ろで縄を構えていた。


「……は?」

「殺さないわ」


 ルビーは、剣を下ろした。 汗だくの顔で、はっきりと言い切った。


「あんたらには、生きて牢に戻ってもらう」


 視界が、真っ白になった。


 冗談じゃない。 冗談じゃねえぞ。 俺は、こいつらの人生に刻まれた傷でいたかった。 なのにこいつらは、俺らを「過去」にしやがった。


「ふ、ふざけるな……! 殺せ! 殺してみろ! 俺はお前らを……」


 その時だった。


『絶望。 お前の絶望。 実に甘美だ。 我の養分に相応しい……』


◇◇◇ オパール視点


「何? 何が起きたの?」

「姉さん! アイツらが……」

「いない? ……消えたですって?」


 ヌイセマカ奴らは、ダンジョンに吸い込まれるように消えていった。

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