第26話 指名手配犯ナナシーーミート視点
ガランド山脈、冒険者ギルド派遣所の応接室。
儂らはギルドの小童共から話を聞いていた。 お茶を一杯出されてた。
ふむ、いい対応じゃのーー
「オイ、学園長! ブルブルするな! 気が散る!」
「無理です! なんで、なんです〜」
役員が語り始めた話は、思っていたより遥かに深刻なものです! 儂、キャラを貫くのは無理です〜
「……この女が、ブルブルうるさく敵わん。 改めて、整理するぞ」
マルクは、ギルド長の椅子に堂々と座っているです。
この前国王様は、なんでそんな堂々としているです?
役員が書類を広げる。 儂は黙って、続きを促しかないーー
「まず、ダンジョン内で発生した謎の音。 例の呻き声についてです。 発生源は最下層と思われておりましたが、二回のみでした」
「ふん……謎の音か」
「同時に、ダンジョン内で正気を失っていた冒険者たちも、軒並み意識を取り戻しております。 被害は甚大でしたが、死者は……驚いたことに、ほぼ出ておりません」
「ほう?」
ーー役員は一息ついたです。 マルクは思わしげに考えているです。
「どうやら、その声の元凶と思しきものを利用して、とある青年冒険者が聖女を誘拐したのです」
「ほほう? 聖女を誘拐、じゃと?」
「ええ。 目撃者の証言によれば、ダンジョンの中に聖女を置き去りにして、ダンジョンの奥に入って行ったらしい……」
「ふん。 意味不明だな? そいつは何がしたいんだ?」
マルクは腕を組んだ。 マルクはなにを考えているんです?
「聖女は奪還できました。 しかし……手放しで喜べない事情がございまして」
役員の顔が、曇った。 なんです? 他に問題が起こったです?
「その、問題についてなのですが……」
役員は声を落とした。
「実は……此度の騒動に乗じて、逃亡者が出ております」
「……ほう?」
「ヌイセマカ、という凶悪犯罪集団が逃げ出したのです」
「ひ、ひぃ! 怖いです!」
私は、マルクに抱きつこうとした。 しかし、顔を手で捕まえてガードされたです。 なんでです?
「マルク様〜」
「ええいっ黙れ、貴様は学園長だろが!」
「……すみませン。 続きたのム」
そんな私たちを無視して、ルミス王子は職員たちに話を促す。
「奴らはかつて、このダンジョンを利用した重大な犯罪に関与した者どもです。 その身柄は、第三層の特殊牢獄に収監されておりました」
第三層。 マルクの眉が、ぴくりと動く。どうしたです?
「……つまり、門番たちは」
「さすが、前国王様。 察しがよろしいですね……」
「え? なんです? なに納得しているです?」
役員が頷いて続きを話す。
「第四層の入り口管理と、特殊牢獄の監視。 その二つが、彼らの役目でした。 ダンジョン内の混乱に対応しながら、牢獄を守り続けていたのです。 しかし……」
「裏目に出た、というわけだ」
「……はい。 あの青年が第三層を暴れながら通過したタイミングでの謎の咆哮。
混乱で、監視体制が崩壊しました。 ヌイセマカはその隙を突いて、逃亡を図ったのです」
応接室に、重い沈黙が落ちたです。
「……で、その青年とやらは?」
役員は、一枚の紙をテーブルへ滑らせた。
上手い似顔絵と、簡単な特徴書きです!
「ダンジョン内での傷害、不法侵入、冒険者への暴行……容疑は山積みです。 本日付で、このガランド山脈一帯の指名手配犯として、手配書を回しております」
「……ふむ」
私は、手配書を手に取った。
ーーうむ? イケメンじゃの! 格好良いぞい!
「追跡にあたっているエメラルド隊、及びその関係者には、このヌイセマカ逃亡の件は知りません。 ……なぜなら、そこに同行している、ルビーとオパールの両名が彼らの被害に遭って、唯一生き残った被害者なのです……」
ーーつまり、其奴らは知らないです?
「もし、その青年の心当たりがおありでしたら……」
「知っているなぁ?」
「知ってル」
「知っているわね」
「忘れないでござるよ」
「……」(お宝、お宝!)
ーーな? 知らないの、私だけです?




