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死に戻りクズ勇者は勝手に生きたい〜こんな奴に勇者は任せておけない!  作者: Masa(文章力あげたい)
黄金の鉱山編

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第20話 ナナシを追いかけろ ーーオパール視点

 なんとか第一層の混乱を抜け、第二層に入った頃には、時間はかなり経っていた。


 逆走する人波をかき分け、押し流され、また進んで。 全身はもう汗だくだ。


「はあ……はあ……ひどい目に遭ったわ……」

「まったくだね……」


 まるで『ナニカ』にエネルギーを吸われて疲れた私たちは、一旦第二層で休憩することにした。


 住民街もどきのこの層は、いつもなら人がウロウロしているはずだった。 


 ーーなのに、今日は違う。 住民たちは家の陰からひそひそと囁き合っている。


「ねえ、聞いた? 例の男が斬りつけてきたって」

「ああ。 人を担いで、暴れながら降りていったって……」

「変な奇声音も聞こえたって……」


ーー聞くまでもなく、誰の噂かわかってしまった。


「……これはまずいね」

「あの馬鹿! なにを考えているのよ?」


 エメラルドは頭を抱えていた。 姉さんも憤っていた。


「二人とも……それより、気づいてる?」

「え?」

「大怪我の話は聞くけど……死人の話は聞かないよね?」


 ーーそうなのだ。


 第一層でも、この第二層でも。 あれだけの騒ぎなのに、「殺された」という声は一度も聞いていない。


「あの馬鹿、剣まで抜いて暴れたらしいのにねえ。 器用なことだ」

「……不殺、よね」

「そういうこと」

「はは……」


 エメラルドの口元は笑っていた。 でも、目は笑っていなかった。


「だからこそ、急ごうか。 あの律儀者が『拉致する』なんて無茶をしてまで、先を急ぐ理由。 ろくなもんじゃないよ」


◇◇◇


 第三層を抜ける頃には、嫌な予感は確信に変わっていた。


 道端に転がされた冒険者たち。 皆、気を失っているだけで息はある。 ーーでも、その数が尋常じゃない。


 ーーナナシ。 本当に何をするつもりなの。 こんなの死刑だよ?


 そして私たちは、第四層手前の門番の詰め所まで来た。


 ーーそこには、最悪な光景が広がっていた。


「……なによ、これ……」


 詰め所は、半壊していた。


 石造りの壁は砕け、扉は蝶番ごと吹き飛び、武具の残骸が散乱している。 その瓦礫のあちこちに、門番の兵士たちが、折り重なるように倒れていた。


「っ、生きてる!?」


 駆け寄って首筋に触れる。 脈はある。 全員、気絶しているだけだ。 でも、鎧は無惨にひしゃげて、まともに立てる者は一人もいない。


「うう……」

「しっかりして! 何があったのよ!」


 かろうじて意識のある兵士が、震える指で第四層の入り口を指した。


「ナナシの野郎。 逃げ延びやがって……」

「あの馬鹿は……」

「深傷を負わせたが、逃げられた……」


 兵士は、がくがくと首を振った。 その目に浮かんでいたのは、ナナシへの恐怖じゃない。


「……あの男は、死にかけのまま下に潜った……聖女様を、担いだまま……」

「……!」

「聖女様は、ナナシを癒そうとしなかった……」

「……」

「ナナシ。 奴はそんなに強くない。 ……なのに、どうして地下に潜るんだ?」


 兵士はそこまで言って、意識を手放した。


「……あのバニラが?」


 どういう意味? あの優しいバニラがナナシを癒さないなんてーー


 私が振り返ると、エメラルドはもう、下へ向かおうとしていた。


「……オパール、ルビー。 走るよ」


 その声から、いつもの飄々とした響きが消えていた。


「多分だけどね。 このままじゃ、ナナシは死ぬよ」

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