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死に戻りクズ勇者は勝手に生きたい〜こんな奴に勇者は任せておけない!  作者: Masa(文章力あげたい)
黄金の鉱山編

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第61話 ついにやらかすナナシ

 ーー屈辱だ。 こんな屈辱あり得ない。


「……ニャニャ。 『ナナシ、君の体は軽いな?』『エメラルド! なんだと?』『あそこも軽いんじゃ……』ニャン! なにするニャ!」


 俺は、隣で一人芝居を始めたバニラの頭を鷲掴みにした。


「お前が気持ち悪い妄想をしているからだ!」

「ニャ! これは、職業柄仕方ないニャ!」


 ここは、ダンジョン前の小屋。 俺はバニラの監視下に置かれていた。


 ーーなんだこの状況? 屈辱だ。 俺がこの白猫女のごときにーー


 俺は勇者だぞ? 俺は本気を出せば最強のはずなんだ! それが、猫に見張られて大人しく座っているだと?


 ーーこんなこと、している場合じゃない。 俺は、最深部に行って願いを叶えるんだ!


「ニャン。 ナナシ、大人しくしておくニャ〜 じゃニャいとまたエメラルドにボコボコにされるニャン!」

「……ふん。 あれは俺が怪我をしていたから……」

「ニャン! 傷は完治させていたニャン! 嘘はよくないニャン!」

「……体調がよくなかったんだ」

「……調子? ニャンの聖女の力は臓器などにも有効ニャン!」

「……クソが」


 言い訳をことごとく潰されて、俺のメンタルはズタボロにされた。 


 なんなんだこの猫は。 回復魔法より先に、人の心を抉る才能を磨いたのか?


 ーーもういい。 こんな茶番に付き合っている暇はない。 


「もう、行く……」

「ダメニャ! エメラルドに怒られるニャ! ニャンは、ナナシの監視をしろと命令されているニャン!」

「ふん。 だったらこうするまでだ!」


 俺はバニラを強引に担ぎ上げた。


「ニャン? 一体、なんのつもりニャ!」

「こうすれば、常に監視できるだろ?」

「監視って、こう言う意味じゃニャイニャン」


ニャンニャと、うるさい猫だ。 図体は人だがな?


◇◇◇


「おい! そこを退け!」

「グボッ」


 小屋の警備をしていた冒険者が、壁まで吹っ飛んだ。 拳一発。 手応えすらない。


「なんのつもりだ! バニラ姫をどこへ連れて行くつもりだ!」

「……なにちょっとした散歩さ」


ーーと言っても、地獄へのな?


「グギャ」


 二人目も沈めた。 残りの連中も鎮めた。 


「ニャ! ナナシ、なにしているニャ! 今すぐに治療をするニャン、下ろすニャ」

「駄目だ。 行くぞ……」

「ニャン!」


 俺は強引にバニラを拘束して担ぎ、ダンジョンへ向かう。 肩の上のバニラはジタバタして、鬱陶しい。


 第一層。 ここのダンジョンは邪魔が多いーー 邪魔な二足歩行の障害物がな?


「退け!」

「ギャ!」

「邪魔だ!」

「グアァ……」


 俺は前方の奴らを辻斬りにしながら進む。 ちょうどイライラしてたんだ。


「ニャ! なにやっているニャ! めちゃくちゃニャン!」

「ふん。 黙ってろ! 暴れ猫」

「一体、なにを考えているニャン!」

「それはな……」


 ーーなにも無策でこんな行為をしている訳ではない。


「エメラルドたちが追いついてくるかもしれないからな。 足止めだ」

「足止め? それだけ……ニャン?」

「ああ、使えるだろう? この障害物は……」

「そんな理由でこんなことを……許せない……」


 ーーん?


 なんだ? バニラの雰囲気が変わった? 肩の上から伝わる空気が、氷のように冷たい。 これは怒りかーー コイツ、まさか?


 その時だった。


『ゴオォーォ……オオオ……ォォォォ……』


 バニラの怒りに共鳴するように、ダンジョンの奥から唸り声が響いた。 壁が震え、天井から砂がぱらぱらと落ちる。


 周りの冒険者どもは悲鳴を上げて逃げ出した。 ーーだが、俺は違う。


 この声。 この禍々しさ。 それはまるで、俺たちを歓迎している気がした。


「いいぜ! ダンジョン! 踏破してやる! 俺の願いを叶えてもらうぞ! ……この俺を邪魔する奴は」


 通りがかりの冒険者を斬りつける。


「こう……だ!」


混乱が第一層に虚しく響いた。

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