第56話 見張りのパートナーは抱きしめ合う
「そろそろ起きて、アゼッタ……」
「う、う……」
まぶたを開けた瞬間、嫌な夢を見ていたことに気づく。 最悪な思いでだ。
あの後、私が干していた服は全部びしょ濡れになったのだ。 よりにもよって、替えの服まで洗っていたタイミングでーー
お陰で、ルミス様の前に寝巻き姿で現れるハメになった。 思い出すだけで顔から火が出そうになる。
「アゼッタ? 無理なら他の者に頼むか?」
「え? い、いいえ、大丈夫です!」
私は慌てて跳ね起き、ルミス様に元気アピールをした。 これ以上、情けない姿を見せるわけにはいかない。
ルミス様と私はテントから出た。夜気はひんやりとして、焚き火の残り香がかすかに漂っている。 見張りには今、ミアとミートがいるはずだ。
ところが持ち場へ行くと、二人は抱き合っていた。
「ミート……」
「ミア……」
見てはいけないものを見てしまった。 私とルミス様は無言で目配せをして、そっとテントの前まで引き返す。
「さーて! 見張りの時間ね!」
「野外観察だネ!」
あえて二人に聞こえるように、わざとらしく声を張り上げながら近づく。
「……貴方達、もう来たの?」
「これ! ミアよ、離れんかい」
二人は何事もなかったかのように、そそくさと解散していった。 ミート学園長は顔を真っ赤にしていた。
私たちは見張りを始めた。 焚き火に薪をくべ、闇に沈む森へ目を配る。 しばらくして、ルミス様が私の方を見て言った。
「まだ、水晶の犯人探しをしているのか?」
「犯人は絶対にフレイアです……今回の遠征で、彼女の尻尾を掴んでみせます」
「そんなことはやめて、僕の婚約者になって、結婚しようよ?」
「……なりません。私ごときがルミス様の妻などと……」
「僕はこんなにアゼッタと結婚したいと思っているのにな?」
「ルミス様、近いです」
肩が触れそうな距離で微笑まれて、私は慌てて視線を焚き火へ逃がした。
けれど、そんな私にルミス様は近づいてーー
◇◇◇
「……」
「交代の時間よね、ルーブ!」
「ああ」
テントの陰から見張り場を覗き込んで、私は楽しそうに声を弾ませた。
「見て見て、ルミスとアゼッタが抱きしめ合っているわ!」
「そうだな」
「ふふ。 あの二人って、そんな仲だったのね。 いつも近くにいるけど、全然会話しているシーンがなかったわよね!」
「お前は呑気だな……」
「え? どういう意味?」
ルーブ? どうして、頭を抱えているの?




