↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死に戻りクズ勇者は勝手に生きたい〜こんな奴に勇者は任せておけない!  作者: Masa(文章力あげたい)
黄金の鉱山編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

149/245

アゼッタの犯人探し8

  ーー温かい。 ここは、ルミス様の部屋?!


 重い瞼を開けると、額には冷たい濡れタオル。 体は羽毛の布団にすっぽりと包まれていた。


「おお、気がついたか」

「……ルミス様? へ?」

「これ! 大人しくしていろ!」


 声のした方へ顔を傾けると、そこにいたのは、ルミス様だった。


 私の枕元に腰掛け、片手にスープの匙を持っている。 サイドテーブルには湯気の立つスープの器と、水の入ったグラス。


「どうして……というか、私、なんで寝て……」

「覚えてないのか? 影丸与一がここまで運んでくれたぞ」

「あ!」


 そうだ。 思い出した。 影丸与一に話を聞こうと、滝壺まで踏み込んで、水飛沫を浴び続けて、そこから先の記憶がない。


「じ、自分で食べられます! というか、ルミス様のお手を煩わせるなど……!」


 慌てて起き上がろうとした途端、頭がずきりと痛んで、私はぽすんと枕に逆戻りした。


「ほれ、見たことか。 無理をするな」


 ルミス様は目を細めて笑うと、匙でスープをすくい、ふうふうと冷ましてから私の口元へ運んだ。


「アゼッタ。 倒れてしまっては、元も子もなかろう? 今日はゆっくり休め」

「はい。 かしこまりました……」


ーー悔しいけれど、スープは温かくて、優しい味がした。


「ふふ。 美味しいか?」

「はい……」

「こんなに疲れるまで動きまわって。 ……そんなに僕と婚約したくないのか?」

「そ、そうじゃありません! 私はただ……」


 犯人捜しは、まだ終わっていないのに。 焦る気持ちとは裏腹に、瞼はどんどん重くなっていく。


ーーちょっとだけ。 眠ったら、また頑張ろう。


風邪が治った私は、方針を変えることにした。


 証拠がないなら、掴めばいい。 そう、本格的にフレイアを監視するのよ!


 夜。 私は酒場の裏手、小さな池を挟んだ木立の陰に身を潜めていた。


 灯りの漏れる窓の向こう、シャンデリアの揺れる店内に、目当ての姿はあった。


 金の髪を揺らすフレイアが、ルーブと同じテーブルを囲んでいる。


 卓上には山盛りの肉料理と、なみなみ注がれたエール。 二人は何やら親しげに言葉を交わしていた。


 談笑、しているわね。 いや、一歩的にフレイアが話しかけている? あの寡黙なフレイアが?


 頬をほんのり染めてルーブに語りかけている。 言葉の内容はわからない。


 なぜ私たちの前では寡黙を装うのか。 何を隠しているのか。 


 ーー水晶を壊したことと、関係があるのかしら?


 池のほとりまで近づいた私は、茂みの陰から改めて窓の中を覗き込んだ。


ルーブは食事に夢中だった。 帽子を目深にかぶったまま、串に刺した肉の塊に豪快にかぶりついている。


 卓の上には丸焼きの鶏、煮込み、チーズの山。 泡のあふれるエールのジョッキが遠くからでも見える。


 フレイアはというと、不満そうにルーブに縋っていた。


ーーどうやら、彼女も肉を食べたいようだ。 エルフが肉を欲しがるなんて。 彼女は本当にエルフなの?


「お前は草でも食べてろ」

「おいしいわ、ルーブ!」


 ルーブがステーキの飾りの草をフレイアに渡していた。


「……何よ、あれ」


 思わず声が漏れた。密談を期待して張り込んだのに、聞こえてくるのは、咀嚼音と二人のコントだけーー


いや、待ちなさい。 落ち着くのよ、アゼッタ。


ーーぐう。 間の抜けた音が夜気に響いた。


 私のお腹の音だった。張り込みに夢中で、夕食を抜いていたことを思い出す。


「……あら、どこからかしら?」


 フレイアが窓から、こちらの方を見ている。


 私は、逃げるようにその場を後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。