第24話 一緒に冒険へ
私たちは、門番の人たちから、情報を得た。
ナナシがダンジョンの入り口前の詰所にいることを。
私たちは、詰所へ足を踏み入れた。
「……ナナシ!」
「……」
「ニャン? ルビーに、オパールニャー」
そこには、ナナシとバニラがいた。
姉さんは、覚悟を決めたまっすぐな目で。 ナナシに近づいた。
「……なんだ。 お前ら」
「ナナシ。 ……私たちを、パーティに入れて!」
「……はあ?」
「私たち、あなたと一緒に、第四層へ行きたいの!」
姉さんが、ナナシに頭を下げる。
ナナシは、眉をひそめた。
「……断る」
「どうして!」
「お前ら、わかってんのか。 ……俺は、最深部を目指してる。 お前らみたいな雑魚を、連れて歩く余裕はねぇ」
「雑魚じゃない! 私たちは強いわよ!」
「ハア? トラウマ持ちのくせに……」
ナナシは、私たちを交互に見た。
あの日、ダンジョンの底で、男たちに嬲られた私たち。 心に、消えない傷を負った私たち。
ーーバニラも言っていた。 心の傷は、治せないと。
その証拠に、今もアイツらの影がチラつく。
「あんな目に遭って。 ……男が怖くないのか? 俺だって、男だぞ。 ……どうせ、俺と一緒にいるだけで、震えちまうんだろ?」
突き放すように、ナナシは告げた。
私たちがこれで引き下がると思っている見たいだ。
そして、安全な第三層で、細々と冒険者を続ければいい。 そんなことを、思っているみたいだった。
ーーだけど、私たちは強くなりたいんだ。
「……っ」
姉さんが胸当てを外す。
「……は? おい! なんのつもりだ?」
次にズボンを下ろそうとする姉さん。
私も、負けない。 私も下半身に手をかけるーー
「お、おい! 待て! 何やってんだ!」
「……これで、証明する」
私たちは顔を真っ赤にして、震える手で。 それでも、目だけは、まっすぐに彼を見た。
「私たちは、あなたが怖くない! だから……っ!」
「やめろ! わかったから服を脱ぐな!!」
ナナシは、慌てて二人の手を止めた。
「……キャスといい、師匠といい。 なんで露出したがるんだ?」
ナナシは頭を抱えていた。
「……はあ。 わかったよ。 ……お前らの覚悟は、わかった」
ナナシの発言に、私たちは喜んだ。
「じゃあ!」
「……勝手にしろ。 ついて来たけりゃ、ついて来い。 ……ただし、俺たちの関係はビジネスだ。 自分の命ぐらい、自分で守れよ!」
「……っ、ありがとう、ナナシ!」
「ありがとう……」
姉さんが、嬉しそうに笑った。 私も涙ぐみながら、頷いた。
ため息をつくナナシ。
その後ろで、バニラが興奮していた。
「ニャフフ。 ……すごいニャ!」
バニラが、目を輝かせていた。 どうしたのかな?
「これは、書き物が捗るニャ! 浮浪者と、かわいい女性たち。 たまらないニャン! ニャニャン!」
バニラは、机に座りながら、ペンを走らせていた。
「……おい。 お前、何書いてんだ!」
「ニャ? ……私、これでも作家ニャン。 物語を書いて、生計を立ててるニャー」
「作家だと?」
バニラは、そういうと胸を張ってこう言った。
「最近は、冒険者の話が魔物大陸で人気でニャー。 だから、こうしてダンジョンの近くで、生の素材を集めてるニャン。 お父様も、期待して待っているニャン!」
バニラはにやにやと笑いながら、ペンを走らせていた。
なるほど。 道理で、詰所にしては豪華なわけだね。
聖女の力で、人を癒しながら。 その傍ら、冒険者たちの物語を書いてたんだ。
「……ナナシ。 私、もう我慢できない…… 赤と白は生まれた姿で交わる」
「オイ。 ……それはなんだ?」
ナナシは、心底、呆れていた。 姉さんは、顔を赤らめて恥ずかしそうだ。
私も恥ずかしくて、シャツのボタンを一つ閉める。
「ニャ? 恋愛物に、逢瀬はつきものニャ!」
「……せめて、相手はサキュバスにしてくれ。 名前はキャスな……」
「サキュバスニャン? ……だいぶ、マニアックニャー」
ナナシがヒロインの名前の変更をお願いしている。
なんだか、納得がいかないな。 姉さんも、私と同じ表情をしていた。




