第21話 白髪の聖女
「チッ」
ヌイマセカの男たちを一瞬で倒したナナシ。
男たちは致命傷を受けたが、息はまだあるようだった。
彼は、忌まわしげに男たちを見た後、姉さんの服を持ち上げて、姉さんにかけた。
「……」
姉さんは、服を掴んで体を震わせていた。 言葉を話す気力すら無いようだ。
「おいお前」
「ナナシありがとう……」
「お前ら何があった……」
「……わかった、話すよ」
ナナシにさっきまで起こっていた出来事を話す私。
「それで、私が捕まって。 男たちに脅されて、姉さんが服を脱いで……」
「……脱衣シーンの説明は要らん。 結論を話せ!」
「アイツら『ヌイセマカ』がボンバさんを殺した犯人だったんだ……」
「そうか……」
ナナシは、私と姉さんを担いで歩き出す。
二人も担ぐなんて。 重いはずなのに、凄いーー
「おい。 大丈夫なのか、彼女たちは!」
「一体何があったんだ!」
第二層の人々が、私たちを珍しいものを見るように眺めていた。
「……退け、邪魔だ」
「ああ! なん、だ?」
第一層の混雑を避けて、私たちはダンジョンの外に出た。
そして、そのまま詰所の中へ、入ろうとするナナシ。
「え、え? ここは……」
聖女がいるらしい、場所なんじゃ?
「おい! 患者がいるんだ、開けろ!」
「ちょっと! ここはまずいよ!」
私は、ナナシに説明しようとしたが、遅かった。
「なんのようでしょうニャー」
私たちの目の前に現れたのは、白髪のネコミミと尻尾の聖女だった。
「治せ」
ナナシは、彼女の前に私たちを置いた。
彼女は、私と姉さんの顔を見て、こう言った。
「……無理ですニャ」
「なんだと? 傷が治せないと? 聖女だろ、お前」
「ニャ。 体の傷は、一瞬で治せますニャン。 ……でも、心の傷は無理ニャー」
姉さんの体が震える。 見えないなにかに抵抗しているようだった。
「……それでもいい。 とりあえず、治せ」
「わかった、ニャ」
白髪猫の聖女は、私たちに手を当てると一瞬で傷を治した。
ーーこれが、神の奇跡。 聖女の力。
姉さんは、震えながらも、治った体で、彼女に土下座した。
私も、横に並んで土下座する。
「よいニャ。 それよりも、抱きしめてあげますニャー」
私たちは、白髪猫に抱きしめられるのだった。
「……あなたのお名前は?」
「私の名前はバニラ。 ニャン」
◇◇◇ ナナシ視点
俺が詰所を出ると、ギルドの役員が前にいた。
「……君は? 見ない顔だな。 知らなかっただろうが、ここは、立ち入り禁止なんだよ? 即刻離れてもらおうか?」
「……いいぜ。 それよりも噛ませ犬が、ダンジョンに転がっているから尋問にかけろ! 面白いことが聞けるぞ……」
「噛ませ犬? ……まあ、いいでしょう。 報告ありがとうございます……」
ーーその後、ギルド運営から、連続死傷強奪事件の犯人が捕まったと、公表された。
今回の捕縛に貢献した俺や、ルビーとオパールは、しばらく生活に困らない程のお金を手に入れた。
しかし、俺はその金を辞退した。 代わりにアイツらに還元するようにと、指示をして。 俺はこの金よりも、最深部を目指しているからだ。




