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死に戻りクズ勇者は勝手に生きたい〜こんな奴に勇者は任せておけない!  作者: Masa(文章力あげたい)
黄金の鉱山編

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第18話 私たちと手を組みなさい

 麓に着いた私と姉さん。 姉さんの足は、ナナシという浮浪者に向いていた。


 「ちょっと! ……お姉ちゃん、なにを考えているの?」

 「なにって……」


 姉さんの背中越しにナナシを盗み見る。 ボロボロのマント、二振りの剣、ぎらぎらとした目。 


 そんな浮浪者に、姉さんはまた近づくつもり?


 ーーこの男が、ボンバさんを殺した犯人かもしれないのに。


 「……大丈夫よ。 私、彼が犯人じゃないと思うの」

 「……なんで?」

 「証拠は、この魔石。 これは、ナナシ……彼が倒した魔石に間違いないわ」

 「そうだよ。 だから……」

 「だからよ!」

 「……あ」


 大量の魔石を放置して進んでいた男。 そんな男が窃盗をするだろうか?


 私が考えごとをしていると、お姉さんは強引にナナシを引っ張っていた。


 「……なんのつもりだ」

 「ここよ、ナナシ。 ここのご飯、美味しいの!」

 「はあ?」


 姉さんはナナシを行きつけの食堂の前で引っ張った。 


 冒険者御用達の店で、安くて量の多い料理が自慢だ。 


 私たちは席に着いた。 姉さんとナナシが向かい合わせ。 私は姉さんの隣に座った。 


 私は、ナナシからできるだけ距離を取る。


 「お姉ちゃん……」

 「大丈夫よ、オパール」


 姉さんが、テーブルの下で、私の手を握ってくれた。


 ーー何を考えているのか分からないけど、姉さんに任せるしかない。


 「私、ラム肉のシチューね! ナナシは何にする?」

 「……いらない。 俺は食欲ない」

 「駄目。 魔石を売って手に入れたお金よ。 元は貴方が放置したものなんだから、一緒に食べないと不公平よ」

 「……ああ。 そんなもの、俺には必要なかったからな……」


 そんなナナシは、メニューを見て、一番安いパンとスープのセットを頼んだ。


 料理を待つ間、姉さんが切り出した。


 「ねぇ、ナナシ。 貴方、どこから来たの?」

 「……どこからでもいいだろ。 お前に関係あんのか?」

 「私たちはね、姉妹なの。 私がルビーで、こっちが妹のオパール」

 「……なんだ? 自己紹介を始めやがって。 お前らに興味ないんだが?」

 「もー、つれないわね」


 ーーなるほど。 姉さんは、ただの世間話に見せかけて、情報を引き出そうとしているんだ。


 私は、姉さんの隣で、黙ってスープを口に運ぶフリをした。 全部、聞き逃さないようにしないと!


 「……見ない顔だけど、ナナシは、今日が初めてのダンジョン?」

 「……ああ」

 「へぇ! じゃあ、ここに来たのは、昨日かな?

 「……はあ。 今日だ……」

 「……あら。 じゃあ、今日はどこで寝るの?」

 「……夜に襲撃して、第四層へ向かう。 俺の邪魔する奴は……」


 姉さんは、表情を変えずに頷いた。


 ーーいやいや、姉さん。 危険だよこの人。


 「ボンバさんって人、知ってる? ちょっと太ったおじさん見かけなかった?」

 「……はあ? この世中には、二種類が存在するだけだ。 俺を邪魔する奴とどうでもいい奴。 ……お前たちは、どっちだ?」

「ふぅん?」


 姉さんが、にこっと笑った。 なんで笑っているの姉さん!


 ナナシは、姉さんの目から逃れるように、運ばれてきたパンを千切り始めた。 パンを千切る手は、思ったよりも丁寧だった。 硬いパンを、無造作にではなく、一口大に綺麗に分けていく。


 絵になるなぁ。 これで綺麗な身なりだったらいいのにーー


 「……お前ら、なんで俺を誘った?」


 ナナシが、唐突に顔を上げた。 ぎらぎらした目が、姉さんを真っ直ぐに見ている。


 姉さんは、にこやかに答えた。


 「だから言ったでしょ? 魔石は元々、貴方のものだから……」

 「嘘だ。 お前、本当の理由を言え」

 「……」


 ーー鋭い。 


 私は、テーブルの下で短剣の柄に手をかけた。 いつでも抜けるように。


 姉さんは、しばらく黙っていた。 それから、にっこりと笑った。


 「ねぇ、ナナシ。 今朝、第三層の西側で、人が殺されたの。 さっき出した、ボンバさんって人」

 「……」

 「背中から斬られて、所持品を全部抜かれていた……」

 「……ふん」


 ナナシの目が、ほんの少しだけ揺らいだ。 


 「……私、仇を取りたいの。 力を貸してくれる?」

 「……はあ? ……なんで俺がそんなことをしないといけないんだ?」

 「……そう。 残念だわ……」


 ーーそして姉さんが、笑顔でこう言った。


 「じゃあ、貴方が犯人だって、ギルドに報告するわね」

 「……どういうつもりだ」

 「だって貴方、どう考えても、怪しいもの」

 「……」

 「貴方の選択は、二つに一つ。 ギルドに、殺人窃盗犯で捕まえるか。 ……それとも、私たちと一緒に犯人を捕まえるか……」

 「……第三案に、今すぐお前を殺す。 ……その後、邪魔する奴を次々に殺すという、一番わかりやすい選択肢があるがな……やろうか?」

 「へえ。 私を殺す? ……やってみなさいよ!」

 「お姉ちゃん!」


 私は、姉さんの横顔をちらりと見た。 姉さんは、ナナシの目を真っ直ぐに見つめている。 


 ナナシも、目を逸らさなかった。 しばらく、二人は無言で見つめ合っていた。 


 「お姉ちゃん!?」

 「大丈夫よ、オパール。 ……彼は、そんなことしないわ」

 「はあ? ……なんでそう思うんだよ!」


 ナナシは、声を荒げて姉さんを睨みつける。


 彼のスープに入った、パンがふやけていく。


 この男が、本当にボンバさんを殺していないのか。 それとも、上手く嘘をついているだけなのか。


 それに、信用できる人物なのかすら、わからなかった。


 

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