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死に戻りクズ勇者は勝手に生きたい〜こんな奴に勇者は任せておけない!  作者: Masa(文章力あげたい)
黄金の鉱山編

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第15話 ダンジョンの混沌

 鉱山の入口に足を踏み入れたんだけど憂鬱だ。


 相変わらず、ここの匂いは好まない。 湿った石の匂い、灯火の油の匂い、それから大勢の人間の汗の匂い。 血の匂いも混ざって最悪だ。


「うわ……今日も混んでる。 最悪……」

「いつものことでしょ! オパール、はぐれないでね」

「はいはい……」


 私たちが目指すのは第三層。


 けれど、その前にこの第一層を抜けないといけない。


 第一層は、狭い。 鉱山の入り口だから、もっと広々としていてもいいはずなのに、いつも息苦しいくらいに人で溢れている。


 これからダンジョンに入る冒険者。 逆に出てきた冒険者。


 そして、死体を担ぐダンジョン保護団体ーーエターナルパーフェクト教団。


 見るからに怪しい、ローブ姿の連中。 奇形教と呼ばれ、一部では忌み嫌われる連中だ。 


 私はどちらでもないかな。 姉さんは、トップのダンジョン踏破者に夢中だ。 


 しかし、混雑の理由はそれだけじゃない。 私たちが列に連なって歩いていると、やっぱり聞こえてきた。 本当にウンザリするな。


「だから、邪魔だって言ってるだろうが!」

「あぁ? 誰に向かって口きいてんだ!」


 壁際にたむろしている冒険者たちに、別の冒険者がいちゃもんをつけている。 大きな斧を背負った男が、座り込んでいる若い冒険者の胸ぐらを掴んでいた。


「こんなところで止まるな! 奥に行く奴の邪魔なんだよ!」

「俺たちは仲間を待ってるだけだ!」

「だったら二層で待ってろよ!」

「はぁ? どこでもいいだろうがよ〜」

「ここでたむろったら、邪魔なんだよ!」


掲示板に書いてあった通りだ。 連中を避けるように行列ができている。


 ーーまったく、貴方達の方が邪魔なんだけど。


「オパール、近寄っちゃ駄目だよ!」

「うん……」


 姉さんが私の手を引いて、揉めている一団から距離を取る。 他の冒険者たちも、見て見ぬふりをして横を通り過ぎていく。 


 毎朝こんな光景だから、誰もがため息をついている。


 この層にいる全員が、イライラしているだろうなーー


 壁にかけられた魔導灯の光が、ゆらゆらと揺れている。 その道を、冒険者たちが列を成して歩いていく。


「先、急ごう!」

「うん」


 人混みを縫うように歩いて、私たちは第一層の奥へと進んだ。


 その先に、第二層へ降りる下り坂がある。 第二層は広い。


 ここはかつて、掘削され切った場所だ。 昔は、この層で鉱石がたくさん採れたらしい。 でも、今はもう何も取れない。 掘り尽くされて、ただ広い空洞だけが残されている。


 ーーそして、その入り組んだ地形を利用して、休憩所が大量に作られていた。


 元々の坑道を区切って、布や木の板で仕切りを作っただけの簡易なもの。 その中で、冒険者たちが寝転がっていたり、食事を取っていたり、武器の手入れをしていたりする。


「お、ルビーちゃん、オパールちゃん。 今日も早いな」

「おはようございます!」


 休憩所の一つから、顔見知りのおじさんが手を振ってくれた。 


 彼みたいに、ここで暮らしている者もいる。


 毎日、街と鉱山を往復するのが面倒で、いっそ鉱山の中に住み着いてしまった冒険者たち。 地上の宿屋に泊まる金がない新人冒険者や、落ちぶれた冒険者。


 そして、地下に潜って帰ってこない家族を探す親族たちもいた。 装備をしてない人たちは、最近問題になっている。


 三層に向けて歩いていると、奥のほうから煙の匂いがしてきた。 誰かが、焚き火で何かを煮ている。 壁に開けられた天然の通気口から、煙が細く立ち上っている。


 割高だが、ここで露店や日用品も買える。


「ここ、街みたいだね!」

「うん。 ……そうだね」


 姉さんが私に向けて笑った。 


 ーー実は、私としてはここに住みたいと思っている。


 理由は簡単だ。 ここは広いし寝床もある。 あの鬱陶しい一層を通って帰るぐらいなら、ここに住んで、無駄な移動時間を採掘に当てた方が効率的だろう。


 だけど、姉さんが嫌がるのだ。 理由を聞くと、姉さんは「何か吸われている気がする」だって。


 子供の声まで聞こえてくる。 冒険者の家族なのか、それとも捨てられた子供なのか。 ーー私は、あまり考えないようにしている。


 たまに、ボロをまとった老人が、壁にもたれて座っているのが見える。 目を閉じて、もう動かない。 眠っているのか、それともーー


 第二層は安全だ。 なぜか魔物は出ない。 ーーなぜだろう?


 不思議とそんなことを考えてしまう。 ワザと、この状況が作られている気がする。


 けれど、ここは死の鉱山の中だ。 地上の街よりも、ずっと人の命が軽い場所。


「オパール」

「ん?」

「ぼーっとしないで。 行くよ!」

「……うん」


 姉さんが、私の手をぎゅっと握り直してくれる。


 私たちは、第三層への階段を目指して歩いた。


 ーー目指すのは、第三層だ。

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