表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【2巻4/10発売!】転生のらねこ薬師さんのひみつのレシピ ~天才パパとしあわせカフェ、開店にゃ!~  作者: まえばる蒔乃
第八章・初めまして、自然派パパとママ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

68/86

アリス視点

 宿屋の娘の朝は早い。


 夜が明ける前に井戸に行って冷たい水で顔を洗って。

 昨日の残り物のパンを食べながらスープを温めたりパンを焼いたり準備して、朝の支度や妹サニーちゃんのお世話を済ませた家族が動き出すのをお手伝いする。


 サニーちゃんの面倒を見るのはアリスの役目で、お着替えさせたり、危ないことがないように見守るのは毎日のこと。その間に従業員の人もやってきて、お客さんも目覚めはじめて、どんどん、慌ただしい一日が始まっていく。


 サニーちゃんの抱っこを祖母に任せ、アリスは食堂のホールで働く。

 雑用ばかりと言っても一つ一つが重要な仕事だ。汚れがあったら拭いたり、お皿洗いをしたりするのはもちろん、「おはようございます」「いってらっしゃい」の笑顔の挨拶が大事なのだと、パパとママからいつも教えられている。


 そうしていると、アリスの耳に噂話が飛び込んできた。聞かないようにとは思っても、耳には入れるようにしている。そこに大切な情報があるかもしれないからだ。


「最近妙に貴族の遣いがうろうろしてるよな」

「あれ? 野良の聖猫族の目撃情報があるらしくて、飼い猫を逃がした人が探してるらしい」

「あのカフェの猫じゃなくて?」

「あれは野良じゃないだろ。あれじゃなくて、別の猫だよ。猫耳でもない」

「俺も聞いた。貴族がうろつくと面倒だよな、気ぃ使わねえといけないこと多くてさ」

「そうだよ、お前ちゃんとズボン履いとけよ?」


 あっはっはっは。場に笑いが起きる。


 アリスはドキドキしながら、興奮を表に出さないようにして作業を続ける。


(やっぱり近くに、ミルちゃんのお友達がいるんだわ。教えてあげないと)


 以前から噂にはなっていたけれど、日を追うごとに噂が具体的になっている。

 野良の聖猫族なんて、日々旅人達と会い、彼らの噂話を耳にするアリスでも見聞きしたことがない。テーブルを拭きながら、ふと思う。


(聖猫族の人たちは、ミルちゃんを探しに来たのかしら)


 そもそもミルちゃんも、とても珍しい存在だ。

 はじめてできた、聖猫族のお友達。普通の人間のようでほんのちょっとだけ違う可愛い猫ちゃん。耳はふわふわで気持ちに合わせてぴくぴく動くのが可愛いし、尻尾もゆらゆらして、アリスからみると、まるで風と遊んでいるように見える。


 にゃあにゃあと元気いっぱいに身振り手振り大きくお話するとき、ちょこっと見える八重歯のかたちが人間と違って。遠くを見るときの瞳の色と表情は、ミステリアスで。

 アリスの知らない何かを知っている、不思議なお友達。それがミルシェットだ。


 ふと、アリスは不安になる。


(ミルちゃん、同じ猫ちゃんのお友達ができたら……アリスとお友達続けてくれるかしら)


 なんだかざわざわとした気持ちになった。

 遠い目をした彼女はときどき、別の世界から遊びに来た存在のような感じに見える。


(どうしてだろう……嫌な予感がするわ。ミルちゃんがお友達と会えるのは嬉しいことなのに、会ってしまうとミルちゃんが遠くに行ってしまうような……)


 アリスは当然『ねこポ』の運命を知らない。『ねこポ』はあくまで別の世界の話だ。

 しかし本能的に、主人公の業として、アリスは不穏な気配を察知していた。


 ミルシェットとの別れを、恐れていた。


「おーい、アリス! 受付に来てくれないか」


 父の声がする。アリスは返事をしてすぐに受付まで飛んで行った。

 朝は物思いにふける暇がない。一日の始まりは肝心なのだ。

 体を動かしているうちに自然と、アリスの悩みは吹き飛んでいった。


(とにかくミルちゃんに教えないと。きっと喜ぶはずよ)


 アリスはミルシェットに会ったらすぐに、聖猫族の情報を伝えようと決めた。

 驚いて喜ぶ親友の顔を思うと、アリスの心は弾む。

 ミルシェットが離れてしまうかも、という不安は嘘じゃない。けれどミルシェットが喜ぶ情報を伝えられるのはまた、アリスにとっては楽しみでもあった。


 アリスは自分が不安だからって、大切な情報を友達に黙っておくような子ではない。


「お手伝いが終わったら、すぐにミルちゃんのところに行きましょう。ふふ、シトラスさんもいるかもしれないし」


 頭の中であれこれと楽しみを並べて、アリスは仕事に集中したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧

続刊情報のお知らせ

いつもお世話になっております、まえばる蒔乃です!
いつも応援ありがとうございます。

転生のらねこ薬師さんのひみつのレシピ2 ~天才パパとしあわせカフェ、開店にゃ!~ 表紙

2026年4月10日発売予定です!

作品情報

転生のらねこ薬師さんのひみつのレシピ2 ~天才パパとしあわせカフェ、開店にゃ!~
著者:まえばる蒔乃
イラスト:п猫R

発売情報

発売日:2026年4月10日(木)
出版社:ドリコムメディア
レーベル:DREノベルス
定価:1,650円(本体1,500円+税)

ISBN:978-4-434-37608-5


「パパとママは、どうしてわたしを手放したんだろう」
魔術師パパと一緒に『ねこねこカフェ』を営む聖猫族のミルシェット。ひょんなことからダンジョン街で屋台を出すことに。そんな中、お客から「他に聖猫族を見た」という情報が。自分を捨てた実の親が見つかるかもしれない......猫耳幼女×魔術師パパの幸せカフェストーリー、第2弾!


続刊をお届けできることを嬉しく思います。

ぜひ書店や電子書籍ストアでチェックしてみてくださいね!

発売日:2026年4月10日(木)
みなさまどうぞよろしくお願いいたします!


1巻もあわせてよろしくお願いします!

転生のらねこ薬師さんのひみつのレシピ ~天才パパとしあわせカフェ、開店にゃ!~ 表紙

୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ