にせものの猫耳、ほんものの孤独
翌日。移動店舗二日目だ。
今日はシトラスさんには朝からスレディバルの本店の方をお任せしている。
今日も良い天気だしお客様も大盛況。
「ハンバーガーと焼きパイン、お待たせしましたにゃー」
「はいはい、今日のコーヒーフロートですよ!」
そんな感じに今日もお仕事をしている。
「美味しかったよ」
「やったー」
最初の日よりもたくさんリピートでお兄さん達が来てくれて嬉しい。
皆からおだちんとしてクズ魔石やらお菓子やら、おもちゃやらもらえるから嬉しい。
たくさんの人が来てくれるけど、やっぱり聖猫族を私以外に見たことある人はいない。
「みー」
売り上げを数えてしまっていると、自然と鳴き声が漏れる。
クリフォードさんが頭をぽんと撫でてくれた。
「まあそう気を落とさずに。私というパパがいるからいいではないですか」
「それはそうですけど~」
「猫耳くらいつけてあげますよ、ほらどうですかパパとお呼びなさい♡」
「ぎゃっなにしてんですかいらないにゃ」
「とほほ~」
私は空を見る。
まあ今更だ。これまでも一度も会ったことないのだから、いなくても当然で。
「でも目撃例があったのになー」
近くにいるなら会いたいなと、ちょっと思っても仕方ないだろう。
何人かのお客様を捌いたあと。
お昼、珍しい女冒険者のグループのお姉さんたちがやってきた。
「やっと会えた! いつも時間が合わなくて会えなかったのよ!」
「いらっしゃいませ……にゃっ!?」
頭を上げて、私は驚いた。お姉さん達の頭に猫耳があるのだ!
「にゃ、にゃにゃにゃ、もしかしてお仲間さん……」
「あはは、違うわよぉ」
お姉さん達はけらけらと笑う。
「にゃ、でもお耳が……あっ下にもあるにゃ! 四つにゃ!」
私は三人トリオのお姉さん達の人間の耳に気付く。
「うふふ気付いた? あたしたち冒険者なんだけど、獣の毛皮を採ってケモ耳アクセサリー作ってるの」
「猫ちゃんがかわいいって評判なおかげで、ウチらの商品も最近結構売れてるのさ」
「にゃ、にゃるほど……」
彼女たちは悪気がないのだろうけれど、私はちょっと引いてしまった。
しかたない。獣の毛皮で作った耳は確かにかわいいけれど、立場上ちょーっとエグい!
引きつる私を気にせず、彼女たちはさっそく私に手を伸ばす。
「本物見たくてきたの! あーん、やっと会えたわ~」
もみもみもみ。頭とほっぺを三人同時にもみもみされてむにーっとなる。
「にゃ、にゃにゃにゃ~」
「しっぽ可愛い~。奇蹟を呼ぶ尻尾、あたしたちも触って御利益貰わなきゃ」
「にゃーっ」
適度なおさわりは嬉しいけど、これはちょっと揉みすぎにゃ!
「お辞めください。彼女は私の娘で、今は仕事中です」
クリフォードさんが彼女たちの間に入ってくれる。
三人トリオは気まずそうに手を引っ込める。
「あ、あたしたちは別にかわいがりたいだけで……」
「可愛いからって触っていいのなら私を触ればいいでしょう! 可愛いですよ!」
クリフォードさんが先ほどの猫耳をつけてにゃっとセクシーポーズをする。
「え、キモいおじさん……」
「変態……」
「こわ……ま、またねー、猫ちゃん~」
「あっ、ご注文の商品はこちらにゃ!」
ドン引きした彼女たちからしっかりお金をうけとりつつ、私たちは見送った。
クリフォードさんと顔を見あわせる。
「まったく、ミルシェットさんが可愛いのに私を可愛いと思わないとは理解できませんね」
「庇ってくれてありがとうにゃ、パパ」
「別に庇っちゃいませんよ。『凪』時代は美少年としてブイブイ言わせていた者として、私をかわいがらない人を見ると負けてられないと思いましてね」
「あ、これ本気の目にゃ」
私は呆れつつも、クリフォードさんがパパで良かったと思ってしまった。ちょっとだけ。
こういうところで、クリフォードさんはなんだかんだ押しつけがましくない優しさを見せてくれるのだ。たとえ本気で可愛さで張り合う気満々だとしても。




