6話 奇襲
ふぅ,落ち着け、落ち着け、大丈夫。大丈夫だ。
僕は揺れる車の中でそう自分に言い聞かせていた。
「そんなに心配しなくても大丈夫。私がいるから。あと一応
クリスも。」
「あ,ありがとうございます。頑張ります。」
「うん。ほどほどにね。」
イルが話しかけてくれたおかげで少し気持ちが楽になった気がする。
「何か気になることがあったら聞いてね。まだ分からないことが結構あるでしょ。それに、少し気休めになるかもだし。」
・・・何か気になることか、、、うーん、あまり思いつかないなぁ
「そういえば,あの館は,留守にしても大丈夫なんですか?」
僕は何かないかと絞り出して聞いた。
「あぁ、大丈夫だよ。」
イルはすぐに答えた。
「そうですか、、」
「うん。なんたってあの館には天才発明家がいるからね。」
「天才発明家ですか?」
「そう。あの館を作ったのもあの子だし。訓練で使った用具もそう。あと今乗ってる車もそうね。」
「館の中にいたんですか。気づかなかったです」
「無理もないよ。あの建物広いし。それにあの子が研究室から出てくることってほぼないからね。」
「そうですか、、」
そんな人がいるんだ、、
「それに結構強いから。だから大丈夫。」
「そうだ!他のみんなのことも教えとかないとね。」
イルは、体勢を正し直すと、言った。
「このチーム。nextには,現時点で、6人と例外がいるの。」
「まず、私とクリス。
そして,ソウ。頭の回転が早くて、頼りになる。【ギフト】は,身体能力の強化と飛び道具。」
「次は、アカリ。この子のギフトは,応用が効く。でも接近戦になると,厳しいかな。」
「最後は,フェイ。ポテンシャルは、あるんだけど、本人が気弱だからあんまり戦いには向いてないと思う。」
あとは,発明家と例外が1人ずつかな。と,イルは言った。
「例外ってなんですか?」
僕は,気になって聞く。
「例外ってのは,ユウゴっていう男でね。私もあんまり詳しくは知らないの。でもクリスによると,nextの創設者らしい。」
「創設者。 ですか。」
「そう。一回だけ会ったことあるけど,強いってこと以外全然わからなかった。」
「僕も会いたいです。」
「私もそうしたいのはやまやまなんだけど。どこにいるかがわからないのよねぇ。」
キキィィィィ!
「わっ!」 「きゃ!」
そんな話をしていると,車が急停止した。その衝撃で僕とイルは前の座席にぶつかった。
「ちょっとクリス!止まる時は言ってって、、、」
!!!
僕とイルは起き上がった瞬間、それに気づいた。
3m先ぐらいに、帽子を被った男が立っていた。
「おい,ここは俺に任せろ。お前らは、先に車から降りて南東に向かえ。俺もあとから行く。」
クリスは囁くように言った。
え?それって。
「クリス!大丈夫なのか?」
僕は心配になって聞く。
「あぁ。任せろ。俺は勝てなかったことがあっても負けたことはない。」
クリスはそう言って車から降りて男に向かっていく。
「イル、頼んだぞ。」
「うん。無理しないでね。」
「あぁ。」
そう言うと,クリスは戦闘体制をつくって男に向かっていく。
それと同時に、僕とイルは車から降りて南東に向かった。
「クリスを一人にして、大丈夫なんですか?」
僕は走りながら聞く。
「あの人が任せろって言ったなら、任せるしかない。」
それでもイルは心配しているように見える。
「それよりも、今はみんなに会うことが必要。」
「みんなに会って話を聞けば今の状況も大体わかる。とにかく急ぐ。あともう少しで着くから。」
「はい,,」
「クリスが今いなくなったのなら、その代わりは、ユウにしてもらう。」
「え?」
「クリスも言ってた、ユウならできるって。」
「ユウももうメンバーの一員。クリスが心配なら、大丈夫。クリスは、変な奴。めんどくさいし,ちょっとうざいし、そこまで強くないし、」
「でもね、、、言ったことは必ずやる。成し遂げる。」
「毎回思う、変なことを言いながら無事で帰ってくるクリスを見て、心配して損したって。」
そう、、、だよな。仲間なら信じるべきだよな。クリスは僕よりもずっと強いし。
「はい!僕らは僕らのやるべきことをやりましょう。」
「うん!そのいき!」
僕らは南東に急いだ。
「どちら様だ?俺の追っかけファンか?」
俺は武具錬成【クリエイト】を終えると、この帽子男に向かって歩きながらそう言った。
「だったらよかったですね。でも残念!私は神教団体【神の雷】次期幹部、ミトハネと申します。」
やっぱり【神の雷】関係か、、
「で,俺たちの楽しいドライブを邪魔してまで、なんのご用件だ?」
俺はグローブを両手にはめながら聞いた。
「なに,最近我々の邪魔をする鬱陶しい奴らがいましてね。ちょっと掃除をしに来ただけですよ。」
「そうですかい。ご苦労なことで。」
「ええ、全くですよ。」
そう言うと、その男は、手に魔力を集めて魔力の箱をつくり
始めた。
させるかよ。
俺は地面を強く蹴って男に飛びかかった。
「オラァ!」
バシィッ バシィッ
上手く受け流された。だが,,
こい!インパクト!
俺は,足に二連撃を発動させ,急激に距離を詰めた。
「オッッラァァァ!」
ドン!
強烈な右ストレートが顔面に入った。
・・・俺は、勝つ。・・・
「残念!私の方が強いですねぇ。」
男はすぐに立ち上がって向かって来た。手には杖を持っている。
こいつの天賦の才能【ギフト】に気をつけろ!危なくなったら、インパクトを発動して逃げる!
杖から目を離さないように警戒していると,男が杖の先をこちらに向けた。
「あなたはここまでです!」
杖の先から泡のようなものがでた。それと同時に男が仕掛けてくる,
右!左!左!
くっ,こいつ!魔力操作がかなりうめぇ!
防ぐのも一苦労だ、
今度は右!
「残念!アウト!」
男が言ったと同時に泡が俺の体に触れた。すると,俺の体は魔力操作が効かなくなった。
・・泡はさっきまでここにはなかった!絶対に!こいつ,杖に触れてなくても泡を操作できるのか!
魔力操作ができなくなった俺は片膝を地面についた。
「ハァ。だから言ったんですよ。私の方が強いって。どうですか?あなたがお仲間の居場所を教えてくれるのなら、逃してあげましょうか?」
男が勝ち誇ったように言ってくる。
「そうだなぁどうせ死ぬなら教えてやるよ。俺にはなぁ、なりたい自分、理想の自分があるんだ。
今の俺はそれにはまだ程遠い。でも、それを目指して頑張る俺は、俺のなりたい自分そのものなんだよ。」
「つまり?」
「なりたい自分になるために。ここは引けない。絶対に!」
俺は、言ってやった。
「そうですか。それは残念ですねぇ。では、さようなら!」
男は魔力を込めた手を手刀にして首元を狙った。
きた!
今!ここ!
こい! インパクト!
ド!ド!ド!ド!ド!ド!ド!
「がっ!な、なにが!」
男は数多くの衝撃によってバランスを崩した。
その瞬間を俺は待ってた。
「オラァ!」
顔面を右で殴り、そのまま地面に叩きつけた。
「なりたい自分を目指す俺を、俺はずっと信じてる!」
俺は勝った。この男に。早くあいつらのもとに急がないと。
足がガクついてる、魔力で治さないと、
ちょっと待て,今魔力操作できないじゃんか。
やばい、もう持たん。
俺は地面に倒れ込んだ。
体をもう一度起こしてみる。
しかし、やっぱり起き上がれない。
・・これは回復するまで待機だな。 イル、ユウ、任せた、、
俺は再び地面に倒れ込んだ。




