3話 流水の同盟
「ユウは魔力操作どれぐらいできるの?」
部屋を移動しながらイルは僕に聞いてきた。
「人並みにはできると思います、、、多分。」
正直魔力は意識したことがあるけど、魔力操作なんて、したことがない。でもこう答えないと、自分が無力に感じてしまう。
「魔力操作は戦闘の上で必要不可欠だからな。
・・・着いた。ここだ。」
イルは大きな扉を開けながら言った。
「ここは訓練室。文字通り、戦闘訓練をする場所だ。」
訓練室。この館に来るまでに、クラスから聞いた。なんでも、この部屋ではもし爆弾が爆発しても大丈夫なほど頑丈らしい。
「じゃ、早速だけど、訓練・・・始めるよ。」
「はい!よろしくお願いします!」
不安でいっぱいだけど、やるしかない。
僕は大きな声で返事をした。
返事を聞くと、イルは倉庫からたくさんの曲線のついた板のようなものを持ってきて、そばにあった机に置いた。
「これは魔力操作上達用迷路。略してマイロだよ。」
「この世界に生まれた者はみんな、少なからず魔力をもっている。魔力は心臓付近から発生する。そして、その魔力を身体全身に纏わせて、体を強化したり、回復させたりする。これが魔力操作。私たちはこれを使って戦ってる。」
「で、ここからが重要。魔力量は人それぞれ個人差があるんだ。もちろん魔力量は多い方が戦闘には有利だよ。でもそれ以上に魔力操作の精度が大事。量より使い方って感じね。」
イルは説明を続ける。
「このマイロは、スタート地点に指を置いて、一時的に可視化された魔力を操作してゴールを目指す。つまりこれで魔力操作の練習ができるってこと。」
「なるほど、、、」
今からこれをするってことか。
「まずはこれ、難易度壱、これができれば、基本的な魔力操作はできてるって感じね。やってみて。」
イルは迷路のスタート地点を僕の方に向けた。
「はい!頑張ります!」
多分あんまり出来ないけど、これをできるようになるぞ!
僕はそう決意して、スタート地点に人差し指を置いた。
ふっーーー 集中、集中、
・・・・・ここをこうして、こうやって、、いや、違う、そっちじゃない、こっちだ、、そう、、で、ここを右にいって、、、、
「おぉーー!凄いじゃん。ゴールだよゴール。」
イルの声がして僕はゴールの文字が僕の魔力で色が変わっているのに気がついた。
「なかなか一発で成功させる人はいないよ。クリスは成功させるのに10回はかかったのに。」
「あ、ありがとうございます、、、よかった、、なんだか安心しました、、、」
すると、途端に僕の手に水滴が落ちてきた。
「え、なんだこれ、、」
すると、突然、イルが僕の手を握りしめてくれた。
そして、優しい声でこう言った。
「辛かったな、、、本当に。大丈夫だ。もう、、大丈夫だ」
その時に気がついた、これは僕の涙だったことに。
そしてその時にはもう、僕の涙は止まらなかった。
「ぼ、ぼ、、僕の村が、家族が、、みんなが、、、急に襲われて、、、居なくなって、、、、、僕も、、、死ぬんじゃないかって思って、、、でも、、でも、、、僕は生きてて、、僕だけが生きてて、、、、辛かった、、本当に、寂しかった、、、、、悔しかった、、、、、今だって、、、いろんなことで頭がいっぱいで、、それで、それで、、、、、」
「辛かったな、、、苦しかったな、、、、、、」
イルは僕の頭を撫でてくれた。
「私も住んでいた故郷を襲われた。でも助けてもらったんだこのチームだけじゃない。色々な人に、、」
「私も死ぬ思いをした、、、いっそ私も死のうかとした時もあった。でも、、私は私を逃がしてくれたお母さんにも、救ってくれたこのチームのみんなにも、、何一つ返してない。」
「返したいんだ。もらったもの、してもらったことを。返さなくてもいいって言われたとしても。だから私は戦ってる。」
イルは優しい口調で言った。
「ユウも、、、返さないか。私たちのためにしてくれたことを、今度は、その人たちのために。」
僕の頭に何かが落ちた。顔を上げると、イルは泣いていた。でも声と表情は力強かった。
その顔を見ていると、僕も自分のやらなければならないことがなんなのかに気がついた。
「はい、、はい!僕も、、、返したいです。たくさんの人に、いろんなものを!」
ようやく僕の中でやりたいこと、やらなければならないことを見つけられた気がした。
・・・もういなくなってしまった人にも返す。僕の行動で、、、
そして神といかいうクソ野郎をこの世界から消してやる。
もうこれ以上こんな思いをする人がいなくなるように。




