罪
その場は、どよめきに包まれた。
ルイは、倒れるのではないかと心配になるくらい青白い顔をして、脂汗をかきながらわたしの前に跪いた状態で顔を伏せている。
そういえば足を引っ掛けられた後、レミは「あとで社会的にコテンパンにしてやる」と言ってやけに上機嫌になっていたけど、こういうことだったのか。
レミ怖っ……怒らせないようにしよう……。
というか律といいレミといい、わたしのまわり怖い女ばかりじゃないか?!
「……ルイ、こちらを見て答えよ。身に覚えはあるか?」
国王の、重力がずーんとのしかかっているような低く重い声に、ルイの身体がビクリと震えた。
ルイは顔を上げ、酷い顔色で、しかししっかりとした口調で答えた。
「いいえ、記憶にございません」
ー……まさかこの後に及んで嘘をつくとは。
人って焦ると判断力が鈍るっていうけど、流石にこれは認めて謝った方がましな方向に進むってことくらい理解できるだろうに。
「そうか。では、聖女サク。君が本当のことを教えてくれ。聖女は嘘などつかないからな、君が言ったことが真実であろう」
「あっ……えーっと……」
聖女は嘘をつかない?
まぁ確かに嘘が上手い方ではないけど、わたしこっちの世界に来てからも来る前も、数え切れない程の嘘をついてるんだけど……。
どうしよう、足引っ掛けたことを認めて謝ってくれたらもういいやと思ってたんだけど、「記憶にございません」は流石にイラついたしな。
ーまぁ、少しの間定職処分受けたり、減給されたりするだろうけど、ここでわたしが「やられました」と言ってルイが処分を受ければ、今後わたしに手を出してくるような人はいなくなるだろうし……。
ここは本当のことを言っておくが今後の身の安全のためにも正解な気がする。
「レミの言う通りです。足を引っ掛けられました」
わたしは思い切って本当のことを言った。
ルイの表情が歪む。
「ルイを連れて行け。罰は後ほど決める」
国王がそう言うと、まわりに立っていた護衛であろう人たちがすぐさま動き出し、ルイの両腕を掴んだ。
わたしは思わず、「えっ……」と声を漏らす。
「違うんです、国王様!話を聞いて下さい!彼女が聖女であるなどとつゆ知らず……聖女であると知っていたならばそのような事は……!!」
「発言を許した覚えはない。そのような言い訳はどうでも良い。聖女に手を出した、その事実がどれほどの罪の重さか、私の側近のお前なら勉強しているはずだ」
「それは……!しかし……そうだその隣の女!聖女様の隣の女が、護衛もなしに聖女を歩かせていたのです!護衛もなしに貴族塔を歩く髪色の薄い者がいたら、ルールを知らない無礼な兵器の1人であると、誰だって勘違いするでしょう?!」
レミに責任転嫁しようとしてるなこの男!
あまりにも往生際が悪い。
でも、こんな連行されるほどの事態になるとは思っていなかった。
せいぜい、国王がルイにこの場で何かしらペナルティを言い渡して、他の側近の1人に案内役を変わらせる、くらいのことだと思っていたのに。
なんだかかなり大事になってしまった。
「ねぇレミ、これやばいんじゃ……」
わたしは、国王に言い訳を叫びながら、抵抗虚しくどこかへ連行されていくルイを見て、レミに耳打ちする。
レミは、わたしの耳元で言った。
「ほんとやばい、最高。計画通り!」
……お願いだから、まともな人を出してくれ。
切実に、わたしはそう願った。
「おい、レミ。これはお前の企みなのか?どこからだ」
わたしたちの会話をきいていた高野が、会話に入ってきた。
「先にふっかけてきたのはあの男だよ?ね、咲久ぴよん」
「い、一応……。足引っ掛けられたのは事実です」
高野が、わたしの両肩に手を置いて、真剣な表情で言った。
「咲久。今回の事態でわかったと思うが、聖女となった君にはかなりの発言力がある。今後は、行動も発言も慎重にしなさい」
わたしは、全力で首を上下に振る。
「ねぇ、高野さん。あの……ルイ、さんは、どうなるんですか?」
「ー……聖女に手を出したんだ。国外追放……最悪死刑だな」
ー死刑。
死刑?!
「咲久ぴょん?!」
「咲久!!」
気づいたら、わたしは2人の呼びかけを無視して走り出していた。
お読み下さりありがとうございます!!
梅雨がきちゃいます……じめじめです……暑いです……。
改めて、ここまでブックマークやいいね、評価やコメントを下さっている方々、本当にありがとうございます!!
そして、ブックマーク登録100人ありがとうございます!!!!この先もスローペースではありますが作者好みの百合小説を書き続けて行きますので、たまに覗いていってくれたら嬉しいです!!




