悪意
「ねえ、レミ。どこ行くの?」
「転移者棟、管理長室だよん」
‥‥‥聞いたところでわからなかった。
貴族街に到着後、休む間もなくレミに手を引かれ、わたしは転移者のトップであるという「タカノん」のもとへ連行されている。
今までの人生で、これほどまでに自分が今後どうなるのか想像できなかったことはない。
ーいや、こっちの世界に来てからは大体想像できてないか。
「あのー‥‥‥」
「何?」
「さっきから、通りすがる方々にめちゃくちゃ冷たい目で見られている気がするというか‥‥‥何ならさっき舌打ちされたんだけど、もしかして転移者って結構嫌われてる‥‥‥?」
「ま、お貴族様たちからしたら、うちら転移者への認識は兵器であって、まあこの国を守るために動かす道具でしかないからね。擬人化した鉄砲とか剣みたいなものだと思えばわかりやすいっしょ!だからうちらは、災害が来たら出陣して言われた通りに動いて、戦うだけ。あ、聖女は例外だよ?国の宝だから」
待って、すっごく軽い感じで言ってるけど、それってかなり残酷なことだよね。
人としてじゃなくて、武器として見られてるってこと?
わたしが混乱を隠せずにいると、レミは心底どうでも良さそうに続けた。
「さっきから睨まれてんのは、レミたち転移者が貴族の棟を歩いてるから。お貴族様はプライドが高いからねー。転移者棟が立ち並ぶ、転移者たちの生活圏があるんだけど、そこから一歩外へでたら、今みたいにすれ違う貴族にちょー睨まれんの。でもしょうがないじゃんねー、レミ優秀だから、自分のお部屋貴族の棟にあるんだもん。あ、転移者棟の部屋狭くて共同で最悪だったし、レミは睨まれようが嫌がらせされようが絶対最上位転移者としての称号を手放さずにこっちに住み続けるよ?与えられた特権だもん。レミ悪子ないし、合法だし」
「あはは‥‥‥そっか」
メンタル強いなこの子。
わたしは今歩いてるだけでも、周りからの視線に耐えられなくてビクビクしてるのに。
ああもう、早く着いてくれ。
ーガクンッ。
「えっ」
前から歩いてきた2人組貴族の男の1人に、足を引っ掛けられた。
運動音痴、体幹ガバガバのわたしの体は、なすすべなく傾き、床が近づいてくる。
「咲久ぴょん!」
ギリギリのところで、レミが支えて助けてくれた。
「受身くらい取りなさいよ!」
「うっ、ごめん。ありがとう‥‥‥」
とっさに受け身なんて取れるわけないだろいち女子高生が!
レミといい律といい、当たり前のように高度なことを求めてくる。
わたしはチート能力で身体能力向上したりしてないんだからな。
「はっ。おいおい、ちょっと足ひっかけただけで転倒するような奴が、本当に最終兵器として機能するのか?」
貴族の男が、いかにも性格の悪そうなねじ曲がった眉で突っかかってきた。
最悪だ、1番嫌いなタイプだ。
「あ、えっと……」
「いい、咲久ぴょん。無視しな」
何か返さないとと口を開くと、レミがわたしの耳元でそう言って、わたしの手を引いて男の横を通り過ぎた。
男が再度、今度はレミの足をひっかけようとしていたが、レミはそれを無表情のノールックで華麗にかわす。
「なんだその態度は!!お前ら兵器は、この世界で誰のおかげで生きていけていると思っている!!」
「おい、そのくらいにしておけ。貴族棟にいるってこもは最高位転移者だぞ。あまり事を荒立てるな、転移者なしじゃ俺ら貴族はー」
「ああ、ああ、くそ、分かってる!!」
後ろから聞こえてくる貴族2人の会話が、どんどん小さくなっていく。
この世界の転移者の立場の低さを認識せざるを得ない出来事に、わたしは思いやられる今後に絶望した。
「あの男、後で社会的にコテンパンにしてあげるから、楽しもーね、咲久ぴょん!」
真っ黒な満面の笑顔でそう言って、弾むように歩きながらそう言ったレミに、わたしはわけも分からず「う、うん…?」と曖昧な返事で返したのだった。
お読み下さりありがとうございます!!
うちの近くは川がながれてるので、小虫が増えてくる季節ですね、怖いです。
改めて、ここまでブックマークやいいね、評価やコメントを下さっている方々、本当にありがとうございます!




