共通点
「それじゃ行こっか!」
わたしのことを上手く言いくるめ、計画通りに事が進み、るんるんなレミは割れたガラスを気にもせず踏みつけて窓へ向かう。
「あ、ちょっと待って、あとひとつお願いがあって‥‥‥」
「ええー?!まだ?!」
あからさまに面倒くさそうな表情で振り向いたレミは、大袈裟にため息をつく。
でもわたしだってこれだけは譲れない。
なぜなら後があまりにも怖いから。
「律に置き手紙を書かせてほしい。ほら、帰ってきたら部屋こんな状態で、わたし消えてて、しかも何が起きたのかもわたしが無事なのかも何もわからないっていうのは、流石にやばいと思うんだよ。せめて、貴族街にいますってことと、身の危険はありませんってことを書いて残しておきたいんだけど、いいかな?それにほら、そうしたら律もわたしが貴族街にいるって確信できるから、すぐにわたしを追いかけてくると思う。そしたらレミ側としても好都合じゃない?」
手紙に、致し方なかったんだと少しでも沢山言い訳を書いて、再会した時の自分の身の安全を確保したい。
ただえさえ何度も約束を破って、どんどん信頼を失っているのに、このまま消えたらもう顔向けできない。
レミは「んー、まあそれもそっか」というと、魔術で紙とペンを出現させ、わたしに渡してくれた。
「はい、早く書いてよねー。1分あげる!」
「急かさないでよお‥‥‥」
わたしはレミに見張られながら、1分で書ける限りの状況説明と言い訳を書き連ねた。
それを机の上に置き、風で飛ばされないよう、落ちていたガラスを上に乗せる。
「もういいよね?それじゃ、今度こそ行くよ!」
「あ、え、窓から?」
出窓に足をかけて手を伸ばしてくるレミに、わたしは思わず突っ込む。
いや死ぬって、わたし飛べないって。
「だってそこのドア開かないじゃん」
「あ、そうだった‥‥‥」
「別にドアくらい魔法で突き破れるけど、これ以上部屋を破壊するのはレミだって申し訳ないし?」
「‥‥‥一応申し訳ない気持ちはあったんだね、なんか良かったよ」
レミは、にいっと笑って強引にわたしを抱き寄せて言った。
「だーいじょぶ!レミに掴まってたら落っこちないし、空飛んでったほうが圧倒的に早く着く!」
「いいいいいやそうゆう問題ではうわあああああ?!」
レミはわたしを抱きかかえたまま容赦無く窓を蹴り上げ、空へ飛び出した。
ふわりと不思議な感覚がして、全身に鳥肌が立つ。
わたしはレミにしがみついてレミの胸に顔を埋め、ぎゅっと固く目を瞑って震える。
「ねえ、さくぴょん。目、開けてみなよ、綺麗だよ?おーい」
「無理無理無理無理!!」
「‥‥‥レミさ、こっちの世界きて、いちばん良かったことって、空飛べたことなんだよねー。こっちくる前、ずーっと飛んでみたかった。飛びたくって飛びたくって、最終的に、翼もないのに空に飛び出しちゃって、重力のまま落っこちちゃったんだけど」
「ーえ?」
「ねえ知ってる?転移させられる子たちの共通点」
「い、いや。知らない‥‥‥」
わたしは、恐る恐る目を開けて、レミをみた。
先ほどまでの強引さや騒がしさが嘘のような表情をしたレミが、ガラス玉のような目で遠くを眺めていた。
「元いた世界から、消えてもいいやって思ってた子たちなんだってさ。そういう子の方が、元の世界や生活に精神的な執着がないから、転移させやすいんだって」
切なさが浮かぶその顔が太陽に照らされて、絵画の中の少女のようで、わたしは自然と彼女の視線の先をみた。
「ー!!」
そこには、息を呑むほどの美しい景色が広がっていた。
丸い城壁に囲まれた街。
色とりどりの屋根が並び、日の光を受けて街全体がキラキラと輝いている。
街の外には、どこまでも続く草原。
風に揺れる緑の波の向こうには、深い森と細く光る川が見える。
空は高く澄み切り、世界はこんなに広いのかと心が震える。
でも、この広い世界のどこへ行っても、この空をどれだけ飛んでも、元の世界には続いていない。
「あっはは、綺麗でしょ?ちょっとはこの世界、救ってみてもいいかなって思えてくるっしょ!」
レミはそう言って笑うと、真っ白な街‥‥‥貴族街の方へ、速度を上げて風を切った。
お読みいただきありがとうございます!!
こないだ、バンジージャンプをしました。こっっわかったです。
改めて、ここまでブックマークやいいね、評価やコメントをくださっている方々、本当にありがとうございます!




