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在るべき場所

 予想しているはずもなかったレミの登場に、数秒間フリーズした後、さぁっと頭に血の気がなくなり、自分の顔が青ざめていくのを感じた。


ーあれ、これやばいんじゃ……。


 はっとして、レミに背を向け、慌ててドアへ向かう。

 とにかく逃げないと。

 今は助けてくれる律も、他のみんなもいない。

 捕まったら、抵抗なんてするすべもなく連れて行かれてしまう。


「あ、ちょっと逃げないでよもうー!」


 背後から聞こえてくるレミの声を無視し、わたしはドアノブに手をかけた。

 ガチャガチャガチャ。


ー開かない。終わった。


「ん?何してるの?」

「な、なにって、レミ……さんがドア開けられないようにしてるんでしょ!」

「え?レミ何もしてないよ?」

「え、いや、だって開かないじゃんか!」

「そういえばこのアパート、鍵穴ふたつあるよね。外から鍵をかけることもできるみたいだけど、あんたの連れ……律だっけ?が、鍵かけたんじゃない?」

「いやいや、そんなわけー……」


 いや、やりそう。

 やりそうすぎる。


「冤罪やめてよねー、てかなんで相方に監禁されてんの?喧嘩でもした?」

「喧嘩どころか仲直りしたばっかりだよ!」


 律のアホ律のバカ!

 てかこれじゃ外出できないどころかトイレすら行けないじゃんか!

 帰ってきたら絶対ブチギレる。

ー……いやまって、帰ってきたらっていっても、わたし今日このままこの部屋で律の帰りを待てるんだろうか。

 無理じゃないか……?


「ほら、だから窓から。レミと一緒に逃げよう。ね!」

「そ、それは無理!……です。」


 割れたガラスを気にもせず踏みつけながら、レミがジリジリとわたしの方へ近付いてくる。

 逃げ場のないわたしは、開くはずのないドアに縋る。

 遂にわたしの前まで来たレミはわたしの顔を覗き込んで言った。


「ねぇ聖女さん。ぜーんぶ見てたよ、レミ。それでね、見たもの全て、上に報告したの。今ここでレミと来なくても、少なくとも3日以内には他の誰かあんたを迎えにくる。迎えに、じゃないか……連行しに?の方がしっくりくるかも」

「ー!!ちょ、ちょっと待って、どういうー」


 レミはわたしの頭を撫でながら、にっこり笑って言った。


「咲久?だっけ。急にごめんね〜、びっくりするよねその気持ちわっかんの。でもさ、そもそも咲久は、最初から貴族街へ転移されるはずだった。それが、なんらかのミスで変なとこ飛ばされちゃっただけ。本来在るべきだった場所に戻るだけだよ?」

「そんなの知らない……です。勝手に転移させられて、勝手にミスって……今わたしはここで既に生活があります。本来在るべき場所なんて、知ったこっちゃない!」


 折れるなわたし!

 これ以上振り回されてたまるか!

 わたしは、レミを睨みつけて威嚇する。

 

「あっはかわいい!ちょっと泣きそう?ねぇごめん〜、レミ怖かった?」


 いや、レミよりも、ここでわたしがレミに連れ去られた後、部屋に帰ってきてわたしがいないことに気がついて発狂するであろう律が怖い。

 割れたガラス、開いたドア、消えたわたし。

 ー……やばすぎる。


「あーもう面倒くさい。てかさ、レミ魔術使えるし、あんたの承諾得なくても、全然強引に連れてけるってことわかってる?」

「そっ……それは……だから、話し合いをー」

「話し合いなんてしない。いったでしょ?拒否権はない」

「理不尽すぎるだろ!」

「理不尽?そんなの今更すぎてウケる。レミだって転移者だし、レミたちだって急に日本での生活奪われて、気がついたらこの世界で最終兵器として訓練と授業受けてた。愛着もないこんな世界を守るために、意味わかんないよね」

「最終兵器……」


 都市伝説は、やっぱり現在進行形の事実なんだ。

 それに、レミは「レミたち」って言った。

 貴族街には何人も、同じような転移者がいるってことなのか。


「でもさ、そーするしかないよねー、だって戻れないし。それに案外楽しいよ?今は平和だしさ。でももう、近いうちにこの平和は終わるわけよ、だって聖女のあんたが現れちゃったから。ねーえ、あんた自分の存在どこまで理解してんの?聖女の役割とか知ってんの?」

「あー……あはは、聞きました、アン姉……仲間から。聖女しか厄災を止められないって話、軽くなら……」


 わたしは、レミから目を逸らして、他人事のように、苦し紛れに笑いながら言った。

 聖女だとか、わたしが世界を救うだとか、現実味もないしなんだか小っ恥ずかしくなってくる。


「そーそ、その通りなわけ。で、聖女のあんたは、本来なら転移したらすぐにでも聖女の訓練をうけなきゃなんない。災害がくる前に、聖女の力を使いこなせるようになんなきゃ、この世界で何百人……下手すれば何千人も死んじゃうわけ」


 レミの真っ黒な暗大きい瞳が、わたしに突き刺さる。

 たまらくなって目を逸らし、「それは……えっと」っと口籠るわたしに、レミは畳み掛けるように言った。


「災害が来て、自分が救えたはずの命が、どんどん消えていく様を、あんたは正気で見てられる?ねえあんた、この世界の人たちのこと、見殺しにするの?」

 


お読み下さりありがとうございます!

レミは多分高めのツインテールです。

改めて、ここまでブックマークやいいね、評価やコメントを下さっている方々、本当にありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
ほんとですね 一気に場面展開するかもです レミのいうことがどこまで正しいか 連れて行くための嘘なのか 知っているのはかわさんご先生のみですね 正しいとしたらレミは同じ日本人? タカノさんもそんなにわる…
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