再開
3時間ほど、わたしたちは魔力の使い方の訓練を受けた。
「血液の流れを感じて、その流れが手の方向に向かうように意識して。体が温まって、動脈が大きく揺れるの感覚があったら、そのまま使いたい魔術を唱えるのよ」
‥‥‥???
わたしが頭上に終始はてなマークを浮かべている隣で、律は軽いものを少し浮かせたり、水を宙に持ち上げたりと、まだ戦いには使えないレベルではあるけど、あっという間にどんどん習得を進めていた。
「咲久ちゃんは聖女ってことは、光の魔力保持者なのよね。光の魔力なんて、私たちにとっては未知すぎて‥‥‥発動の仕方や条件もきっと違うのよ」
「そうだぞ、咲久ちゃんが悪いんじゃない、体質の問題だ」
「最初は難しいよね〜、明日は僕の魔術具で発動をサポートしてみようか」
「‥‥‥すぐできるようになる律がキモいだけ。咲久は普通」
すごい、めちゃめちゃ慰められる。
そんなに凹んでいるのが顔に出ていたのかわたし。
「ふへへ、大丈夫です」
あ、なんか恥ずかしさと申し訳なさで変な笑い方になってしまった。
「と、とにかく、明日こそ頑張ります!それより、今日はこれから、律はザースのとこに行くとかいう話だったっけ?」
わたしは、必死に慰められているこの空気に耐えられなくなり、慌てて話題を変える。
「そうね、街へ戻りましょうか。昼食を食べたら、律ちゃんはそうするとして‥‥‥咲久ちゃんはどうする?」
「あ、うーん、街を散策したいなあとか思ってたんだけどー」
「だめ」
ー‥‥‥ですよね、そう言いますよね。
律に速攻で却下されて、わたしは苦笑いだ。
「一緒に散策に付き合ってあげたいところだけど、わたしたち実はこれから魔物討伐の依頼が入っててね‥‥‥難しい依頼だから、パーティーランクの高い私たちに頼まれたのだけれど、律ちゃんと咲久ちゃんは今目立つ行動はできないし、午後に私たち4人で行こうと思うの」
「報酬がっぽりもらって帰ってくるぜ、今夜はご馳走だ」
待って、となるとわたし、本当に1人であの狭い部屋でお留守番?!
ー最悪だ。仕方ないけど。
わたしはガックリと肩を落とした。
***
「じゃあ行ってくるね。私が帰ってくるまで、絶対に部屋から出ちゃダメだからね」
「もう何回も聞いたってば。わかったから、行ってらっしゃい」
律が部屋まで送り届けてくれて、ザースのところへ行く律に手を振った。
いつまで経っても部屋から離れようとせず、何度もわたしの方へ戻ってきては「外へ出るな」と釘を刺してくる律を部屋から追い出し、バタンと扉を閉める。
ー‥‥‥それにしても、暇だ。
スマホも無ければ、テレビも本も、紙もペンももの部屋にはない。
本当に、寝ること以外やることがない。
窓から顔を出して、人間観察をしてみる。
「皆んな楽しそうだなあ‥‥‥。あ、なにあの屋台美味しそう。あの子‥‥‥よくすれ違うな」
遠くに、お城のような豪邸が立ち並ぶ、みるからに世界の違う空間が見える。
あれが貴族街というものなのだろう。
なんていうか、わたしたちのいる下町は全体的に茶色いけど、貴族街は発光するほど白い。
確かにこれは、アンリーヌたちのいう言葉通り、「住む世界が違う」というのがしっくりくる。
あの空間だけ、こことはまた別の異世界みたいだ。
‥‥‥ああ、やばい、窓眺めるのも飽きてきた。
いっそ外に出てしまおうか。
いや、ダメだ、ようやく律と仲直りできたのに、これ以上約束を破るようなことをしたら、いよいよ終わりだし、律の私への信頼がなくなって、過保護が増すだけだ、やめよう。
もういいや、寝るか。
ーそう思って、窓から離れようとしたその時だった。
見覚えのある人影が、わたしのいる窓目掛けて、空を飛び、風を切り、突っ込んでくるのが見えたのだ。
「え、え、は、は?!」
パリーン、ガッシャーン!!!
容赦無く窓を突き破って部屋に侵入してきたその人影‥‥‥レミは、驚きのあまり呆然としているわたしに、割れたガラスまみれの身体のまま、手を差し出してきた。
「やっほー、こないだぶり!でさ、レミと一緒にきてもらってもいい?拒否権はないから」
お読みくださりありがとうござます。
ガラスって怖いですよね、、、食器もプラスチックが好きです。
改めて、ここまでブックマークやいいね、評価やコメントをくださっている方々、本当にありがとうございます!!




