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王立魔導機管理取締部第七小隊〜落ちこぼれ貴族が辺境の吹き溜まりで魔導鎧を駆る〜  作者: 武内陣


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第八章「黒い機体」(2)

 砦に戻ったのは夕方だった。

 「どうしたんですか、これ!?」

リアーノが砦の前で待っていて、二番機を見た瞬間に顔色が変わった。

「やられた」とバッハが言った。

「何にですか!?」

「でかくて黒い機体に」

 リアーノがバッハを見た。バッハ自身の怪我も見て。オーグ整備主任を呼びに走った。


 夜、食堂に手当を受けているバッハ以外の全員が集まった。

 ガルド隊長が「話せる人から順に聞かせてほしい」と言った。珍しく、最初から真剣な顔をしていた。

 まずファリスが全体の状況を整理して話した。道の真ん中に立っていたこと。音がしなかったこと。

 一番機より大きかったこと。腕の先端から光の攻撃が出たこと。

「光の攻撃というのは」とアイナ副隊長が聞いた。

「雷のような感じでした。直線的に、音もなく飛んできました」

「まるでおとぎ話に出てくる魔法のようだった」と包帯姿のバッハが食堂に現れた。

 全員がバッハを見た。

「そんな顔でみるなよ、私は大丈夫だぜ。肋骨が数本折れてただけだ」

「それで魔法のようだとは?」ガルド隊長が聞き返す。

 バッハは適当な椅子に腰掛けながら答える「今の魔法は0から1、無から有は生み出せない。つまり水を氷にしたり木を燃やしたりはできるが、

 何も無い所から水や火を出したり風を起こしたりは出来ないだろ。でもあれは何も無い所から急に雷のような閃光が走ってきた」

「魔法特異者が関係していると言いたいのですか」とアイナ副隊長が聞いた。

 食堂が少し静かになった。


 魔法特異者というのは、都市伝説に近い存在だった。今の時代の貴族が使えない、万能の魔法を使える者。無から何かを生み出すような力。

 そういう者が生まれることがある、という話は都市伝説として残っているが、実際に見た者はいない。

「それは分かりません」とバッハが答えた。

「ちょっといいですか」とファリスが挙手して話し始める

「実家の商会で魔道具を扱っていたから分かりますが、あの光はウチの実家が開発しようとしていた魔力を圧縮して放出する技術に似ています。ただし―――」

ファリスが少し間を置いた。「あれほどの出力を機体に組み込むには私が知る限り難しいと思います」

「ただあれに似た技術が実在するということは確かです」

 沈黙の後、アイナ副隊長が話し始める。

「魔法特異者が乗っているかどうかはともかく、その黒い機体はそういう技術を搭載できるだけの設計となっている可能性が高いわね」

「あれは私たちの機体のような作業用の発展型ではなく、始めから兵器として作られている感じがした」と対峙したバッハが言う。

「兵器……ですか」とガルド隊長が静かに言った。

 

 その後、誰も言葉を発さず沈黙の時間が食堂を支配する


 そのような中、腕を組んでずっと黙って聞いていたオーグ整備主任が口を開いた。

「隊長さんよ、今の話が本当なら、うちの機体でその黒い機体と正面からやり合うのは、今の段階では無理だな」

「分かっています」

「正面以外ならという話もあるが、現時点では言えないわな」

 ガルド隊長が深く考えながら「二番機の修理にどれくらいかかりますか」

「損傷の確認が終わっていないので何とも言えないが一週間は欲しい。材料が揃えばだがな」

「材料は確保します」アイナ副隊長が答える

「非常用の予備費を使えばなんとか。ただこれを使うと上に詳細な報告書を提出しなければなりません」とアイナ副隊長がガルド隊長に目を向ける。

「なので書類上は機体の定期修繕費として計上します」

「さすがアイナ副隊長」と軽く拍手をしながら褒めるガルド隊長

「それではオーグ整備主任、機体の方よろしくお願いします」

「ああ任せとき」とオーグが答え、すぐに格納庫へ向かいリアーノも慌ててあとを追った。

 

 ミーティングではしばらくは巡回を増やしつつ、各自できることをやることと、

 あの黒い機体を【影鉄騎】と呼ぶことだけが決まった

 

 全員が食堂から出た後、レンはガルド隊長に残るよう言われた。

「あの影鉄騎と対峙した時になにか感じるものはありましたか?」

「バッハさんが言ったように兵器である可能は感じました。ですがそれ以外で特別感じるものはありませんでした、ですが―――」

「が?」

「なぜ殺さずに逃げたのかが気になります」

「第七小隊が全滅したら、さすがに上が動く。今はまだ、上を動かしたくない段階なのかもしれない」

「それは影鉄騎の側も、準備が整っていないということですか」

「それも一つの読み方だよ。今回の遭遇も偶然かもしれないからね」

 レンにはガルド隊長がなぜこのような話を個別にするのかがわからなかった。

「自分になにか期待しているのですか?」

 ガルド隊長はその質問には答えず「あと少し待ってくれ」とだけ答えた


 翌日から、砦は二つの意味で忙しくなった。

 一つは二番機の修理。オーグ整備主任とリアーノが格納庫に籠もって作業を続けていた。夜中も明かりがついていた。

 バッハが邪魔をしようとするたびに「来るな」と言われて追い返された。

「私の機体なのに」とバッハが食堂で食事をしながら文句を言った。

「だから修理してるんでしょう」とセナが言った。

「せめて進捗くらい教えてほしいんだよ」テーブルを軽く叩きコップに入った水が少しこぼれた。

「邪魔をするから教えてもらえないんだと思いますよ」

「邪魔してない。昨日も二回入って二回とも追い出された」

「それを邪魔と言います」


 もう一つの忙しさは、ガルド隊長の外出だった。

 影鉄騎との遭遇から三日後、ガルド隊長が「二日ほど出かけてきます」とアイナ副隊長に告げて、馬で出ていった。

 今度は珍しく「王都に行きます」と行き先を言った。それ以上は言わなかった。

 留守の間、アイナ副隊長が指揮を執った。

 もうこのパターンはアイナ副隊長含め全員が慣れていた。

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