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王立魔導機管理取締部第七小隊〜落ちこぼれ貴族が辺境の吹き溜まりで魔導鎧を駆る〜  作者: 武内陣


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第四章「暴走」(1)

 通報が来たのは、各々が通常業務をこなしていた昼頃だった。

 レンは格納庫内で修理が終わった一番機の起動確認を行っていた。

 オーグ整備主任とリアーノが二人で膝の補強部品を取り付け終えたのが昨夜で、今日は丸一日その動作調整の最終確認の時間に充てられていた。

 とはいっても歩行と重心移動の確認程度で、本格的な動作調整は午後に予定されていた。

 赤色灯が回り緊急警報が鳴り響き通信室に詰めていたセナが中庭に飛び出してきたのは、レンが二度目の重心移動を確認しているときだった。

「緊急通報です。全員集合してください」

 声が上ずっていた。普段は抑えた話し方をするセナが、珍しく大声を出していた。

 食堂に全員が集まるまで二分もかからなかった。

 アイナ副隊長が通報の内容を確認しながら、素早く状況を説明する。


「ルグナ鉱山より入電。現地時間十一時二十分、採掘坑道区画で稼働中の作業用魔導機一体が突然制御不能に陥り暴走状態へ移行。

 現在、鉱山施設北棟を破壊しながら南方向—――つまりヴァルタ市街地方向へ移動中との報告です。施設従業員は全員避難済み、人的被害の報告は現時点でなし。

 ただし機体の移動速度と現在地から計算すると、このまま放置した場合、市街地到達まで――」アイナ副隊長が書類の数字を確認して、

「一時間から一時間半と判断されます」

 集まった一同は表情を変え真剣味が増す

「機体の型番はわかるかな」とガルド隊長が聞いた。

「旧型と報告にあります。詳細型番は不明。稼働年数については五年以上との情報があります」

「乗り手は緊急脱出済み。制御装置への接触を試みた技術者一名が弾き飛ばされて軽傷を負っていますが、生命に別状なし」

「乗り手がいないのに動くんですか?」レンが発言する「作業用の魔導機は単純動作だけなら魔導石を組み込んでおけば魔力が尽きるまで永遠に動くの」

 ファリスが初心者に説明するように答える

「単純動作ならもしかして掘削用かな」とガルド隊長が呟いた。「はい。岩盤を掘り進む用途に特化したタイプと思われます」

「なら魔導石に反応するかもな」アイナ副隊長が「……はい、おそらく」と答えた。

「掘削用の作業機は魔導石の埋蔵反応を感知して掘り進む誘導機構を持つものが多いです。制御が失われた場合、その誘導機構だけが残って―――」

「魔導石があるところに向かい続ける」とガルド隊長が言った。「ヴァルタの街にも魔導石はありますよね」レンが恐る恐る尋ねる

 セナが「大きいのが四方に魔力インフラ用として設置してある」「じゃあそこに向かったら……」

「それにうちの格納庫にも緊急時の予備魔導石があるなあ」ガルド隊長が呑気に言うと全員が少し静かになった。

「つまり」とバッハが言った。「私たちが止めそこなったら、街か、この砦に突っ込んでくる可能性がある」

「そういうことだ」とガルド隊長が答えた。「暴走の原因は後回し。まず街に入れない。ではそのように―――」

「待て!」と食堂の入口の方からオーグ整備主任の声がする

 全員が声のする方を見た。食堂の入口に立っているオーグが、腕を組んだまま口を開いた。

「一番機の膝の補強、昨夜終わったばかりだ。正式な動作確認はまだやってない」レンは「起動は確認しました問題ありません」とオーグに食って掛かる。

「昼前に起動確認をしたが重心移動程度だ。本格的な戦闘動作での耐久性は未検証だ」

「出るなってことですか?」レンは我慢して冷静でいようとするがうなだれて言う「こんな時に出れないなんてここに来た意味が……」 

 オーグがうなだれているレンに向かって言う。「無茶はするな。急激な方向転換を連続でやるとか、そういうことをすれば機体が持つかどうか分からない。」 

「じゃあ出動していいんですか」「機体の感覚をよく感じながら動け」「―――はい!」前を向いてハッキリとした声でレンが答えた

「壊すなよ」「はい」「本当に壊すなよ」「……はい」

 リアーノが横で「壊したら私が怒るから」と小声で付け加えた。


 そして各自が出動の準備をし、格納庫に集まりいつでも出動できる体制を整えた。

 ガルド隊長が全員の前に出た。

 特に気合を入れた様子もなく、薬草の茎を口の端で弄びながら手を軽く叩いた。

「は〜い、みんなこっち注目〜」

 全員が向いた。バッハが「なんですかその号令は」と言ったが、ガルド隊長は気にしなかった。

「ルールは二つだけ。街に入れない。人を傷つけない。以上」

 それだけ言って、ぐるりと全員を見渡した。

「さあ、張り切って頑張りましょう」

 そう言って自分も馬に跨る。馬上からアイナ副隊長に「アイナさん、留守番ついでにちょっと頼まれごとしていい?」と告げる。

 アイナはまたかと言った顔で了承する。


 ルグナ鉱山へ移動中、二台の魔導運搬車の荷台にそれぞれ一番機と二番機を仰向きに固定し、その後ろを魔導装備を付けた馬でファリスとセナが追従する。

 ファリスが通信機を使い全体へと作戦の骨子を伝える

 レンは一番機の操縦室の中から補強したての膝の感触を確認しながら、ファリスの声に耳を傾けていた。

「暴走機体を誘導するために、機体が反応するもの、魔導石を囮にします」

「つまり一番機と二番機に魔導石を持たせて誘導する、ということです」とセナが補完するように続けて言う。

「各機に魔導石を持たせれば、暴走機体はそれに反応して追ってくる可能性が高いです。あとは北の荒れ地まで引きつけて、魔導石が尽きるのを待つ」

「破壊したらダメなのか」とバッハが聞くと隊長が「高い物なのでなるべく破壊は避ける方向でとの通達があったのよ」と呆れたように言う。

「またあのノルドってやつか」バッハは声だけで苛ついてるのがわかった。

「こっちを追ってこなかった場合は」レンは作戦の確認を続ける。

「その場合は正面から止めて破壊するしかありません。でも追ってくる可能性の方が高いです」とファリスは自信満々に言う。

「なに!破壊して良いだと!よし!そっちの作戦で行こうぜ!」バッハが喜んで言うとセナから「バッハさん、作戦は守ってくださいね」と窘められた。

「問題は逃がした場合です。私たちが誘導に失敗し、止めることも出来なかったら、暴走機体は次の反応源―――街か砦の格納庫に向かってしまいます」

「そうなる前になんとしても解決しないといけません、これでよろしいですか隊長」

 最後尾で馬に跨ったガルド隊長は「まあそんな感じで良いんじゃない」と他人事のように答える。

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